「意識不明」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「意識不明」という言葉の意味を解説!

「意識不明」とは、大脳皮質や脳幹の機能が低下し、自分自身や周囲の状況を認識できない状態を指す医学的な用語です。この状態では呼びかけや痛み刺激に反応しないことが特徴で、いわゆる「昏睡(こんすい)」とほぼ同義で使われる場面もあります。呼吸や循環が保たれている場合でも、意識レベルが最も低い段階にあたる点が大きな特徴です。日常会話では「意識不明の重体」という表現が報道で使われることが多く、医療の現場ではグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)などを用いて客観的な評価が行われます。

意識不明は単なる眠りとは異なり、外的刺激にまったく反応しないか、極端に乏しい点が決定的な違いです。たとえば睡眠は生理的な可逆状態であり、声掛けで容易に覚醒しますが、意識不明では覚醒刺激に対して反応がみられません。

原因は多岐にわたり、脳出血・脳梗塞などの脳血管障害、頭部外傷、薬物中毒、低酸素血症、糖尿病性昏睡などが代表的です。これらの原因を迅速に特定し、適切な治療を行わなければ生命予後に深刻な影響を及ぼします。

意識不明は緊急医療の現場で最も重篤度が高い症候の一つと位置づけられ、早期の気道確保・循環管理が必須です。家族や周囲の人は、呼吸と脈拍を確認したうえで速やかに119番通報し、心肺停止の兆候があれば直ちに胸骨圧迫を開始する必要があります。

医師は鎮静薬や麻酔薬の投与歴、糖尿病やてんかんの既往、外傷歴などを聞き取り、頭部CTや血液検査を行い原因究明を急ぎます。その後の治療は原因に応じて外科的処置、抗血栓療法、解毒剤投与、低体温療法などが選択されます。

「意識不明」の読み方はなんと読む?

「意識不明」は「いしきふめい」と読み、四字熟語の形式で広く認知されています。「意識」は「いしき」、「不明」は「ふめい」と読み、それぞれ常用漢字の音読みが組み合わさった比較的読みやすい語です。医療従事者や報道関係者は日常的に用いるため、ニュースを通して耳にする機会も多いでしょう。

漢字の成り立ちをみると、「意」は考えること、「識」は知ることを示し、合わせて「自分や外界を考え、知覚する能力」という意味になります。「不明」は文字どおり「はっきりしない」「明らかでない」の意で、これが合わさって「意識がはっきりしない状態」を簡潔に表します。

ふりがなを加える際は「意識不明(いしきふめい)」と全体に添えるか、「意識(いしき)不明(ふめい)」と分割しても誤りではありません。ただし医療文書や公的資料では前者の表記が一般的です。

口頭での発音は平板ではなく「い|しきふめい」のように「し」に軽いアクセントを置く人が多い傾向にありますが、地域差は大きくありません。

「意識不明」という言葉の使い方や例文を解説!

「意識不明」は主に医療・報道の分野で使われますが、日常会話で比喩的に用いられるケースもあります。実際に使用するときは「意識不明の状態」「意識不明の重体」「意識不明で搬送」といった形で、状態や経緯を補足する語を伴わせるのが通例です。

報道基準では、心拍と呼吸があるものの意識がない場合を「意識不明の重体」、呼吸または心拍がない場合を「心肺停止の状態」と区別します。これにより医療機関での診断が確定する前でも、概ねの重症度が伝わるメリットがあります。

【例文1】消防隊員が駆け付けた時点で、男性は意識不明のまま倒れていた。

【例文2】頭部を強打し、病院に搬送されたが依然として意識不明の重体。

比喩的に「意識不明」というときには、たとえば「深夜までゲームに没頭し、翌日は意識不明のようにぼんやりしていた」といった誇張表現として用いられます。ただし医学的な意味と混同される恐れがあるため、公的文書やビジネスメールでは避けたほうが無難です。

文章で用いる際は、「意識不明に陥る」「意識不明となる」など自動詞的に記述するか、「意識不明の患者」「意識不明者」と名詞的に修飾語として使う形が一般的です。

「意識不明」という言葉の成り立ちや由来について解説

「意識不明」という四字は、漢方医学の古典には直接登場しませんが、それぞれの漢字は中国古代の医学書にも頻出します。「意識」は仏教哲学や儒学の影響を受けながら近世に心理学的概念として定着し、明治期に西洋医学が紹介されると同時に医学用語として再定義されました。

「不明」は元来「闇と同義で不分明」の意味を持ち、江戸時代の蘭学書で「昏睡(Coma)」を説明する際に「意識不明」という直訳調の語が用いられたことが起源と考えられています。当時の翻訳では「意志覚束ナキ(いしおぼつかなき)」など表記が揺れましたが、のちに漢語に統一されました。

19世紀末には、東京帝国大学医学部の講義録に「意識不明」という語が登場し、脳卒中や外傷性昏睡を説明する際に採用されています。大正から昭和初期にかけて新聞報道でも用いられるようになり、一般社会へ浸透しました。

現代では「意識障害」という上位概念の一段階として「意識不明」「昏睡」が位置づけられています。この階層構造は、日本神経学会や日本救急医学会のガイドラインにより整理され、医療教育で幅広く共有されています。

「意識不明」という言葉の歴史

日本における意識障害の概念は、奈良時代の医書『医心方』にみられる「昏冒(こんぼう)」の記述が嚆矢とされます。もっとも、この時点では「意識不明」という語は存在せず、主に高熱や脳疾患に伴う昏睡状態を総称していました。

