「拝読」の読み方
「拝読」は「はいどく」と読みます。
普段の会話ではあまり使わない、ややあらたまった響きを持つ言葉です。
読み間違いをしやすい言葉なので、まずは正しい読み方をきちんと確認しておきましょう。
ビジネスメールやお礼状、契約書、目上の方への手紙などあらたまった文章で頻繁に登場する表現だからこそ、うろ覚えのままにせず自信を持って読めるようにしておくと安心です。
「拝」は「はい」、「読」は「どく」と読み、どちらも音読みで構成されている二字熟語にあたるため、訓読みを混ぜて読んでしまうと本来の読み方からずれてしまいます。
二つの音の響きをひとまとまりのフレーズとして覚えてしまえば、迷ったときにもすぐに思い出しやすくなります。
特によく見られる誤読が「はいよみ」で、これは普段なじみのある訓読みの「よむ」につられて、「読」を「よみ」と読んでしまうことが原因です。
「はいとく」のように「どく」を濁らせずに読んでしまうケースも、話し言葉ではうっかり出やすいので注意しておきたいところです。
「はい」も「どく」も語頭は清音ですが、「読」だけは「とく」ではなく濁音の「どく」になる点を意識すると、二つを混同せずに区別しやすくなります。
正しい読み方をしっかり押さえておけば、メールや手紙はもちろん、あらたまった会話やスピーチの場でも迷わず自然に使いこなせるようになるでしょう。
「拝読」の意味
「拝読」とは「読む」の謙譲語で、自分が読むという動作をへりくだって伝える言葉です。
目上の人やお客様など、敬意を払うべき相手との文章のやり取りで頻繁に使われます。
相手が書いた手紙や書類、メールなどを読んだときに、「読ませていただきました」という敬意の気持ちを込めて使う言葉です。
単に「読みました」と伝えるよりも、書き手への敬意や、読ませてもらえたことへの感謝の気持ちまで、あわせてしっかりと伝わる表現になります。
「拝読」の対象になるのは、あくまで相手が書いた手紙や書類、メール、案内状、企画書、著書といった文章に限られます。
同じ内容を読む場合でも、書いたのが自分なのか相手なのかによって使える言葉がまったく変わってくるため、対象が誰の書いたものかを常に意識しておくことが大切です。
意味の近い言い方としては「読ませていただく」が挙げられ、どちらも自分の動作を低めて相手を立てる働きを持つ表現です。
「読ませていただく」がやわらかく口語的な響きを持つのに対し、「拝読」はより簡潔で改まった印象を与えるため、書き言葉やあらたまった場面でとくに好んで使われます。
「拝読」という一語の中には、相手への敬意と、読ませてもらえたことへの感謝の気持ちの両方が込められています。
この二つの気持ちが一語に凝縮されているからこそ、短い言葉でありながら丁寧な印象を強く与えられるのです。
「拝読」の敬語の種類(謙譲語)
「拝読」は敬語の分類上、「謙譲語Ⅰ」にあたる言葉です。
難しく感じるかもしれませんが、仕組みを知れば迷わず使えるようになります。
謙譲語Ⅰとは、自分の動作が向かう相手を立てるために使う敬語のことで、「拝読」も読む対象である手紙や書類の書き手を敬う働きを持っています。
文化庁の「敬語の指針」でも敬語は尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語の五種類に分類されており、読む動作そのものではなく文章を書いた相手に敬意が向いている点が、「拝読」がこの謙譲語Ⅰに含まれる理由です。
同じ「読む」でも、相手自身が読むという動作をする場合は、尊敬語の「お読みになる」を使い、読み手である相手の動作を高めて敬意を表します。
「拝読」とは敬意を向ける方向がちょうど逆になるため、動作の主語が自分なのか相手なのかによって、二つの言葉をはっきりと使い分ける必要があります。
一方「読みます」は丁寧語にあたり、動作の主体を高めることも低めることもせず、聞き手に対して話し方そのものを丁寧にするだけの表現です。
