「示される」の読み方と基本の意味
「示される」は「しめされる」と読みます。
読み方自体はシンプルですが、意味や使い方、細かいニュアンスまで正確に理解している人は意外と少ない言葉です。
動詞「示す」の未然形「示さ」に、受身の意味をあらわす助動詞「れる」が接続してできた、れっきとした受身形の言葉です。
「示す」という動作を誰かがされる側の視点から言い直したものが「示される」だと考えると、成り立ちがつかみやすくなります。
基本の意味は、何かがはっきりとした形になって人の目に触れるように、明らかにされるということです。
ぼんやりしていた事柄が、輪郭のはっきりした情報として、誰の前にも同じように差し出される、そんなイメージを持つと理解しやすくなります。
たとえば会議で配られた資料のグラフや、面接での受け答えの様子のように、もともとはっきりしなかったものが、くっきりと浮かび上がってくるようなときに登場する言葉です。
抽象的だった話が、誰の目にも同じように伝わる具体的な形に変わる瞬間をイメージすると理解しやすくなります。
「示す」はもともと訓読みの動詞で、くだけた会話よりも報告書や説明文のような改まった書き言葉で使われる傾向があります。
そのため「示される」も日常会話で口にする機会は少なく、レポートや論文、ニュースなど、正確さや客観性が求められるかしこまった文章でよく見かける言葉です。
「示される」は「示す」のどんな受身形なのか
「示す」は五段活用の動詞で、未然形の「示さ」に受身の助動詞「れる」が接続すると「示される」という形になります。
同じ五段活用でも動詞の種類によって未然形の音は変わるため、「示す」の場合は「示さ」になるという点を、まず押さえておくと理解しやすくなります。
「Aが示す」という能動文は、受身文にすると「(Aによって)〜が示される」という形に変わります。
能動文と受身文では、同じ出来事を述べていても、文の主役がまったく違って見えるのがポイントです。
たとえば「調査結果が問題点を示す」という能動文は、「問題点が調査結果によって示される」という受身文に言い換えられます。
主語が「調査結果」から「問題点」に入れ替わることで、文全体の印象も大きく変わってきます。
能動文では動作をする側の「A」が主役になりますが、受身文にすると「何が示されたか」という内容のほうに焦点が移るのが大きな特徴です。
誰が示したかよりも、示された事実そのものを強調したいときに、受身形はとても便利で使い勝手のよい形です。
実際の文章では「〜によって」の部分が省略されることも多く、誰が示したかをぼかして、事実そのものを客観的に伝える効果があります。
特にビジネス文書や報道記事では、動作主をあえて書かずに「示される」だけで文を終える書き方がよく見られ、落ち着いた客観的なトーンを演出できます。
「示される」が使われる場面ごとの意味の違い
「示される」は何が主語になるかによって、受け取る印象が少しずつ変わる言葉です。
同じ「示される」という形でも、場面ごとにニュアンスを微調整しながら読むと、文章の意図や書き手の温度感まで、より正確につかみやすくなります。
データや数値、統計結果について使うときは、客観的な事実がくっきりと浮かび上がってくるという、揺るぎない印象を与えます。
グラフや表に基づいて語られることが多いため、感覚的な話ではなく、根拠のある話だという信頼感につながり、説得力を求められる場面でよく選ばれる言い回しです。
感情や態度、意思について使うときは、言葉ではなく表情や行動を通じて、それとなく伝わってくる様子を表します。
本人が直接口にしなくても、日々の態度の端々からにじみ出てくるようなニュアンスを持っています。
証拠や根拠、裏付けについて使うときは、疑いを晴らすだけの確かさがそこにある、という強い納得感をともないます。
反論の余地が少なくなるような、決め手となる材料が提示された場面でよく使われ、聞き手や読み手を納得させる力の強さを感じさせます。
方向性や方針、道筋について使うときは、これから進むべき道がはっきりと見えてくるという、前向きな響きを持つのが特徴です。
迷っていた状況から一歩抜け出せるような、道しるべが示されたときの、ほっとするような安心感が伴います。
「示される」と「示せる」は何が違うのか
「示される」と「示せる」は形がよく似ていますが、文法上の役割はまったく異なる言葉です。
たった一文字の違いなのに、意味は大きく変わってしまうので、書くときも読むときも注意が必要です。
「示される」は受身形、「示せる」は可能形で、意味の上でもはっきりと区別される言葉です。
受身形は「〜される」という形、可能形は「〜できる」という意味を持つ形だと覚えておくと、とっさの場面でも区別しやすくなります。
「れる・られる」という助動詞には受身・可能・自発・尊敬という複数の意味があるため、似た形の言葉と混同しやすいので注意が必要です。
「示される」も文脈次第で受身以外の意味に見えてしまうことがあるため、前後の文をよく確認することが大切です。