明治維新後、西洋医学の翻訳が進むと「coma」の訳語として「昏睡」が採用されますが、臨床現場で患者家族に説明する際、より平易な表現を求めて「意識不明」の語が使われるようになります。

昭和30年代にはテレビ報道が普及し、交通事故や工場災害で「意識不明の重体」というフレーズが頻出したことで、国民的に定着しました。この時期の警察・消防の発表文書でも正式な表現として採用され、報道用語集に収録されました。

平成以降は救急医療体制の整備に伴い、グラスゴー・コーマ・スケールなど客観的指標が重視されますが、一般向けの速報性を重視するニュースでは依然として「意識不明」の語が用いられ続けています。

新型コロナウイルス感染症の流行下でも、急速な重症化例の報道で「呼びかけに応じない意識不明」という表現が用いられ、緊急性を示すキーワードとしての役割は現在も健在です。

「意識不明」の類語・同義語・言い換え表現

医学的に「意識不明」と近い意味を持つ語としては「昏睡」「深昏睡」「coma(コーマ)」が挙げられます。これらはほぼ同義ですが、「昏睡」は古くからの漢語で、意識レベル判定では最も重症のカテゴリーを指します。「深昏睡」は昏睡の中でも痛み刺激にもまったく反応しない最重度を示す専門語です。

類語として「意識消失」「失神」「気絶」がありますが、これらは意識が一時的に途絶える点が共通しつつ、回復が早い場合に使われます。「気を失う」「ブラックアウト」も日常的な言い換え表現として知られています。

報道分野では「意識不明の重体」を「重体」「危篤」と言い換えることがありますが、医学的には「危篤」が生命維持にかかわる状態をより強く示唆します。一方、法律文書では「心神喪失」が別の意味で用いられるため、混同しないよう注意が必要です。

比喩的な言及を避け、正確な情報を伝える目的であれば「昏睡状態」「意識レベルⅢ」など具体的な指標を併記すると誤解が少なくなります。

「意識不明」と関連する言葉・専門用語

意識障害を評価する代表的な指標はグラスゴー・コーマ・スケール(GCS)です。GCSは開眼(E)、言語反応(V)、運動反応(M)の3項目で構成され、合計3〜15点で評価します。3点は深昏睡に相当し、一般には「意識不明」と表現されます。

もう一つ重要なのが「ジャパン・コーマ・スケール(JCS)」で、日本救急医学会が提唱する1-3桁の数値によって意識レベルを表現します。JCS300は刺激に反応しない状態で、これも「意識不明」に該当します。

ICUで用いられる「RASS(ラッス)スコア」はせん妄や鎮静度を判定する指標で、-5が無反応、+4が興奮状態を示します。RASS-5はGCS3に相当し、意識不明と評価されることが多いです。

これらの指標を用いることで、医療従事者間で意識状態を統一的に共有でき、治療方針や予後予測の精度が向上します。一般の人が救急隊や医師に状況を伝える際は、「呼びかけに全く反応しない」「痛み刺激でも動かない」など具体的に説明することが重要です。

「意識不明」についてよくある誤解と正しい理解

最も多い誤解は「意識不明=死亡」と思われることですが、実際には呼吸と循環が保たれていれば生命活動は続いています。心肺停止とは厳密に区別され、蘇生処置や集中治療によって回復する可能性も残されています。

次に、「意識不明の人を揺さぶれば目を覚ます」という誤解があります。これは頭部外傷や頸椎損傷を悪化させる恐れがあり、絶対に避けるべき行為です。まずは呼吸と脈拍を確認し、医療従事者へ引き継ぐまで安静を保つことが大前提となります。

また、ドラマなどで「意識不明から突然覚醒し、すぐ歩きだす」シーンが描かれますが、医学的には稀であり、多くの場合は段階的なリハビリを要します。脳機能の回復には時間がかかり、一時的に覚醒しても混乱や失見当識(今がいつか分からない状態)が生じやすいです。

最後に、「意識不明=脳死」と混同されることが挙げられます。脳死は脳幹を含む全脳の不可逆的機能停止を指し、臓器移植の判定基準にもなりますが、意識不明は可逆性が残る状態や部分的な機能維持があるケースを含むため、同一視は誤りです。

「意識不明」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「意識不明」は自分や周囲を認識できず刺激に反応しない重篤な意識障害を指す言葉。
  • 読み方は「いしきふめい」で、四字熟語として報道や医療現場で定着している。
  • 江戸末期の蘭学翻訳に起源があり、昭和の報道で国民的に広まった。
  • 使用時は「死亡」や「脳死」と混同せず、緊急性と可逆性を理解して用いる必要がある。

意識不明は医学・報道の両輪で使われる極めて重要な言葉であり、正確な理解と迅速な対応が生死を分けます。原因は脳血管障害、外傷、薬物中毒など多岐にわたり、専門家が客観的指標で評価したうえで治療方針を決定します。日常会話で軽々しく比喩的に用いると、医学的な深刻さが薄れてしまいかねませんので注意が必要です。

今後も高齢化社会や災害リスクの増大に伴い、意識不明の症例は増加する可能性があります。家族や同僚と共通認識を持ち、救急時には迷わず通報し、一次救命措置を行えるよう準備しておきましょう。