「拝読」のように相手を立てる働きはないため、敬意の方向という点では「拝読」とも「お読みになる」とも性質が異なります。
整理すると、相手が読むなら「お読みになる」、自分が読むなら「拝読」、敬意の方向を問わない場面では「読みます」というように、立場と敬意の向きで使い分けるのが基本です。
この三つの違いを押さえておけば、敬語の選び間違いを防げます。
「拝読」を使う場面と使い方
「拝読」は、目上の人や取引先など敬意を払うべき相手が書いた文章を、自分が読んだときに使う言葉です。
手紙やメールの返信で、まず読んだことを一言添えたいときに重宝する表現です。
上司や先輩から届いたメール、取引先からの手紙、目上の方の著書や報告書など、幅広い文章を読んだ場面で使うことができます。
読む文章の形式は紙でもメールでも問わないため、状況に応じて柔軟に使い分けられるのも「拝読」の使いやすいところです。
注意したいのが、自分が書いた文章を相手に読んでもらいたい場面で、うっかり「拝読してください」と言ってしまう誤用です。
「拝読」はあくまで自分の動作をへりくだる言葉なので、相手の動作に対して使ってしまうと、敬語の向きがまったく逆になり、聞き手に違和感を与えてしまいます。
この場合は「拝読」ではなく、尊敬語の「お読みください」や「ご覧ください」を使うのが正しい言い方になります。
「読んでほしい」という気持ちが先に立つときほど、うっかり「拝読」を使ってしまいやすいので、意識して気をつけたいポイントです。
「拝読」は書き言葉に限った表現ではなく、式典の挨拶やスピーチ、打ち合わせでの会話など、口頭のあらたまった場面でも自然に使うことができます。
「先日拝読しました」のように話し言葉の中に組み込んでも、文章で使うときと変わらない丁寧さで相手にしっかりと伝わります。
「拝読」を使った例文
- 【例文1】ご丁寧なメールを拝読いたしました、ありがとうございます
- 【例文2】お送りいただいた資料を拝読しました、大変参考になりました
- 【例文3】温かいお心遣いのお手紙を拝読いたしました
- 【例文4】先生の新しいご著書を拝読し、大変勉強になりました
- 【例文5】会議の資料を拝読のうえ、改めてご連絡いたします
- 【例文6】先ほどのスピーチ原稿を拝読させていただきました、素晴らしい内容でした
どの例文にも共通しているのは、手紙やメールなど相手が書いたものを、自分が読んだという場面で使われているという点です。
読む対象が「相手の書いたもの」であることさえ押さえておけば、ビジネスでもプライベートでも、どんな場面でも迷わず自然に使うことができます。
ビジネスメールでは例文1、2のように「拝読いたしました」「拝読しました」と丁寧に言い切る形が定番で、取引先や上司への返信メールの書き出し、報告の一文としてそのまま使えます。
「いたす」を添えると、よりあらたまった丁寧な印象を相手にしっかりと与えられます。
手紙やお礼状では、例文3のように「拝読」の後に感想やお礼の言葉を続けると、堅苦しくなりすぎず気持ちがぐっと伝わりやすくなります。
スピーチや会話で使う場合も、例文6のように書き言葉のときと同じ形のまま、特別に言い換えたりせず自然に使って問題ありません。
「拝読」の類語・言い換え表現
「拝読」の類語としてまず挙げられるのが「拝見」です。
普段の言い換えにも役立つので、代表的な類語との違いを見ていきましょう。
「拝見」は「見る」の謙譲語なので、文章を読む場面だけでなく、品物や景色、資料などを見る場面でも幅広く使える点が「拝読」との大きな違いです。
「拝読」が読む行為に限定されるのに対して、「拝見」はより守備範囲の広い謙譲語といえます。
一方「一読」や「熟読」は、読むという動作そのものの程度や深さを表す言葉で、それ自体には謙譲語としての働きは備わっていません。
