「賛否」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「賛否」という言葉の意味を解説!

「賛否」とは物事に対して賛成か反対か、両方の意見を並べて表す二項対立の言葉です。この語は「賛成」と「否定」を一語にまとめた熟語であり、議論や投票、世論調査などで意見を総括するときに用いられます。たとえば「計画に対する賛否を問う」のように使うことで、一方的な賛成・反対ではなく意見全体の動向を示すニュアンスが加わります。新聞記事や報道だけでなく、ビジネス文書、SNSのアンケート機能など幅広い場面で目にするため、現代日本語で欠かせないキーワードの一つと言えるでしょう。

賛否は肯定か否定か、白か黒かを瞬時にイメージさせる便利さがある半面、中間的立場や詳細な理由を覆い隠す側面もあります。そのため賛否を尋ねるときは、単純な二者択一で終わらせず、理由をセットで確認する姿勢が望ましいです。

まとめると「賛否」は意見の賛成・反対の両側面を同時に示し、議論の全体像を俯瞰するための言葉です。この性質を理解しておくと、場面に応じた適切な使い分けがしやすくなります。

「賛否」の読み方はなんと読む?

「賛否」は一般的に「さんぴ」と読みます。音読みのみで構成される熟語なので、送り仮名や訓読みのゆれはありません。国語辞典でも「賛否【さんぴ】」の見出しで掲載され、振り仮名は「サンピ」で統一されています。

漢字一つずつの読みは「賛(さん)」と「否(ぴ)」です。「否」を単体で読む場合は「ひ」や「いな」と読むこともありますが、熟語では歴史的に「否(ぴ)」と読むパターンが定着しました。同様の例として「否応(いやおう)」「否決(ひけつ)」などがあります。

会話で発音するときは鼻濁音を伴わない平板なアクセントが一般的で、拍数は二拍です。ただし地域差や話者の癖で微妙に上下することもあり、特に放送の現場ではアクセント辞典を参照して統一しています。

「賛否」という言葉の使い方や例文を解説!

賛否は「賛否を示す」「賛否が分かれる」「賛否両論」などの形で使い、主語にも述語にもなれる汎用性が特徴です。以下では代表的な用法を整理し、具体的な例文を示します。

まず「賛否を問う」は意見を収集する行為を示し、アンケートや投票の呼びかけに最適です。次に「賛否が分かれる」は意見が拮抗して結論が出にくい状態を表します。「賛否両論」は賛成・反対どちらの意見も一定数存在し、議論が活発である様子を形容します。

【例文1】新商品の価格設定について、社内で賛否が分かれている。

【例文2】映画のリメイク案に対してファンの賛否両論が巻き起こった。

なおビジネスシーンでは「ご意見の賛否をお聞かせください」のように丁寧語と組み合わせることで、相手に失礼なく尋ねられます。

ポイントは「賛否=二項対立」のイメージを意識し、どちらか一方だけを指すときは「賛成」「反対」と個別に言い表すことです。

「賛否」という言葉の成り立ちや由来について解説

「賛否」の語源は漢文に由来します。「賛」は「褒める」「助ける」を意味し、中国古典でも吉語として登場しました。「否」は「いな」「あらず」を示し、打消しや拒絶の意を担います。

両漢字を対にして一語化することで「賛成か否定か」という意味領域を一括で示す漢語が形成されました。日本には奈良・平安期の漢籍受容とともに輸入され、公家の日記や朝廷の議事録に散見します。当時は「賛否」よりも「可否(かひ)」がよく使われましたが、中世以降、公文書の格式の変化とともに「賛否」も並行して定着しました。

江戸期の儒学者の評論や寺子屋の往来物には「賛否両論」の表現が確認され、庶民語としても浸透していきます。明治政府の議会制度導入後は「採決の賛否」という公式用語となり、現在の行政用語へとつながりました。

つまり「賛否」は中国古典由来の漢語が日本の政治・教育制度と結びつき、社会全体に広がった言葉です。

「賛否」という言葉の歴史

古文書を紐解くと、平安後期の「本朝文粋」に類似表現が見えますが、「賛否」そのものの初出は鎌倉期の公家記録とされています。室町時代、評定(ひょうじょう)において家臣の意見をまとめる際に「賛否」が注記に用いられた例が複数確認できます。

戦国時代には軍議の議事録で「賛否」の表記が増加し、合議制を重視する大名ほど頻出しました。江戸時代の寛政改革では学者の建議書に採用され、幕府の政策決定過程に組み込まれます。

明治23年の帝国議会開設以降、「賛否」は議案採決の公式語として法令に明記され、国会議事録でも毎回使われる標準語となりました。昭和以降はマスコミ報道で一般化し、インターネット時代にはSNSの「賛否ボタン」やオンライン投票機能に応用されています。

