「努めて」の読み方は「つとめて」で正しい?読み間違いに注意
「努めて」は「つとめて」と読みます。
日常会話やビジネス文書、エッセイやコラムなど幅広い場面で見かける表現で、決して難読語ではありませんが、読み方に自信が持てないという方も少なくないようで、大人になってから読み方を再確認する人も多い言葉です。
「努力」「努める」といった見慣れた熟語のイメージにひきずられて「どりょくして」と読んでしまう方が意外と多いのですが、これは誤った読み方です。
「努めて」という言葉に、そのような読み方は存在しないので注意しましょう。
「努」という漢字は、音読みでは「ド」、訓読みでは「つと(める)」と読み、「努力(どりょく)」は前者、「努めて」は後者にあたります。
「努めて」はこの訓読みが活用してできた形なので、正しい読み方は「つとめて」の一択です。
新聞のコラムやビジネスメールの中で不意に出てくると、一瞬「どう読むんだっけ」と迷ってしまう方も少なくありませんが、落ち着いて考えれば迷わず「つとめて」と読んで差し支えありません。
声に出して読む機会がある方は、事前に読み方を確認しておくと、いざというときにも慌てずに済むでしょう。
発音するときは、特定の音を強く伸ばしたり跳ねたりする必要はなく、全体を平らなイントネーションで読むのが自然です。
似た響きを持つ「勤めて」「務めて」との違いについては、このあとの章で漢字の使い分けとあわせて詳しく取り上げます。
「努めて」の意味とは?「できるだけ〜しようとする」というニュアンス
「努めて」は、意識してできるだけそうしようとする気持ちを表す副詞的な表現です。
単に「〜する」と言い切るのではなく、「〜しようと努力する」というニュアンスを含んでいる点が大きな特徴で、話し手の内面の働きかけが伝わってきます。
ポイントは、実際にそうなったという結果そのものよりも、「そうあろうとする姿勢」に重きが置かれている点にあります。
心の中でどれだけ頑張ろうとしたかという、目に見えない努力の部分に光を当てる言葉なのです。
たとえば「努めて明るく振る舞う」と言うとき、話し手が実際に明るい気分かどうかは関係なく、本人が意識してそう振る舞おうとしていることが表されています。
心の中では落ち込んでいても、表向きは笑顔を心がけている、というような状態を指すことができるわけです。
そのため「努めて」のうしろには、「冷静に」「平静を装う」「笑顔でいる」など、自分の心や態度を自分自身でコントロールしようとする言葉が続きやすい傾向があり、この組み合わせのパターンを知っておくだけでも、文章の意味がすっと入ってくるようになります。
基本的にはポジティブで前向きな文脈で使われることが多く、努力する姿勢そのものを評価するニュアンスを含んだ、どちらかというと好印象を与えやすい言葉だと言えるでしょう。
反対に、投げやりな態度や結果を放棄するような文脈では使われません。
「努めて」の由来は?動詞「努める」との関係から探る
「努めて」は、動詞「努める」の連用形「努め」に、接続助詞の「て」が付いてできた言葉です。
動詞の活用形が、そのまま副詞のような働きをするようになった例のひとつで、日本語にはこうした成り立ちの言葉が数多く存在します。
もとをたどると古語の「努む(つとむ)」にさかのぼり、「力を尽くして事にあたる」という意味を持っていたと言われています。
現代語の「努める」も「職務に努める」「解決に努める」のように、この古い意味を色濃く受け継いだ動詞として使われ続けています。
「努」という漢字自体が「力を尽くす」「精いっぱいがんばる」という意味を持っており、この字義が「努めて」という言葉全体の芯になっていると考えられます。
同じ「努」を使う「努力」「努力家」といった言葉からも、この字が持つ意味合いが伝わってきます。
動詞の活用形である「努めて」は、もともと「努力して」という動作そのものを説明する言葉でしたが、しだいに「できるだけ〜しようと」という心構えや姿勢を表す副詞的な言い回しとして定着していったとされています。
会話や文章の中で単独に近い形で使われるようになったのも、この変化の表れといえるでしょう。
こうした成り立ちを知ると、「努めて冷静に」のような使い方が単なる決まり文句ではなく、努力という動詞の意味をしっかりと土台に持つ表現だと理解しやすくなり、言葉そのものへの理解もぐっと深まるはずです。
語源を意識するだけで、日々の言葉選びも少し変わってくるかもしれません。
「努めて」と「勤めて」「務めて」は何が違う?漢字の使い分け
