「捕食」の読み方とは
「捕食」は「ほしょく」と読みます。
普段の会話ではあまり使わない方も多く、書籍やニュースで初めてこの漢字を目にしたときに、どう読むべきか一瞬迷ってしまうこともあるでしょう。
「捕食」という漢字を見て、いくつか読み方の候補があるのではと迷ってしまう方もいるかもしれません。
しかし辞書で確認できる正しい読み方は「ほしょく」ただひとつだけで、これ以外の読み方はありません。
「捕」という漢字は音読みで「ほ」、「食」という漢字は音読みで「しょく」と読み、この二つが組み合わさっています。
訓読みを交えずに、この二つの音読みだけをそのままつなげて一語にまとめたものが「捕食」という熟語だと理解しておくと、読み方を忘れにくくなります。
「捕食」は訓読みではなく音読みだけで組み立てられた熟語なので、なんとなく感覚的に読もうとするとかえって間違えやすい言葉でもあります。
「捕獲(ほかく)」や「捕虜(ほりょ)」、「捕縛(ほばく)」など「捕」を使う別の熟語につられて、読み方を混同してしまう方も見かけます。
「捕食」は日常のちょっとした雑談よりも、動物のドキュメンタリー番組や理科の教科書、生態系に関する解説記事などで目にすることが多い言葉です。
そのぶん耳で聞き慣れる機会が少なく、初めて漢字を目にしたときに読み方で戸惑ってしまう方が少なくありません。
「捕食」の意味をわかりやすく解説
「捕食」とは、生物が他の生物を捕らえて食べることを意味します。
小さな昆虫から大きな肉食獣まで、自然界に暮らすあらゆる生き物にとって、日々の暮らしの中で欠かすことのできない基本的な行動のひとつだと言えるでしょう。
「捕食」は単に「食べる」という結果だけを指す言葉ではなく、相手を追いかけたり仕留めたりして捕らえる過程まで含んでいる点が大きな特徴です。
たとえば野生のライオンが茂みに隠れてシマウマとの距離を詰め、一気に飛びかかって仕留め、その肉を食べるまでの一連の行動は、まさに「捕食」と呼ぶにふさわしい場面だと言えます。
獲物を探し出し、距離を詰め、力や俊敏さを駆使して捕まえるところまでの流れ全体が、この言葉には込められています。
一方で、私たちが食卓に並んだ料理を箸で食べる行為や、すでに調理された食品を口にする行為は「捕食」とは呼びません。
「捕食」という言葉はあくまで、生き物同士の捕らえる・捕らえられるという緊張感のある関係を前提にした言葉だからです。
生き物にとって捕食は、生きるために必要な栄養やエネルギーを得て命をつなぐための、本能に根ざした摂食行動です。
狩りに失敗すればその日の食事にありつけないこともあるため、獲物を得られるかどうかがそのまま自分や仲間の生死に直結し、捕食は生き延びるうえで欠かせない営みのひとつになっています。
「捕食」という言葉の由来・成り立ち
「捕食」は「捕」と「食」という、それぞれ意味を持つ二つの漢字を組み合わせてできた言葉です。
「捕」には「つかまえる」「とらえる」という意味があり、「食」には「たべる」という意味があります。
「捕らえる」と「食べる」という本来は別々の二つの動作を、ひとつの漢字熟語としてまとめ上げたところに「捕食」という言葉の成り立ちの面白さがあると言われています。
もともと漢字も熟語の組み立て方も中国から伝わったものであり、「捕食」もそうした漢語の作り方を土台にして生まれた言葉のひとつと考えられています。
「捕獲」「捕殺」など「捕」を頭につけた熟語が数多く存在するのも、こうした漢語らしい造語法の名残だと言われています。
日本には漢字とともにこうした熟語の考え方が伝わり、長い時代を経る中で日本語の語彙のひとつとして定着していったと言われています。
「捕食」もそうした流れの中で、生き物が獲物を捕らえて食べる様子を端的に表す言葉として使われるようになりました。
近代に入り、生態学や動物学といった自然科学の学問が体系立てられていく過程で、生物同士の食う・食われるの関係をありのままに説明する必要が生まれました。
