「受動」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「受動」という言葉の意味を解説!

「受動」とは、外部からの働きかけを受けて物事が進む状態や姿勢を指す言葉で、主体的に動く「能動」と対を成します。

「受動」は一般に「受け身」「パッシブ」とも訳され、行動の主導権が自分ではなく外部要因にあることを示します。文法では受け身形、心理学では受動的態度、技術分野ではパッシブ機器というように、幅広い分野で共通するコア概念は「外部入力に応じて反応する」点です。

受動は必ずしも消極的・否定的な意味を持ちません。状況を俯瞰しつつ外圧を取り込んで最適な判断をすることも含まれるため、柔軟性や安全性を高めるポジティブな戦略として評価される場合があります。

一方で、自ら意思決定を放棄し過度に受け身になると、機会損失や依存を招くリスクがあります。「受動」は単なる行動パターンではなく、自律性とのバランスをどう取るかという課題を含む概念です。

「受動」の読み方はなんと読む?

「受動」は一般的に「じゅどう」と読み、音読みのみで構成される熟語です。

「受」は「ジュ」と読み、「受け取る」「受賞」など受ける動作を示します。「動」は「ドウ」と読み、動作や変化を表します。合わせることで「受けて動く」という意味が可視化され、文字面からも成り立ちがイメージしやすい語です。

歴史的に訓読みは定着せず、現代日本語では音読みのみが標準的です。辞書や教育漢字一覧でも「じゅどう」以外の読みは示されていません。

派生語として「受動態(じゅどうたい)」や「受動喫煙(じゅどうきつえん)」など、いずれも同じ読み方が用いられます。読みを覚えておくと複合語もスムーズに理解できます。

「受動」という言葉の使い方や例文を解説!

使い方のポイントは「外部からの作用を強調する」場面で採用することです。

日常会話では「受動的になりすぎないように注意してね」のように性格や態度を指す用法が一般的です。ビジネスでは「受動的待機」や「受動的データ収集」のように、能動的行為と対比しつつ方針を説明する際に役立ちます。

【例文1】プロジェクトが停滞しているのはメンバーが受動的に指示を待っているからだ。

【例文2】受動的センサーは外部電力を必要とせずに信号を検出する。

類似表現の「パッシブ」はカタカナ語として親しまれていますが、専門文書では「受動」を用いる方が硬質で分かりやすい場合もあります。文体や対象読者に合わせて使い分けましょう。

「受動」という言葉の成り立ちや由来について解説

「受動」は中国古典の語彙を母体とし、漢文訓読を経て日本語に定着したと考えられています。

「受」は甲骨文字の時代から「両手で何かを受けとる形」に由来します。「動」は「重い物を力で揺り動かす象形」であり、どちらも具体的な動作を表す字が抽象化されたものです。

古代中国では「受動」の語が文献に少なく、唐宋期の学術書で「受動」「能動」を対比させた用例が散見します。日本へは漢籍輸入を通じ、江戸期の蘭学・洋学翻訳で「passive」を訳す際に再評価されました。

明治期の言文改革で「受動態」「能動態」が教育現場に定着し、以降は工学・心理学など西洋概念を導入する際の基盤語として活躍しています。

「受動」という言葉の歴史

江戸後期から明治にかけて、翻訳語としての「受動」が急速に広まり、学術語として確立しました。

1798年刊行の『華英通語』には「被動(受動)Voice」の記載があり、これが現存最古の受動態訳語と推測されています。その後、福沢諭吉らが著した英語文法書で「受動態」が採択され、日本語教育に浸透しました。

工学では19世紀末に「受動素子(パッシブエレメント)」が提唱され、第二次世界大戦後の電子工学ブームで一般化しました。社会学・心理学分野でも1950年代以降「受動的攻撃性」など概念の輸入が加速します。

近年は「受動喫煙」の法規制をめぐり報道頻度が高まり、行政文書にも頻繁に登場しています。歴史上、時代ごとに注目分野を変えながら語義を拡張し続けているのが特徴です。

「受動」の対義語・反対語

最も代表的な対義語は「能動(のうどう)」で、主体が自発的に動く状態を示します。

「能動」は自ら仕掛ける姿勢を表し、決断力・積極性と深く結びついています。そのためビジネス評価や学習姿勢の議論では「能動か受動か」がキーワードになります。

近縁語として「アクティブ」「主体的」「プロアクティブ」などがあり、文脈によってニュアンスが微妙に異なります。逆に「被受動」は口語ではほとんど使われませんが学術文献に稀に登場します。

対立を強調しすぎると二元論に陥りやすいため、「状況に応じて能動と受動を切り替える」といったバランス思考が近年では推奨されています。

「受動」と関連する言葉・専門用語

関連語を押さえることで、学術文献や報道での理解が格段に深まります。

受動態:文法用語で、主語が動作を「受ける」構文。

受動喫煙:他人のたばこ煙を吸わされる健康被害。

受動抵抗:機械工学で外力に抗する受け身の抵抗。

受動安全:自動車工学で衝突後に乗員を守る技術。

これらは「external influence」「passive safety」など英語由来の概念を日本語に定着させたものです。各分野での定義は微妙に異なるため、専門書や法令を参照しながら用いると誤解を避けられます。

「受動」についてよくある誤解と正しい理解

「受動=消極的で悪いこと」という誤解が根強いものの、実際にはリスク管理や省エネといった場面で不可欠な視点です。

例えば受動安全装置は事故「後」に働く仕組みですが、これがあるからこそ被害が最小化されます。同様に受動的マーケティングはユーザー行動を静観しつつ的確に応答する戦略であり、むしろ顧客満足度を高める役割を果たします。

【例文1】受動的な休息を取り入れることで疲労回復が進むと医師は助言した。

【例文2】プロジェクトで受動姿勢が必要なフェーズもあるとマネージャーは説明した。

誤解を解くカギは「状況依存」の視点です。能動一辺倒でも受動一辺倒でもなく、両者を行き来できる柔軟性が現代的な行動様式といえます。

「受動」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「受動」は外部からの働きかけを受けて物事が進む状態を示す語句。
  • 読み方は「じゅどう」で、複合語でも同じ音読みが用いられる。
  • 江戸後期の翻訳語として広まり、明治期に学術用語として定着した。
  • 否定的と決めつけず、能動とのバランスを意識して活用することが重要。

「受動」は一見すると消極的な印象を持たれやすい言葉ですが、歴史や専門分野をたどると多面的な価値が見えてきます。読み方・成り立ち・関連語を押さえれば、ビジネスから日常会話、技術文書まで幅広く使いこなせます。

能動を補完し、安全性や効率性を高める概念としても注目されています。外部からの働きかけを巧みに取り込み、自律的判断へ昇華させる—この姿勢こそが現代社会で「受動」を活かすコツと言えるでしょう。