「授受」の意味をわかりやすく解説
「授受」とは、お金や物品、書類、権利などを「渡すこと」と「受け取ること」の両方をまとめて一語で表す言葉です。
ふだんの生活でよく使う「渡す」と「もらう」という二つの動作を、ひとつの硬い熟語にぎゅっと詰め込んだようなイメージだと考えると、意味がすんなり頭に入ってきますし、辞書的でかたい言葉だという印象も同時につかめるはずです。
渡す側の一方的な動作だけでも、受け取る側の一方的な動作だけでもなく、渡す・受け取るという双方の行為がそろってはじめて成り立つのが「授受」という言葉の核心です。
たとえば友人の誕生日にプレゼントを手渡す場面を思い浮かべると分かりやすく、渡す人の行為だけを取り出しても、それは「授受」とは呼べません。
受け取る人がその場でしっかり両手で受け取る動作まで含めてはじめて、贈り物のやり取りという一連の出来事全体が「授受」という言葉にふさわしいものになるのです。
また「授受」は、家族や友人との気軽なおしゃべりの中にはほとんど登場せず、契約や引き渡し、公的な手続きの場面など、少しあらたまった状況であらためて選ばれやすい、書き言葉としての性格が強い言葉だという特徴もあり、話し言葉として口にするとやや堅苦しく聞こえることもあります。
日常会話であれば「渡す」「もらう」で十分に意味が通じるところを、あえて「授受」と言い換えることで、感情を交えずにやり取り全体を客観的かつ丁寧に伝えられる硬めの響きが生まれます。
「授受」の読み方と読み間違えやすいポイント
「授受」は、音読みで「じゅじゅ」と読む熟語で、ニュースの原稿や契約書などのややかたい文章の中でよく登場します。
まずはこの「じゅじゅ」という読み方そのものを、意味よりも先にしっかり頭に入れてしまうことが、この言葉を正しく使いこなすための第一歩であり、読み方があいまいなままだと自信を持って使いにくくなってしまいます。
「授受」の正しい読み方は「じゅじゅ」ただ一つであり、辞書を確認してもこれ以外の読み方は載っていません。
「授」も「受」も音読みがそろって「じゅ」であるため、二文字続けてまったく同じ音が重なるという、日本語の熟語の中でも珍しいタイプの読み方をしています。
同じ響きが連続するぶん、最初は舌が慣れずに戸惑うかもしれませんが、口に出して繰り返すうちに自然と耳になじんでいき、一度覚えてしまえば忘れにくい読み方だと言えるでしょう。
一方で気をつけたいのが、それぞれの漢字が単独で持っている訓読みとの混同です。
「授」には「さずかる」「さずける」、「受」には「うける」というなじみ深い訓読みがあり、意味のイメージから思わずそちらの読み方を当てはめてしまい、人前で読み間違えて恥ずかしい思いをしてしまう人も少なくありません。
「授受」を「さずけうけ」のように訓読みまじりで読んでしまうのはよくある間違いなので、この熟語を見かけたときは二字ともそろえて音読みの「じゅじゅ」と読むと意識しておくと安心です。
「授受」の成り立ち・由来
「授」という漢字は「さずける」「あたえる」という意味を持ち、目上の立場にある人や組織が、下の立場の相手に何かを与える場面で古くから使われてきました。
「教授」「授与」「授業」といった熟語にも、「授」が持つ与える・伝えるという意味合いがはっきりと表れており、知識や物を分け与えるニュアンスが共通しています。
「受」という漢字は「うける」「うけとる」という意味を持ち、外から差し出されたものを自分の側に取り込む場面で使われる漢字です。
「受領」「受賞」「受信」といった熟語からも、「受」が持つ受け取るという意味合いがはっきりと伝わってきます。
「授受」は、与えるという意味の「授」と、受け取るという意味の「受」という、方向がまったく逆の二字を組み合わせることで、渡す・受け取るという一連の行為をまとめて一語に表した熟語です。
このように相反する意味の漢字を組み合わせて一つの概念を表す熟語は、日本語の中に他にも見られる作り方で、決して珍しいものではありません。
「売買」が売ることと買うことを、「貸借」が貸すことと借りることを、それぞれ一語でまとめて表すのと同じ発想で、「授受」も作られた言葉だと考えられています。