「資料を一読する」「論文を熟読する」のように、「一読」は軽くひととおり目を通すことを、「熟読」はじっくりと時間をかけて読み込むことを、それぞれ意味しています。
「一読」や「熟読」を目上の人に対して使うときは、「一読いたしました」「熟読させていただきました」のように、へりくだる言葉を別に添える必要があります。
「拝読」のように、それ一語だけで敬意を表せるわけではない点に注意しましょう。
相手への敬意を簡潔に伝えたいときは「拝読」を、読み方の程度や熱心さまで伝えたいときは「一読」「熟読」を敬語表現と組み合わせて使う、というように、伝えたい内容に応じて使い分けるとよいでしょう。
三つの言葉の違いを知っておくと、表現の幅がぐっと広がります。
「拝読」と言われた際の返し方
取引先や上司から「拝読しました」とわざわざ丁寧に伝えられたときは、その心遣いをそのまま聞き流してしまうのではなく、こちらも同じくらい丁寧な一言を添えて返すのが、社会人としての基本的なマナーとされています。
特に相手が目上の人であるほど、この一言の有無で印象が大きく変わります。
具体的には「恐縮です」「お目通しいただき、誠にありがとうございます」のように、謙虚さと感謝の気持ちを合わせて伝えるのが、「拝読」と言われた際の基本の返し方です。
ビジネスメールで返信するときは「早速のご確認、痛み入ります」や「ご丁寧にお目通しいただき、誠にありがとうございました」といった一文を添えると、感謝と恐縮の気持ちがより自然に、そして丁寧な形で相手に伝わります。
件名に「拝読のご報告」と入れておけば、開封前から丁寧な印象を与えられます。
返答のときに気をつけたいのは、相手がわざわざ読んでくれたという行為に対して、うっかり自分から「拝読」という言葉を使ってしまう言い間違いです。
この間違いは意外と気づかれにくいため、特に気をつけたいポイントです。
「拝読」はあくまで自分がへりくだるために使う言葉であって相手の行為には使えないため、「お読みいただく」「ご覧いただく」といった表現に置き換えるのが正しい返し方です。
なお、親しい間柄の相手であれば「わざわざ読んでいただいてすみません」のような、柔らかい言い回しに変えても失礼にはあたりません。
「拝読」をビジネスメールで使う際のポイント
ビジネスメールの中で「拝読」を適切な場所に配置すると、文章全体が丁寧で誠実な印象になり、相手からの信頼にもつながります。
特に初めてやり取りする相手や、目上の人物とのメールでは効果を発揮します。
件名には「〇〇資料拝読のご報告」のように、書き出しには「ご送付いただいた資料、拝読いたしました」のように使うと、相手は本文を読む前から、こちらの丁寧な姿勢を感じ取れます。
長い前置きは不要で、一言添えるだけで十分です。
結びやお礼の場面でも「拝読」は活躍し、「資料を拝読し、大変勉強になりました」「ご著書を拝読し、深く感銘を受けました」と添えれば、感謝と敬意がしっかり伝わり、文章全体の印象も引き締まります。
「〜についての記載、大変参考になりました」のように具体的な感想も一言添えると、社交辞令ではなく本当に読んだという印象がより強まります。
社外の取引先や目上の相手には積極的に使う一方で、社内の親しい同僚とのやり取りでは、状況に応じて「読みました」程度に控えめにするなど、相手との関係性に合わせて使い分けるのが自然です。
上司や役員が宛先に含まれる社内メールでは、社外と同様に丁寧な表現を選ぶと安心です。
急いで一言だけ返したいときは「早速拝読いたしました。」という短い一文だけでも、迅速に対応した誠実な姿勢が十分に伝わります。
本文が短いメールほど、こうした一言の丁寧さが相手の印象を左右します。
「拝読」の由来
「拝読」は「拝」と「読」という二つの漢字を組み合わせた言葉で、それぞれの意味を知ると成り立ちがよく見えてきます。
