「識字率」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「識字率」という言葉の意味を解説!

「識字率」とは、ある集団の中で基本的な読み書きができる人の割合を示す統計指標です。この読み書きには、日常生活に必要なレベルで文章を理解し、簡単な文を作成できる能力が含まれます。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)では15歳以上の人口を対象とするのが一般的ですが、国や機関によって年齢や判定基準が変わる場合もあります。読み書き能力の評価方法はアンケートや実地テストなどがあり、数字の背景に調査方法の違いが隠れている点も見逃せません。

識字率は、教育政策の成果を測るバロメーターとして使われるほか、経済成長や保健医療の指標とも相関があります。読み書きができることで、行政手続きの書類を理解したり、仕事で必要なマニュアルを読んだり、健康情報を正しく把握できたりといった社会的利点が広がるためです。逆に識字率が低い地域では、情報格差や就労機会の減少など、貧困の連鎖が顕在化しやすいことが国際機関の報告書でも繰り返し指摘されています。

数字そのものはシンプルでも、そこには教育への投資、ジェンダー格差、少数言語の保護など、多岐にわたる課題が複雑に絡み合っています。したがって識字率を読み解く際は、単なるパーセンテージではなく、その背後にある社会構造や文化的背景を合わせて考えることが重要です。

「識字率」の読み方はなんと読む?

「識字率」は一般に「しきじりつ」と読みます。「しょくじりつ」と誤って読まれることもありますが、正確には「しきじりつ」です。「識」は「知識」の「しき」、「字」は「もじ」の「じ」、そして「率」は「りつ」と音読みでつなげるため、語感としても覚えやすいでしょう。

なお、統計資料や報道では漢字表記がほとんどですが、教育関連のパンフレットでは振り仮名を付けて「識字率(しきじりつ)」と示されることもあります。海外の資料では「literacy rate」と訳され、国際比較の表では括弧書きで英語表現が添えられるケースが増えています。読み方を押さえておくと、学会発表やレポートでも自信を持って発音できますね。

「識字率」という言葉の使い方や例文を解説!

識字率は、国・地域はもちろん、年代や性別など属性を細分化して比較することで教育格差の実態を浮き彫りにできます。たとえば市区町村単位で計測し、成人男性と成人女性の識字率を比べればジェンダーギャップがわかります。また企業内研修の成果を測るために、従業員の基礎リテラシー向上率として使われる場合もあります。

【例文1】近年の統計によると、国内全体の識字率はほぼ100%だが、高齢層と外国籍住民には課題が残る。

【例文2】政府は識字率の向上を目指し、夜間学校やオンライン学習プログラムを拡充した。

文章で使う際は「向上」「低下」「改善」といった動詞と組み合わせることが多いです。論文では「識字率が○%上昇した」という具合に数値を添え、政策評価の根拠として引用されます。一方で、メディア記事では「読み書き能力」と言い換えて、読者にわかりやすく紹介する工夫がなされることもあります。

「識字率」という言葉の成り立ちや由来について解説

「識字率」という語は、明治期に西洋統計学が導入された際に生まれた和製漢語です。当時の日本は富国強兵政策の一環として国民教育を推進しており、海外の“literacy”という概念を翻訳する過程で「識字」という言葉が定着しました。「識」は「識る(しる)」に由来し、知覚や認識を表します。「字」は文字を意味し、「率」は割合を示す統計用語として既に使われていました。

江戸時代には寺子屋によって読み書き算盤が普及していたものの、全国的に数値化されたデータは存在しませんでした。明治政府が国勢調査と併せて教育状況を調べた際、初めて「識字率」という用語が公文書に登場したと記録されています。その後、大正期には朝日新聞などでもこの語が一般紙面に掲載され、社会一般に広まっていきました。

世界的には、19世紀後半にイギリス統計学会が“literacy rate”を使い始めたのがルーツとされます。日本語の「識字率」はこの流れを取り入れつつ、漢字文化圏ならではの表意文字の概念を反映した表現と言えるでしょう。

「識字率」という言葉の歴史

日本の識字率は江戸後期で既に諸外国と比べて高水準にあったとされますが、公式に計測されたのは明治以降です。明治5年に学制が公布され義務教育が始まると、初等教育修了者の割合が急速に伸び、1900年代初頭には80%を超えたと推計されています。戦後は学制改革と復興期の学校建設が進み、1960年代にはほぼ100%に到達しました。