「示される」は「(誰かによって)明らかにされる」という意味であるのに対し、「示せる」は「示すことができる」という能力や可能性を表す言葉です。
前者は出来事そのものを描写し、後者はその出来事を起こせるかどうかを述べている、という違いがあります。
たとえば「根拠が示される」は根拠が実際に明らかになる様子を表しますが、「根拠を示せる」はその根拠を提示できるだけの力があることを表すため、書き分けには注意が必要です。
この二つを取り違えると、伝えたい内容が正反対に近い印象になってしまうこともあるため、文章を書いたあとに読み返して確認する習慣をつけると安心です。
「示される」を使った例文集
- 【例文1】今回の調査結果から、顧客満足度の低下が明確に示される
- 【例文2】本研究により、二つの要因の間に強い相関関係があることが示される
- 【例文3】彼の態度には、この件への強い関心が示されている
- 【例文4】会議の資料には、来期の方針がはっきりと示されていた
- 【例文5】十分な根拠が示されない限り、この主張は認められない
- 【例文6】過去のデータからも、同様の傾向が示されてきた
ビジネスやレポートの場面では、数値やデータを根拠として示すときに「示される」がよく使われます。
売上や満足度といった具体的な指標とセットで使われることが多く、数字の裏付けがあることで、読み手にとって説得力のある文章に仕上がります。
学術的な文章では「〜ことが示される」という形で、研究の結果や結論を客観的に述べるのによく使われます。
論文では書き手の主観を抑えて、データそのものが淡々と語っているかのような、控えめな書き方が好まれるため、この形がよく登場します。
日常的な文章では態度や資料など、目に見える形で伝わってくるものについて使われることが多く、否定形の「示されない」や過去形の「示された」「示されていた」も合わせて覚えておくと、表現の幅がぐっと広がります。
「示される」の言い換え表現との使い分け
「示される」と似た言葉はいくつかありますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
似ているからこそ、場面に合わない言葉を選んでしまうと、書き手が意図した以上に、文章の印象がずれてしまうことがあります。
「示唆される」は、はっきりと示すのではなく、それとなくほのめかす程度にとどまる、控えめな表現です。
はっきりと言い切るだけの自信や根拠がないときや、断定を避けたいときによく使われる、やわらかい言い回しです。
「示される」ははっきりと明らかになる場合に使い、「示唆される」は可能性を感じさせる程度の場合に使い分けるのが基本です。
確信の度合いに応じてこの二つを使い分けると、文章全体がより正確で、誤解の少ないものになります。
「表される」は感情や状態など抽象的なものも含めて、幅広い対象に使える言葉である一方、「明らかにされる」は事実であることがほぼ確定した、という強いニュアンスを持ちます。
対象の広さと、確定度の強さという二つの軸で考えると、四つの言葉それぞれの立ち位置や得意な場面が、自然と見えてきます。
「提示される」は資料や案などを、形式立てて差し出すという手続き的な響きを持つ言葉です。
単に見える形になるだけでなく、誰かの手によって意図的に、しかもある程度整った形で差し出されたというニュアンスが加わる点が「示される」との違いです。
「示される」がよく使われる文型・言い回し
「示される」には、文章の中でよく使われる決まった型がいくつかあります。
代表的なパターンを知っておくと、読むときも書くときも迷いにくくなります。
もっとも代表的なのが「〜によって示される」という形で、データや根拠となるものを「によって」で受けて結論を導く言い方です。
「このグラフによって、売上の増加傾向が示される」「実験結果によって、仮説の正しさが示される」のように使います。
次によく見られるのが「〜ことが示される」という言い回しで、「新しい治療法に効果があることが示される」のように、示された内容全体をいったん「こと」でひとまとめにしてから、結論として文をつなげる形です。
文章全体を客観的にまとめたいときに便利な型です。
ほかにも「〜と示される」「〜ように示される」という言い回しがあり、内容の引用や比喩的な言い添えに使われます。
「数値は異常であると示される」「結果は年々改善しているように示される」のように、断定を避けてやわらかく伝えたいときに重宝する表現です。
論文やビジネスレポートでは「本研究の結果、〜であることが示された」という結び方が定番です。
「データによって、〜ということが示された」のように複数の型を組み合わせて使うことも多く、結論部分を締めくくる一文として非常によく登場します。
「示す」の成り立ちから見る「示される」の由来
「示される」のもとになっている「示す」という漢字は、もともと祭壇の形をかたどった文字だと言われています。