そうした中で「捕食」という言葉が、善悪の感情を交えずに客観的な現象を指し示す学術用語として広く定着していったと言われています。
生物学における「捕食」と食物連鎖の関係
生物学の世界で「捕食」を語るときには、必ず「捕食者」と「被食者」という対になる関係が登場します。
たとえばカエルにとって昆虫は獲物であり、そのカエルもまたヘビにとっては獲物になるというように、食べる側を捕食者、食べられる側を被食者と呼び、この二つは表裏一体の関係にあります。
一つ一つの捕食という行動が鎖のようにつながっていくことで、食物連鎖と呼ばれる生態系の大きな仕組みが成り立っています。
植物を昆虫や草食動物が食べ、その草食動物を肉食動物が捕食し、さらに大型の肉食動物がその肉食動物を捕食するというように、捕食の連なりは段階的に積み重なっていきます。
こうした関係は、下から上へと積み上がる生態ピラミッドという図で説明されることも多いです。
生態ピラミッドは下の階層ほど個体数が多く、上の階層に行くほど少なくなるのが一般的な傾向で、植物や草食動物という土台があってはじめて肉食動物の暮らしが成り立っています。
この数のバランスが保たれることで、特定の生物だけが増えすぎたり減りすぎたりしない仕組みが維持されているのです。
捕食者がいなくなれば被食者が増えすぎて植物や資源を食い尽くしてしまい、逆に被食者が減りすぎれば捕食者も生きていけなくなるため、捕食という関係そのものが生態系全体のバランスを保つ役割を担っていると言われています。
「捕食」の具体的なパターン・種類
「捕食」と一口に言っても、その方法は生物の種類や体の大きさ、暮らす環境によって実にさまざまで、大きく分けると「待ち伏せ型」と「追跡型」という二つのパターンに分類されることが多いです。
待ち伏せ型と追跡型
草むらや物陰、水中などに身を潜めて獲物が近づいてくるのをじっと待つ「待ち伏せ型」は、カマキリやワニ、クモの巣を張るクモなどによく見られる捕食パターンです。
一方でチーターやオオカミ、シャチのように、自分から獲物を見つけて全力で追いかけて仕留める「追跡型」という捕食のしかたもあります。
どちらの型を選ぶかは、その生物の体の作りや暮らす環境と深く結びついています。
捕食を行う生物の幅広さ
捕食を行う生物は、ライオンやトラといった大型の肉食動物だけにとどまりません。
ワシやタカなどの猛禽類、カマキリやクモといった昆虫、川や海に暮らす魚、さらには水中の小さなプランクトンを捕らえる微生物に至るまで、捕食という営みは驚くほど幅広い生き物によって行われています。
オオカミの群れが役割を分担しながら自分たちより大きなヘラジカなどを追い詰めるように、単独ではなく仲間と協力して行う協調的な捕食も自然界ではよく見られます。
ライオンの群れが連携して大きな獲物を仕留める姿もよく知られており、群れで狩りをすることは、一頭だけでは狩ることが難しい大きな獲物を仕留めるための知恵だと言えるでしょう。
ビジネス・社会分野で使われる「捕食」の比喩表現
「捕食」は生物学の言葉であると同時に、「大手企業が中小企業を捕食する」のように、新聞や経済ニュースの見出しでも比喩表現としてしばしば使われる言葉です。
強い者が弱い者を一方的に飲み込んでいくイメージが、生物界における捕食のイメージと重ね合わされているのでしょう。
代表的な例が「捕食的価格設定」、いわゆるプレデタリー・プライシングと呼ばれる経済用語です。
資金力に余裕のある企業が、あえて赤字覚悟の安値を打ち出すことで、体力の乏しい競合他社を市場から締め出そうとする戦略を指します。
資本力のある大企業が、価格や資金力を武器にして競合や市場そのものを「食い尽くす」ようなふるまいを、捕食にたとえて表現しているのです。