「読む」はそのまま文字を読むという意味ですが、そこに添えられた「拝」の一字が、この言葉全体を謙譲語に変えています。
「拝」はもともと両手を合わせて頭を深く下げ、相手に礼をする動作を表す漢字で、そこから「謹んで」「つつしんで」という謙譲の意味が加わったと言われています。
その「拝」に「読む」という動作を組み合わせることで、「謹んで読ませていただく」という、自分をへりくだらせた「拝読」という言葉が生まれたと言われており、書き言葉として長く使われてきました。
同じ「拝」を使った言葉には、人と会うことをへりくだる「拝見」や、話を聞くことをへりくだる「拝聴」、物を借りることをへりくだる「拝借」などもあります。
これらはいずれも、自分の行為の前に「拝」を置くことで相手への敬意を表す、共通した成り立ちを持つ言葉で、日常のビジネスシーンでも頻繁に登場します。
こうした「拝〇」型の言葉はもともと中国から伝わった漢語表現が日本語の書き言葉に取り入れられ、手紙文化とともに広まりながら、現代のビジネス文書やメールでも変わらず使われ続けていると言われています。
話し言葉ではあまり使われず、書き言葉としての性格が強い点も特徴です。
「拝読」を使う際の注意点
「拝読」は便利な謙譲語ですが、使い方を誤ると不自然になったり、かえって失礼にあたったりすることがあるため、いくつかの注意点を押さえておく必要があります。
特に敬語に不慣れなうちは、うっかり間違った使い方をしてしまいがちです。
特に注意したいのが「拝読させていただきます」という表現で、「拝読」自体にすでに謙譲の意味が含まれているため、「させていただく」を重ねると二重敬語にあたる可能性があります。
「拝読いたします」「拝読します」のように、シンプルな形にとどめておくほうが、かえって洗練された印象になります。
ただし「拝読させていただきます」は実際のビジネスシーンでも広く使われており、誤りと言い切れないほど定着しているのが実情です。
気になる場合は、シンプルな「拝読いたします」を選ぶとより丁寧です。
もう一つの注意点は、目上の人に対して「拝読してください」と言ってしまうケースで、これは「拝読」を相手の行為に使ってしまう誤用にあたります。
相手に読んでほしいときは「拝読」ではなく、「ご一読ください」「お目通しください」といった表現を使うのが正しい伝え方です。
また一通のメールの中で「拝読」を何度も使うと、かえって文章が堅苦しくなってしまうため、ここぞという場面で一度使う程度が、ちょうどよいバランスです。
同じ意味を持つ「拝見しました」などの表現と使い分けると、文章に変化も生まれます。
「拝読」のまとめ
- 「拝読」は「はいどく」と読みます。
- 自分が「読む」ことをへりくだって表す謙譲語です。
- 相手の行為には使えず、二重敬語や誤用にも注意が必要です。
- 由来を知れば、正しい場面で自然に使いこなせます。
ここまで「拝読」と言われた際の返し方から、ビジネスメールでの使い方、成り立ちである由来、そして使う際の注意点まで、幅広く見てきました。
読み方や意味だけでなく、こうした実践的な使い方まで押さえておくことで、実際のビジネスシーンでも迷わず、自信を持って「拝読」を使えるようになります。
「拝読」は「はいどく」と読み、自分がへりくだって「読む」ことを表す謙譲語で、相手の行為には使えない点や、「拝読させていただきます」のような二重敬語になりやすい点がポイントです。
目上の人に「拝読してください」と言ってしまう誤用や、使いすぎによる堅苦しさにも注意が必要です。
「拝」という漢字が持つ「謹んで」という由来を知ると理解が深まり、二重敬語や誤用に気をつけながら正しく使いこなせれば、相手への敬意がしっかり伝わります。
ビジネスの場はもちろん、日常のやり取りでも信頼感のあるコミュニケーションを重ねていくためにも、正しい「拝読」の使い方を身につけておきましょう。