「通訳」という言葉の意味を解説!
「通訳」とは、異なる言語を話す当事者同士の意思疎通を橋渡しする行為、またはその役割を担う人を指す言葉です。
通訳者は発話内容を聞き取り、意味を損なわないよう即時または短時間で別の言語に置き換えます。
会議やビジネス交渉、医療・裁判など専門性の高い現場で活躍し、誤訳が許されない状況で責任を負います。
通訳には大きく分けて逐次通訳、同時通訳、ウィスパリング通訳の三方式があります。
逐次通訳は話者の発言が一区切りついた後に訳す方法で、時間はかかりますが正確性を確保しやすいです。
同時通訳は話者の発言とほぼ同時に訳す高難度の技術で、専門ブースや機材を用いることが多いです。
ウィスパリング通訳は小声で訳をささやき、少人数向けに使われます。
いずれの方式も高度な語学力だけでなく、文化的背景や専門知識、瞬時の判断力を必要とします。
通訳は「言葉を訳す」作業にとどまらず、文化・価値観の違いを調整し、誤解や衝突を未然に防ぐコミュニケーション技能だといえます。
「通訳」の読み方はなんと読む?
「通訳」は音読みで「つうやく」と読みます。
「通」は音読みで「ツウ」、訓読みで「とお-る」などの読み方があり、「訳」は音読みで「ヤク」、訓読みで「わけ」です。
日本語では複合語になると個々の漢字が音読みになる傾向が強いため、「通」「訳」どちらも音読みを採用し「つうやく」と発音されます。
英語では“interpreter”に相当し、“translation”と区別されます。
翻訳が「書かれたテキストを別言語に置き換える」行為であるのに対し、通訳は「話し言葉をその場で置き換える」行為を示す点がポイントです。
音読みによってビジネス書類や公式な場でも通用する語感が生まれ、「つうやく」という響きが専門性を感じさせる理由の一つにもなっています。
最近ではカタカナで「インタープリター」と表記されることもありますが、公的文書では「通訳」が一般的です。
「通訳」という言葉の使い方や例文を解説!
通訳は名詞・動詞両方で用いられます。
動詞としては「通訳する」、名詞としては「通訳を依頼する」「彼は通訳だ」のように使われます。
敬語と併用する際は「通訳していただく」「通訳をご担当いただく」など表現を丁寧に整えます。
【例文1】国際会議で日本語から英語への通訳を担当した。
【例文2】専門用語が多いのでプロの通訳を手配してください。
【例文3】彼女は三カ国語を話せる優秀な通訳だ。
【例文4】医療現場では医師と患者の間で通訳が重要な役割を果たす。
口語では「訳してください」と言うより「通訳お願いします」と依頼する方が自然です。
通訳は一瞬の判断で訳語を選ぶため、事前準備や用語集の作成が不可欠という点を覚えておきましょう。
「通訳」という言葉の成り立ちや由来について解説
「通」は「道や情報がスムーズに通じる」ことを示し、「訳」は「意味をほどく、言葉を解く」を意味します。
古代中国語では「訳」は「わける」「解く」の意があり、その概念が日本へ伝わりました。
奈良時代の文献に「訳語」という語が見られ、外国語を和訳する行い全般を指していました。
鎌倉時代以降、交易や外交の場で「通詞(つうじ)」という役職が設けられ、「通詞」が転じて「通訳」へと定着したと言われます。
つまり「通じる」と「訳す」を合わせた熟語が「通訳」で、異文化間の“言葉の道路”を整備するニュアンスが込められています。
現代日本語での「通訳」は、江戸幕府がオランダ語通詞を正式に採用した頃から行政文書に登場し、明治期に完全に一般化しました。
漢語の形を取ることで、英語の“interpreter”に対する日本独自の表現として根付いています。
「通訳」という言葉の歴史
古代日本では主に朝鮮半島や中国との外交で「通使」と呼ばれる役目が通訳も兼務していました。
平安時代の『日本三代実録』では「秦氏の子孫が渡来語に通じていた」と記録され、通訳者の存在が確認できます。