「つとめて」と読む言葉には「努めて」「勤めて」「務めて」の三つがあり、同じ音でありながら、それぞれの漢字が持つ意味によってニュアンスがはっきりと異なります。
文章を書くときには、この使い分けでつまずく方も少なくなく、変換ミスにも注意が必要です。
「勤めて」は会社や組織に所属して働くことを表し、勤務や出勤に関わる意味を持つ言葉です。
「十年間この会社に勤めて、ようやく一人前になりました」のように、雇用関係のある継続的な働き方を表すときに使い、「勤務」「出勤」「勤続」といった熟語ともつながりの深い漢字です。
「務めて」は役割や任務を果たすことを表し、「議長を務めて」「司会を務めて」「主役を務めて」のように、立場や役目を示す言葉とセットで使われるのが大きな特徴です。
責任のある役割や職責を引き受けているニュアンスが含まれ、「任務」「義務」「職務」といった熟語とも通じる漢字だと言えます。
一方「努めて」は努力や尽力そのものを表す言葉で、結果よりも「がんばろうとする過程」に焦点が当たっている点が、ほかの二つとの決定的な違いになります。
所属や役職、立場とは関係なく、誰にでも使える点も大きな特徴です。
三つとも読み方がまったく同じであるため、耳で聞いただけでは区別がつかず、文章で使うときには前後の文脈に合った漢字を選ぶことが何より大切になります。
迷ったときは、働くことなら「勤」、役目なら「務」、努力なら「努」と覚えておくと、変換ミスも防ぎやすくなります。
古文の「つとめて」と「努めて」は同じ?枕草子にみる意味の違い
古文に登場する「つとめて」は、実は現代語の「努めて」とはまったく異なる意味を持つ言葉で、成り立ちからして別物だと考えられています。
古典を読むときには、この違いをあらかじめ知っておくと文章の意味をつかみやすくなります。
古語の「つとめて」は「早朝」「その日の朝」を意味する名詞で、清少納言の『枕草子』の冒頭にある「冬はつとめて」という有名な一節でも、まさにこの意味で使われています。
学校の古文の授業で目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
つまり「冬はつとめて」は「冬は早朝の様子がとりわけよい」という意味であり、「冬は努力して」という意味では決してないので、現代語の感覚のまま読んでしまわないよう注意したいところです。
この一文だけでも、古文と現代文の意味の違いがよくわかります。
語源としては、古語の「つとめて」は「早くに」を意味する副詞「つとに」という言葉と関わりが深いと言われており、現代語の「努める」から生まれた「努めて」とは成り立ちそのものが異なる、いわば同音の別語だと考えられています。
同じ字面や読みを持つ言葉でも、まったく違う歴史を歩んできたことになります。
読みが同じ「つとめて」であるために混同されやすいものの、古文と現代文ではまったく違う意味の言葉だと理解しておくと、古典の文章を読むときにも安心して意味を取ることができ、テストなどでも役立つはずです。
現代語の感覚だけで古文を読もうとすると、思わぬ誤読につながることもあるので気をつけましょう。
「努めて」を使った例文で使い方を確認
- 【例文1】お客様の前では努めて冷静に対応するよう心がけています
- 【例文2】つらいときほど努めて明るく振る舞うようにしている
- 【例文3】今後も努めて丁寧な言葉遣いを心がけてまいります
- 【例文4】面接では努めて平常心を保つことを意識した
- 【例文5】努めて前向きな言葉を選ぶようにしたら、周りの雰囲気も変わってきた
- 【例文6】彼は自分の意見を努めて控えめに伝えていた
ビジネスシーンでは「努めて丁寧に」「努めて冷静に」のように、自分の態度や姿勢を意識的にコントロールしようとする場面で使われることが多く、話し手の心構えの丁寧さが伝わる言い回しです。
メールや接客、面談など、丁寧さが求められる場面でも違和感なく使うことができます。
日常会話ではややかしこまった響きを持つ言葉なので、友人同士の気軽な雑談よりも、少し改まった話し方や書き言葉の中で使うほうが自然に収まります。
カジュアルな場では「なるべく」「できるだけ」といった言葉に置き換えたほうが、自然な響きになることも多いでしょう。
いずれの例文にも共通しているのは、「努めて」のうしろに続く言葉が、話し手が意識してそうあろうとしている状態や態度を表しているという点です。
結果を保証する言葉ではなく、あくまで本人の姿勢や心構えを表明する言葉である点を押さえておくと、例文をまねするだけでも自然に使いこなせるようになります。
「努めて」の類語・言い換え表現にはどんなものがある?