世界に目を向けると、1950年時点での地球規模の識字率は約56%でした。ユネスコが1965年に制定した「国際識字デー」を契機に各国が成人教育プログラムを強化し、2020年には86%強まで上昇しています。とはいえサハラ以南アフリカや南アジアの一部では、未だ60%前後に留まる国もあり、ジェンダーや農村部での格差が課題です。

日本でも、新しい課題として日本語を母語としない在留外国人や、学習障害を抱える児童・生徒への教育支援が注目されています。こうした新たな文脈で、識字率を「読み書きが困難な人をどう支援するか」という観点から再定義する動きも見られます。

「識字率」の類語・同義語・言い換え表現

識字率の類語としては「リテラシー率」「読み書き能力率」「基礎教育達成率」などが挙げられます。英語の “literacy” には「読解力」や「読み書き能力」など幅広い意味があるため、日本語でも状況に応じて言い換えを選択するとニュアンスを調整できます。たとえば、IT関連の文脈では「デジタルリテラシー」「情報リテラシー」が近い発想で使われることがあります。

統計上は「非識字率」と対で使われることがあるため、文章のリズムによっては「読み書き可能人口比率」と書くほうがわかりやすい場合もあります。ただし専門家の間では「識字率」という言葉が最も通用しやすく、正式資料や学術論文でも広く採用されています。

「識字率」の対義語・反対語

「識字率」の対義語として代表的なのが「非識字率(illiteracy rate)」です。これは読み書きができない、あるいは基礎的な文章理解が困難な人の割合を示します。「文盲率」という語も歴史的に用いられてきましたが、近年は差別的なニュアンスを避けるため公的文書では使われにくくなっています。

対義的な概念としては「学歴水準」や「学士率」といった高等教育の達成度を示す用語もありますが、測る対象が異なる点に注意が必要です。識字率はあくまで「読み書きの基礎力」に焦点を当てた指標であるため、高度な学位取得とは別軸と考えると理解しやすいでしょう。

「識字率」と関連する言葉・専門用語

識字率を語るうえで欠かせない関連用語に「機能的識字(functional literacy)」があります。これは単に文字が読めるかどうかではなく、社会生活を営むうえで必要なリテラシーを指します。たとえば公共料金の請求書を理解し支払いを済ませる、薬の説明書を読んで用法を守るなど、より実践的な能力を評価する概念です。

また「多重識字(multiple literacy)」という考え方では、言語リテラシーに加えて数的リテラシー、ICTリテラシー、金融リテラシーなど複数の読み書き能力が重層的に存在すると説明されます。教育政策では、従来の単一指標としての識字率に限らず、こうした複数軸を組み合わせた評価体系が提唱されています。統計の世界では「GAML(Global Alliance to Monitor Learning)」が学習成果を多面的に測る国際枠組みを整備しており、日本も調査手法の開発に協力しています。

「識字率」についてよくある誤解と正しい理解

「識字率が高い=高度な学力がある」と思われがちですが、実際は基礎的な読み書き能力を測る指標に過ぎません。識字率100%の国でも、高度な批判的思考力や文章作成力まで全国民が備えているわけではない点に注意が必要です。

もう一つの誤解は「識字率は一度高まれば低下しない」というものです。労働移動や移民の流入、教育制度の改革遅延が重なると、一定期間後に識字率が低下するケースが報告されています。さらに、デジタル化が進む現代では紙媒体よりオンライン文書が主流となり、従来の調査方法だけでは実態を捉えきれない可能性もあります。統計データの裏にある測定方法や対象年齢を必ず確認し、値の意味を正しく解釈しましょう。

「識字率」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「識字率」は、一定年齢以上の人口に占める読み書き可能者の割合を示す教育・社会指標。
  • 読み方は「しきじりつ」で、漢字表記が主流だが振り仮名付き表記も見られる。
  • 明治期に西洋の“literacy rate”を翻訳する形で誕生し、近代統計と共に普及した。
  • 数値の背後にある調査方法や社会的文脈を踏まえて活用・解釈する必要がある。

識字率は社会の基盤となる指標であり、教育政策や経済発展、さらには公衆衛生に至るまで多方面に影響を及ぼします。単なるパーセンテージではなく、その数字を生み出す調査設計や文化的背景を読み解くことで、より深いインサイトが得られます。

現代の日本では識字率はほぼ100%とされますが、言語多様性や学習障害、デジタル化に伴う新たな課題が浮かび上がっています。今後は「機能的識字」や「多重識字」といった概念を取り入れ、より包括的に読み書き能力を評価・支援していくことが求められるでしょう。