安土桃山期にポルトガル語やスペイン語の宣教師と接触が増えると「南蛮通詞」が登場し、イエズス会の教育で語学を学んだ日本人が任命されました。
江戸時代は長崎奉行配下の「阿蘭陀通詞」「唐通事」が公的な通訳専門職として制度化され、実務マニュアルも残されています。
明治以降は欧米列強との不平等条約改正交渉で高度な英語通訳が求められ、国家の運命を左右する職業として注目を浴びました。
第二次世界大戦後は国際機関や外国企業の進出により同時通訳が必要とされ、1964年東京オリンピックを契機に養成機関が発展しました。
現代ではオンライン会議の増加に伴い、遠隔通訳・AI支援通訳など新しい形態も誕生しています。
「通訳」の類語・同義語・言い換え表現
「口頭翻訳」「インタープリテーション」「訳介」「解説役」などが近い意味で使われます。
特に「口頭翻訳」は書面ではなく音声を対象とする点を明示できるため、学術的文脈でも用いられます。
「仲介」「ブリッジ」「仲立ち」も広義では意思疎通をつなぐ役割を示す言葉として機能します。
ただし「翻訳(translation)」は書面中心の作業を指すため、厳密には業務範囲が異なります。
ビジネス文書で「逐次通訳」「同時通訳」と細分化して表記すると、必要なスキルや料金を誤解なく提示できます。
「通訳」と関連する言葉・専門用語
通訳の実務で頻出する専門用語には「ソース言語」「ターゲット言語」「アウトプット」「インプット」などがあります。
ソース言語は聞き取り対象の言語、ターゲット言語は訳出先の言語です。
業界では「CAT(Computer Assisted Translation)ツール」「用語集(glossary)」「パラレルテキスト」も重要です。
通訳特有の用語としては「リテンション(記憶保持)」「チャンク(意味のまとまり)」「シャドーイング(復唱練習)」があります。
これらの概念を理解すると、通訳者との打ち合わせや依頼書作成がスムーズになります。
さらに「メタ認知」「アクティブリスニング」「コロケーション」など言語学的知識も求められ、専門性の高さを物語っています。
「通訳」を日常生活で活用する方法
海外旅行ではホテルやレストランでの会話にスマートフォンの音声通訳アプリが役立ちます。
家電の製品説明を外国人観光客に案内する場合、簡易通訳デバイスを携帯するとトラブルを防げます。
身近な通訳ツールを使いこなすことで、言語の壁に尻込みせず異文化交流を楽しめます。
自治体の国際課ではボランティア通訳を募集しており、地域貢献しながら語学力を磨けます。
オンライン英会話で練習した成果を通訳イベントで活かすと、アウトプットの機会が増えて上達が早まります。
【例文1】スマホの同時通訳機能で現地のタクシー運転手に行き先を伝えた。
【例文2】友人の結婚式でスピーチを逐次通訳し、海外ゲストと盛り上がった。
技術革新により自動翻訳精度は向上していますが、ジョークやニュアンスはまだ人間の補完が必要です。
機械と人間の協働を意識しながら、状況に応じてプロに依頼する判断力も身につけましょう。
「通訳」という言葉についてまとめ
- 「通訳」は異なる言語間で話し手の意思を伝える行為・職業を示す言葉。
- 読み方は「つうやく」で、漢字の音読みを組み合わせた表記が一般的。
- 「通」「訳」が合わさり、古代から外交や交易で活躍した歴史を持つ。
- 現代ではオンラインやAI支援など多様な形態があり、正確さと文化理解が重要。
通訳は単に語学力が高いだけでは務まらず、文化や専門知識を総合的に理解してはじめて成立する仕事です。
歴史的に国家外交を支え、現代ではビジネスから医療まで幅広い分野で人々をつなぐ不可欠なインフラとなりました。
音声翻訳技術が進歩しても、人間の文脈把握力や感情への配慮は代替しづらい部分です。
言語の壁を越え新しい扉を開く鍵として、通訳の役割と魅力を改めて認識してみてください。