「努めて」と近い場面で使われる言葉はいくつかあります。
代表的なのが「できるだけ」「なるべく」「意識的に」「可能な限り」です。
「できるだけ早く終わらせます」のように、「できるだけ」は日常会話で幅広く使える便利な言葉です。
「なるべく」はさらに柔らかい響きを持ち、親しい相手との会話にもよく登場します。
ただし「努めて」には、これらの言葉にはない「意志の強さ」を感じさせるニュアンスがあります。
「できるだけ」や「なるべく」が可能な範囲の広さを示す言葉であるのに対し、「努めて」は困難な状況に自分の意志で立ち向かう姿勢を表します。
「意識的に休憩を取る」のように、「意識的に」は注意を向けている状態を表す言葉ですが、努力の強さそのものまでは伝わりにくいという違いがあります。
「可能な限り」は範囲の限界を強調する表現で、報告書などフォーマルな文章に馴染みます。
似た言葉に「極力」もあり、「極力早めにご返信いたします」のようにビジネス文書でよく使われますが、こちらも意志の強さより範囲の広さを示す言葉に近いといえます。
「努めて笑顔で対応する」と「できるだけ笑顔で対応する」を比べると、前者のほうが話し手の意志の強さがより伝わってきます。
履歴書や志望動機書のように、意志の強さを見せたい文章では「努めて」が特に効果を発揮します。
なお「努めてできるだけ」のように重ねて使うと意味が重複するため、避けたほうが自然です。
柔らかさを出したいときは「なるべく」を、意志の強さを伝えたいときは「努めて」を選ぶとよいでしょう。
文章のフォーマルさや伝えたい意志の強さを基準に選ぶと、迷わず使い分けられます。
「努めて」を使うときに注意すべきポイントとは?
「努めて」を使う際には、いくつか気をつけたいポイントがあります。
まず「努めて」は、話し手自身の意志や姿勢を表す言葉だという点です。
そのため、すでに終わった結果だけを説明する文には馴染みにくい性質があります。
たとえば「努めて完成した」という言い方は不自然に聞こえます。
「努めて明るく振る舞う」のように、行動の仕方そのものを説明する文で使うと自然です。
この違いを意識するだけで、表現の幅がぐっと広がります。
「彼は努めて優勝した」も違和感のある文で、「努力の末に優勝した」と言い換えるほうがすっきりします。
「努めて」は基本的に、自分自身の行動や姿勢を語るときに使う言葉だと意識しておくと迷いにくくなります。
また「努めて」は前向きな行動と組み合わせるのが基本で、望ましくない行動には使わない点も覚えておきましょう。
次に、使いすぎると文章全体が硬い印象になりやすい点にも注意しましょう。
「努めて」は本来、かしこまった響きを持つ言葉です。
話し言葉よりも書き言葉として使われることが多い点も、知っておくと安心です。
友人とのメッセージで「努めて頑張るね」と書くと、少し他人行儀な印象になってしまうこともあります。
カジュアルな文章で多用すると、堅苦しさばかりが目立ってしまいます。
敬語と組み合わせる際にも気を配りたいところです。
「努めてまいります」のような形は自然な敬語表現ですが、「努めさせていただきます」と重ねすぎると回りくどい印象になることがあります。
場面に合った丁寧さのバランスを意識しながら、効果的に取り入れていきましょう。
ビジネス文書やメールで「努めて」はどう使う?