このように「賛否」は千年近い歴史を持ちつつ、時代ごとの意思決定システムに合わせて形を変えてきました。言葉の変遷を追うことで、日本社会の合議文化や民主的手続きの発展も読み取れます。

「賛否」の類語・同義語・言い換え表現

代表的な類語には「可否」「賛成・反対」「肯否」「是非」「支持・不支持」があります。「可否(かひ)」は平安期から使われ、やや格式ばった印象です。「是非(ぜひ)」は会話で頻出し、「ぜひとも」の強意語と混同しないよう注意します。「肯否(こうひ)」は学術論文や判例で見られる硬い表現です。

言い換えの際は、文脈の硬軟やフォーマル度を意識すると良いでしょう。例えば社内稟議書では「可否」を、一般向けアンケートでは「賛成か反対か」と平易に表記するのが最適です。

「賛否両論」を強調したい場合は「意見が割れる」「評価が二極化する」という表現も自然な言い換えになります。語調や文字数が変わるため、記事のリズムに合わせて選択すると読みやすさが向上します。

「賛否」の対義語・反対語

厳密には「賛否」自体が賛成と反対の両極を内包するため、完全な対義語は存在しません。それでも用法上の対照概念として「一致」「合意」「コンセンサス」を挙げられます。

「賛否」が二分状態を示すのに対し、「一致」は全員が同じ意見に収束した状態を示す点で対照的です。また外交や国際会議では「全会一致(unanimous)」が理想形として語られることが多く、賛否対立とは逆のニュアンスになります。

加えて「疑義なし」「満場一致」などの慣用句も、賛否を問わず決を採る場面で対比的に用いられます。状況に応じて賛否の有無を強調したいときにセットで覚えておくと便利です。

「賛否」を日常生活で活用する方法

家庭や職場で意見をまとめたいとき、「まず賛否だけ取りましょう」と区切ることで議論を効率化できます。例えば家族旅行の行き先を決める際、候補地ごとに賛否を挙手で確認し、上位案を絞り込むとスムーズです。

職場ではブレインストーミングの後、アイデアに対する賛否を付箋の色分けで可視化すると意外な傾向が見える場合があります。学校の授業でも、ディベート前に賛否を表明させると、生徒が役割を自覚しやすくなる効果が報告されています。

SNSの投票機能を使えば、友人やフォロワーの賛否を簡単に集められ、短時間で多数の声を可視化できます。ただし匿名性が高いと無責任な回答が増えるリスクもあるため、結果を鵜呑みにせず背景を考慮するリテラシーが必要です。

「賛否」に関する豆知識・トリビア

国会の採決では「賛否」を音声で確認する起立採決のほか、ボタン投票、名前点呼など複数の方式が併用されています。またNHKの番組「国会中継」では結果がテロップで表示されるため、視聴者もリアルタイムで賛否を把握できます。

江戸時代の寺社では、賽銭箱の左右に「賛」「否」を書いた札を置き、参拝者が入れる石の数で地域の合意形成を行った記録があります。これは現代のアンケートボックスの原型と考えられています。

IT業界ではプログラムの真偽値(Boolean)が賛否の考え方と同じ二値論理に基づいており、「flagを立てる=賛成、下げる=反対」の比喩が使われる場面もあります。言語哲学の分野では二項対立を超える多値論理が研究されており、「賛否」に第三極を設ける試みも続けられています。

「賛否」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「賛否」は賛成と否定の両意見を一語で示す熟語で、議論の全体像を捉えるのに便利な言葉です。
  • 読み方は「さんぴ」で統一され、漢字は音読みのみを用います。
  • 中国古典由来の語が中世日本で定着し、明治以降の議会制度で公式用語となりました。
  • 二者択一の利便性の反面、理由を省略しがちなので使用時は背景説明を添えると誤解を防げます。

賛否は賛成と反対を同時に示すことで、言葉一つに議論の輪郭を凝縮するパワフルな表現です。読み方や歴史、類語を押さえておくと、公的文書でも日常会話でも自信を持って使えます。

とはいえ賛否がはっきり二分される場面では、対立を深めるだけで終わらない工夫が欠かせません。賛否を尋ねた後に「なぜそう考えるのか」を共有すれば、相互理解が進み、建設的な結論へと近づけます。

現代社会はSNSの拡散力によって賛否が瞬時に可視化される時代です。数字や割合だけを鵜呑みにせず、その背後にある多様な価値観や事情にも目を向ける姿勢が、成熟した議論の第一歩となるでしょう。