「心中」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「心中」という言葉の意味を解説!

「心中」は主に「複数人が合意して命を絶つ行為」と「心の中・内心」という二つの意味を持つ多義語です。

前者は恋人同士や親子など親密な関係で見られ、英語では「double suicide」と訳されます。

後者は「心中を察する」「心中複雑」といった形で、相手の思いや気持ちを指すときに使います。

文脈により意味が大きく変わるため、読み手・聞き手が誤解しないよう注意が必要です。

「心中」の読み方はなんと読む?

自殺を表す場合は「しんじゅう」、内心を表す場合は「しんちゅう」と読むのが一般的です。

辞書や専門書では「しんじゅう」「しんちゅう」の両方を掲載しており、漢字自体は同一です。

ニュースや文学作品では「しんじゅう」が頻出し、ビジネスメールや会話では「しんちゅう」が使われる傾向があります。

読みを迷ったときは文脈から判断し、ふりがなを添えると誤解を防げます。

「心中」という言葉の使い方や例文を解説!

文脈に応じて重い意味にも日常的な意味にもなるため、使い方には細心の注意が必要です。

「心中=ダブル自殺」の意味で軽い冗談として使うと深刻な誤解を招く恐れがあります。

一方、内心の意味であればビジネスでも問題なく使われ、相手への配慮を示す表現として重宝します。

【例文1】二人は周囲の反対に耐えきれず、心中を図った。

【例文2】部長の心中を察し、会議では慎重に意見を述べた。

【例文3】彼女は表情に出さないが、心中では大いに喜んでいる。

「心中」という言葉の成り立ちや由来について解説

「心中」は仏教語「心中(しんちゅう)=心の内側」に由来し、江戸時代に「相愛自殺」を指す語として転用されました。

仏教では「心中無一物」という説話から「心の奥底」を指す語として用いられました。

近松門左衛門の浄瑠璃『曽根崎心中』(1703年)の大ヒットで「心中=情死」の意味が全国に広まりました。

その後、浮世草子や歌舞伎でも頻繁に扱われ、現代の「しんじゅう」の意味が定着しました。

「心中」という言葉の歴史

江戸期の心中事件増加と文学作品の影響により、言葉は社会問題と芸術表現の両面で語られてきました。

18世紀の大坂では「心中禁止令」が出されるほど社会に衝撃を与え、多くの瓦版が事件を報じました。

明治以降は新聞報道で「無理心中」「情死」などの派生語が生まれ、刑法でも「同意殺人」として扱われます。

戦後はメディア倫理が整備され、報道自粛や自殺予防の視点から扱い方が変化しました。

「心中」の類語・同義語・言い換え表現

内心の意味では「胸中・本心・腹の内」、自殺の意味では「情死・無理心中・集団自殺」が主な類語です。

「胸中を明かす」「本心を吐露する」のように置き換えると柔らかな印象になります。

自殺関連の言い換えはセンシティブなため、報道ガイドラインでは「心中を図る」を「自殺を図る」と書き換える例もあります。

「心中」の対義語・反対語

内心の対義語は「公言・表面」、自殺の対義語は「生還・生存」などが挙げられます。

「胸中」と対比して使う場合、「公然」「外面(そとづら)」が反対概念となります。

自殺の反対は医学・福祉分野では「生きる支援」「予防」という観点で語られることが多いです。

「心中」についてよくある誤解と正しい理解

「心中=恋愛の美談」という誤解は根強いものの、実際は深刻な社会問題であり犯罪行為に該当する場合もあります。

文学作品のロマンチックな描写が「美化」につながりやすい点には注意が必要です。

また、内心を表すとき「心中お察しします」は弔慰表現であり、日常の軽いシーンでは使わない方が無難です。

「心中」に関する豆知識・トリビア

「曽根崎心中」の初演日は1703年5月7日で、実際の事件が起きてからわずか17日後に上演されました。

近松門左衛門の作品は興行収入を大きく伸ばしましたが、幕府は模倣犯を懸念し脚本の改変を命じた記録があります。

現代の法律では「同意殺人罪」や「自殺関与・教唆罪」が適用され、心中でも生き残った側が刑事罰を受ける可能性があります。

「心中」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「心中」は「複数人の自殺」と「心の中」という二つの意味を持つ多義語です。
  • 読み方は文脈で「しんじゅう」「しんちゅう」と変わり、誤読を避けるための配慮が必要です。
  • 江戸時代の文学作品や事件を通じて現代の意味が定着し、社会問題としても扱われています。
  • 使用場面によってはセンシティブな語なので、類語・対義語を使い分けつつ誤解のない表現を心掛けましょう。

「心中」という言葉は歴史的背景と多義性を併せ持つため、正しい意味と読みを理解して使うことが大切です。

特に自殺に関わる文脈では、当事者や遺族の心情に配慮し、専門家や公的機関の情報に基づいた慎重な表現を心掛けましょう。

一方、内心を指す「心中」は日常語として便利ですが、フォーマルかカジュアルかでニュアンスが変わる点にも注意が必要です。