ビジネスの場面で「努めて」は、決意を伝える言葉としてよく使われます。
特に多いのが「努めてまいります」という丁寧な言い回しです。
「今後とも品質向上に努めてまいります」のように、前向きな姿勢を示す場面で重宝します。
取引先へのメールの結びに一言添えるだけで、文章全体が引き締まった印象になります。
謝罪の文章に添えることもよくあります。
「再発防止に努めてまいります」と書けば、反省と今後の改善の意志を同時に伝えられます。
謝罪の言葉だけで終わらせず、次の行動につなげられる点が便利です。
顧客対応の場面で「ご満足いただけるよう努めてまいります」と伝えると、丁寧かつ前向きな印象を残せます。
また、現在すでに取り組んでいることを伝えたいときは「努めております」という言い方も使われます。
「一層努めてまいります」のように「一層」を添えると、さらに前向きな決意を強調できます。
決意表明の場面でも効果的に使えます。
「努めて丁寧な対応を心がけます」といった表現は、相手に誠実さを感じさせます。
面接や志望動機書で「努めてまいります」と書くと、意欲を控えめかつ丁寧に伝えられます。
「善処するよう努めてまいります」のように、確約を避けつつ前向きさを示したいときにも便利です。
上司への報告書や自己紹介の場面でも、前向きな印象を与えたいときに役立ちます。
ただし多用すると、かえって形式的で中身のない印象を与えることもあります。
具体的な行動や数字を添えると、より説得力のある文章に仕上がりますので、場面に応じて上手に使い分けてみましょう。
「努めて」を英語で表現するとどうなる?
「努めて」にぴったり一致する英単語は見つかりません。
そのため、文脈に応じて訳し分ける必要があります。
努力する姿勢を強調したいときは「try to do one’s best」が近い表現です。
可能な範囲で行う意志を伝えたいときは「as much as possible」が使いやすいでしょう。
「努めて明るく振る舞う」なら「try to act cheerful」のように訳せます。
「努めて冷静でいる」であれば「try to stay calm」が自然な訳になります。
ビジネスメールでは「We will do our best to improve our service」のように、意志を主語にした文で表すと自然です。
よりフォーマルな文書では「endeavor to ~」という動詞を使うと、「努めて」に近い格式のある響きになります。
英文レジュメでは「strive to ~」という動詞も、意志の強さを表す表現として使われます。
カジュアルな場面であれば「I’ll try my best to ~」くらいの軽さでも十分に意味が伝わります。
「make an effort」も候補になりますが、「努めて」特有の控えめな丁寧さまでは伝わりにくい場合があります。
英語には、日本語の「努めて」が持つ控えめで芯のある意志のニュアンスを一語で表す言葉がありません。
そのため、動詞や副詞を組み合わせて補う工夫が求められます。
日本語ならではの奥ゆかしさを表す言葉だと理解しておくと、翻訳の工夫がしやすくなります。
翻訳の際は、努力の強さと場面の丁寧さの両方を意識するとよいでしょう。
「努めて」の意味・読み方・由来まとめ
- 「努めて」の読み方は「つとめて」です。
- 「できるだけ〜しようとする」という意志を表す言葉です。
- 動詞「努める」が変化してできた言葉と言われています。
- 「勤めて」「務めて」とは意味が異なるため、文脈に応じた使い分けが必要です。
ここまで、「努めて」の類語や使い方の注意点、ビジネスでの使い方、そして英語表現までを見てきました。
読み方は「つとめて」の一択で、由来は動詞「努める」にあります。
「努めて」は、話し手の前向きな意志を丁寧に伝えられる、便利で奥深い言葉です。
「勤めて」「務めて」とは異なり、結果ではなく姿勢や過程を表す点が最大の特徴です。
日常会話からビジネスの場面まで幅広く活躍する言葉ですので、今日学んだ意味や使い方を思い出しながら、ぜひ実際の文章で使いこなしてみてください。
読み方や由来、「勤めて」「務めて」との違いをもっと詳しく知りたい方は、第1部もあわせてご覧ください。