ほかにも、大手IT企業が急成長中の新興サービスを買収するときのように、資金力のある大企業が有望な中小企業やスタートアップを次々と買収し、自社の傘下に取り込んでいく動きを「捕食」と表現することがあります。
業界内での競争を勝ち抜きながら、より弱い立場の企業を次々と飲み込んでいく様子が、獲物を捕らえる捕食者の姿と重ねられているのでしょう。
弱い立場のものが強い立場のものに一方的に飲み込まれるイメージを伴うため、この比喩はニュースや経済記事、独占禁止法に関する議論などにおいて、ネガティブな響きで使われる傾向があります。
「捕食」と読みが同じ「補食」との違い
「捕食」とまったく同じ「ほしょく」という読み方をする言葉に、「補食」があります。
読み方だけを聞いていると同じ言葉のように思えますが、漢字も意味もまったくの別物なので注意が必要です。
「補食」は栄養を補うための間食のことを指し、生き物が獲物を襲って食べる「捕食」とは、意味がまったく異なる同音異義語です。
たとえば三食だけでは栄養が足りないときに口にする、おにぎりやバナナのような軽い食事が、この「補食」にあたります。
なぜこのように紛らわしい言葉が生まれたのかというと、それぞれの漢字が持つ意味に理由があります。
「捕」は獲物を「捕らえる」という字であるのに対し、「補」は不足を「補う」という字であり、成り立ちを知っておくと変換ミスを防ぎやすくなります。
「補食」という言葉は、成長期の選手が朝食・昼食・夕食だけでは摂りきれないエネルギーを、練習の前後に補うスポーツ栄養学の場面で特によく使われます。
部活動の顧問や栄養士が「練習後に補食をとりましょう」と声をかけるのは、この意味での使い方です。
日常生活ではあまり登場しない言葉ですが、耳で聞いただけでは「捕食」と区別がつかないため、文章を書くときはどちらの漢字を使うべきか、一度立ち止まって確認する習慣をつけると安心です。
スポーツ系のブログやSNSの投稿でも、変換ミスによって「捕食」と書かれてしまっている例を見かけるので、書き手として気をつけたいポイントです。
「捕食」の類義語・言い換え表現
「捕食」と似た意味を持つ言葉に「捕獲」と「摂食」があり、言い換えの候補としてよく挙げられます。
ただしそれぞれ意味の焦点が微妙に異なるため、置き換えるときには注意が必要です。
「捕獲」は生け捕りや確保に重点がある言葉で、獲物を捕らえた後に食べるかどうかは含みません。
たとえば「野生動物を捕獲する」という場合、その後に保護することも放すこともあり得ますが、「捕食する」にはそうした含みがなく、食べるところまでが確定しています。
「摂食」は食べる行為そのものを指す医学・生物学の用語で、草食動物が草を食べる場合にも使える広い言葉です。
動物行動学では「摂食行動」という言葉で捕食も含めた食べる行動全般を扱うことがあり、「捕食」はそのうち他の生き物を襲って食べる場合に限定した、より狭い言葉だと考えると整理しやすくなります。
「狩り」は動物にも人にも使える言葉で、獲物を追いつめて捕らえる行為そのものに焦点があります。
「狩猟」はさらに、法律や免許に基づいて人間が行う行為を指すのが一般的で、動物には使いません。
生態系における食う食われるの関係を客観的に説明したいときは「捕食」を、獲物を追う一連の行動や過程を臨場感をもって描きたいときは「狩り」を選ぶと、文章の焦点がぶれません。
迷ったときは、行為の主役が野生生物なのか人間なのかを基準にすると判断しやすくなります。
「捕食」を使った例文
- 【例文1】野生のライオンは群れでシマウマなどの草食動物を追い、捕食して生きている
- 【例文2】この深海魚は夜になると小さなエビやプランクトンを盛んに捕食する
- 【例文3】カエルはヘビに捕食される側であると同時に、昆虫を捕食する側でもある
- 【例文4】経営体力を失った中小企業が、資本力のある大手企業に捕食された
- 【例文5】悪質な投資業者が高齢者の虎の子の資産を捕食する事件が後を絶たない