文字の成り立ちを知ると、「示す」という言葉の奥深さが見えてきます。
「示」という字は、神へのお供え物をのせる祭壇の様子を描いた象形文字が起源だと言われており、非常に古い成り立ちを持つ漢字です。
そこから「神や天が人間に兆しを見せる」という特別な意味合いを持つようになったと考えられており、これが「示す」の意味の出発点だとされています。
古い時代の用法では、天変地異や吉凶のしるしなど、神仏がそれとなく人にメッセージを伝える場面で「示す」が使われていたと言われています。
人間同士の普通のやり取りというより、目に見えない存在からの特別なお告げに近い言葉だったと考えられています。
時代を経るにつれて、対象は神仏に限らず、人が人に対して何かを見せたり明らかにしたりする、より一般的な意味へと少しずつ広がっていきました。
今の「資料を示す」「証拠を示す」といった使い方は、この広がりの延長線上にあります。
現代では、この「示す」に受身の「れる」が付いた「示される」が、資料やデータが何かを明らかにするという文脈で自然に使われる言葉として定着しています。
神事に由来する言葉が、いまでは論文やビジネスの場面でも欠かせない表現になっているのは興味深いところです。
ビジネス文書や論文で「示される」が多用される理由
「示される」がビジネス文書や論文でよく使われているのには、文体の面からもはっきりとした理由があります。
単なる言い回しの好みではなく、文章の信頼性を左右する選択でもあります。
受身の形を使うことで、「誰が示すのか」という動作主をぼかし、書き手の主観を抑えた客観的な印象を与えられるからです。
実際に「私はこう考える」と主張するように言うより、ずっと落ち着いた客観的な響きになります。
例えば「データが示すように」と能動的に書くより、「データによって示される」と受身にしたほうが、個人の解釈ではなく事実そのものが浮かび上がって見える、という文体的な傾向があります。
書き手の「私」を感じさせない分、内容そのものに焦点が当たりやすくなるのです。
学術論文では「〜という結果が示される」、ビジネスレポートでは「課題が明確に示される」のように、結論や根拠を述べる場面で定型的に使われています。
実際にどちらの文書でも、この一言があるだけで文章がぐっと引き締まります。
こうした受身表現を選ぶことで、文章全体が落ち着いた印象になり、読み手に対する信頼性も高まりやすくなります。
フォーマルな場面では、こうした一手間が説得力の違いにつながります。
「示される」を使うときに注意したい誤用・不自然な表現
便利な「示される」ですが、使い方によっては誤解を招いたり、かえって不自然に響いたりすることがあります。
ここでは代表的な注意点を見ていきます。
受身にしすぎて動作主を省きすぎると、「結局何が示しているのか」が読み手に伝わらなくなってしまう点には注意が必要です。
特に長い文章では、主語がどこにも見当たらないという事態にもなりかねません。
また、日常会話のような話し言葉で「それ、示されてるよね」のように使うと、硬い印象が強すぎて不自然に聞こえてしまいます。
友達同士の会話なら、「わかるよね」くらいのほうが自然です。
「〜によって示されられる」のような二重受身や、「〜が示される」とすべきところを「〜を示される」としてしまう助詞の誤りも、よく見られるミスです。
書いたあとに声に出して読んでみると、こうした違和感に気づきやすくなります。
フォーマルな文章では便利な表現ですが、会話や柔らかい文章では「わかる」「見て取れる」などへ言い換えるなど、状況に応じた使い分けが大切です。
一つの言葉に頼りすぎず、相手や場面に合わせて選び直す姿勢が、読みやすい文章につながります。
「示される」のまとめ
- 「示される」の読み方は「しめされる」で、「示す」の受身形です。
- データや根拠が何かを明らかにする場面で、客観的な印象を与える言葉として使われます。
- 「〜によって示される」「〜ことが示される」など、論文やビジネス文書で好まれる定型的な言い回しがあります。
- 動作主が曖昧になりすぎたり、話し言葉で硬くなりすぎたりしないよう、場面に応じた言い換えが大切です。
ここまで「示される」について、読み方や成り立ち、使われる文型、例文から見える実際の使われ方まで見てきました。
「示す」という一つの動詞が、こんなに幅広い顔を持っていることに驚いた方もいるかもしれません。
「示される」は「しめされる」と読む「示す」の受身形で、動作主をぼかしながら物事を客観的に伝えられる便利な表現です。
日常会話よりも、論文やビジネス文書との相性がよいことも見てきました。
「〜によって示される」「〜ことが示される」といった型を押さえつつ、場面によっては「わかる」「見て取れる」などへ言い換える柔軟さも持っておくと、文章がぐっと自然になります。
こうしたポイントを押さえておけば、「示される」を自信を持って使いこなせるはずです。