- 【例文6】力の弱い新興国の市場は、先進国の巨大資本に捕食される危険に常にさらされている
例文1から3のように、生物学的な文脈では「捕食する」が食べる側、「捕食される」が食べられる側を表すという使い分けが基本です。
どちらの形も文章の中で頻繁に使われるため、セットで覚えておくと表現の幅が広がります。
例文3のカエルのように、同じ生き物であっても相手が違えば捕食する側にも捕食される側にもなり得ることを知っておくと、生態系への理解がぐっと深まります。
教科書的な言葉に思えても、身近な生き物の関係にあてはめて考えると案外イメージしやすいはずです。
例文4から6のようにビジネスや社会の場面で使う場合は、弱い立場にある存在が強い立場の存在に一方的に利益や資源を奪われる様子を、「捕食される」という受け身の形で表すのが一般的です。
この使い方は新聞やニュース記事の見出しでも見かけることがあります。
英語で「捕食」を表現する場合
英語で「捕食」という生物学的な行為そのものを指すときは、名詞の「predation」が使われます。
「捕食者」は「predator」、「被食者」は「prey」と、捕食する側とされる側でそれぞれ別の単語が用意されており、なかでも生態系の頂点に立つ捕食者は「apex predator(頂点捕食者)」と呼ばれます。
「AがBを捕食する」のように動詞で言い換えたいときは、「prey on」という句動詞を使うのが最も一般的です。
たとえば「Lions prey on zebras」は「ライオンはシマウマを捕食する」という意味で、学術論文や自然科学系のニュース記事に頻繁に登場する表現です。
「predatory」は「捕食性の」「略奪的な」という意味を持つ形容詞で、動物の生態を説明する場合にも、人間社会の比喩として使う場合にも使えます。
日本語の「捕食」が主に生物学の専門用語として使われるのに対し、英語の「predatory」は日常会話やニュースでもかなり頻繁に登場する言葉です。
ビジネスの世界では「predatory pricing(略奪的価格設定)」や「predatory lending(略奪的貸付)」のように、弱い立場の相手を食い物にする行為を表す言葉として定着しています。
このように英語の「predatory」は日本語の「捕食」よりも一段と強い非難のニュアンスを帯びることが多いため、翻訳するときは前後の文脈を踏まえて訳し分ける工夫が必要です。
「捕食」についてのまとめ
- 「捕食」は「ほしょく」と読み、生き物が他の生き物を捕らえて食べることを意味します。
- 生物学では食物連鎖を構成する重要な現象として使われます。
- ビジネスや社会分野では、弱者が強者に一方的に利益を奪われる比喩として使われます。
- 栄養補給を意味する「補食」とは、漢字も意味も異なる同音異義語です。
ここまで「捕食」という言葉について、正しい読み方や意味、由来となる漢字の成り立ちから、生物学的な使われ方、ビジネスでの比喩表現、類義語や例文、英語表現に至るまで幅広く見てきました。
「ほしょく」という読み方さえ押さえておけば、生物学の教科書からニュース記事まで、様々な場面でこの言葉を正しく読み解けるはずです。
「捕食」はもともと生物が生きるために他の生物を捕らえて食べるという、生態系の食物連鎖を支える生物学の専門用語ですが、そこから転じて、ビジネスや社会の現場で弱い立場が強い立場に一方的に利益を奪われる様子を表す比喩としても広く定着しています。
読み方が同じ「補食」や、意味の似た「捕獲」「摂食」「狩り」との違いを意識し、生物学的な意味で使うのか比喩として使うのかを文脈の中ではっきりさせることが、「捕食」という言葉を正確に使いこなすための一番のポイントです。
この記事を読み終えたあとは、ニュースや本の中で「捕食」という言葉を見かけたときに、その場面が生物学的な話なのか比喩表現なのかを意識して読んでみてください。