「授」と「受」という向きが逆の二字が対等に並んでいるからこそ、「授受」は片方だけの動きではなく、渡す側と受け取る側の双方向のやり取りそのものを表す言葉になっていると言われています。
「授受」の使い方・文法的な特徴
「授受」という言葉は、名詞としてそのまま使うことができ、「〜の授受」という形で直前に他の名詞を置く使い方が最も一般的です。
「金銭の授受」「書類の授受」のように、何がやり取りされる対象なのかを直前に添えることで、文章の意味がぐっと具体的になります。
「授受」は単独の動詞ではないため、動作としてそのまま使うことはできず、動きを表したいときは「授受する」「授受を行う」のように、「する」や「行う」といった動詞と組み合わせる必要があります。
「授受する」は主語となる人や組織が自らの意思でやり取りをする場面で使われ、「授受を行う」はそこにさらに事務的・形式的な響きを加えたいときに好まれる言い方です。
どちらの言い方も、「渡す」「受け取る」と比べて、感情を抑えた客観的で硬い印象を与える表現になります。
また「授受が行われる」のように受け身の形にすると、誰が渡して誰が受け取ったのかという当事者をぼかし、出来事そのものに焦点を当てる言い方になります。
契約書や報告書、議事録など、行為者よりも事実関係を淡々と記録しておきたい文章で好んで選ばれる形です。
「授受」は名詞・動詞的表現・受け身のいずれの形でも使うことができ、文書の目的や伝えたいニュアンスに応じてこれらの形を使い分けられますが、どの形であっても口語的なくだけた響きにはならず、常にあらたまった書き言葉らしい印象を保つ点が共通しています。
「授受」がよく使われる場面・分野
「授受」が最もよく使われる場面のひとつが、金銭のやり取りです。
「現金の授受」「代金の授受」のように、お金が人から人へ、あるいは組織から組織へと動く場面で、この言葉は日常的にもビジネスの場でも幅広く使われており、窓口や取引の現場でも耳にすることがあります。
「授受」という言葉は、金銭だけでなく物品や書類など、形のあるものを渡し受け取る場面全般で幅広く使われる言葉であり、業種を問わずさまざまな現場で耳にする機会があります。
「物品の授受」「書類の授受」「贈答品の授受」のように、宅配便で荷物を受け渡しする場面から、会社どうしで重要な書類をやり取りする場面まで、対象となるものは実にさまざまです。
形のあるものが人の手から手へ、あるいは窓口から窓口へと移る場面であれば、贈り物であっても事務用品であっても、「授受」という言葉がしっくりと当てはまります。
形のない情報や権利についても、「授受」は使われます。
「個人情報の授受」「著作権の授受」「権利の授受」のように、データや権利が一方の当事者から他方の当事者へ移る場面でも、この言葉が選ばれ、目に見えないものであってもやり取りの事実関係を明確にする役割を果たしてくれます。
契約書や法律、行政の文書では、いつ・誰が・何を渡し受け取ったのかを正確に記録しておく必要があるため、感情の入り込む余地がない「授受」という硬く客観的な言葉が好んで選ばれます。
「授受」を使った例文集
- 【例文1】本日、御見積書の授受を確認いたしましたので、ご報告申し上げます
- 【例文2】担当者立ち会いのもと、両社間で契約書類を授受する運びとなりました
- 【例文3】本契約に基づき、甲乙間で行われる金銭の授受については別紙のとおりとする
- 【例文4】引き渡し当日は、現地にて鍵の授受が行われる予定です
- 【例文5】申請書類の授受にあたっては、受領印の押印をもって完了とする
- 【例文6】友人からお菓子をもらったときは「授受した」ではなく「もらった」と言うのが自然です
ビジネスメールや契約書の例文から分かるように、「授受」は誰が・何を・いつやり取りしたのかを、感情を交えず淡々と記録しておきたい場面でよく選ばれる言葉で、報告書や議事録との相性も良好です。
例文6のように、親しい友人や家族との会話で「授受」を使う人はほとんどおらず、そうした場面では「もらう」「あげる」を使うほうがずっと自然に響きます。
日常会話であえて「授受」を使うと、かえってよそよそしく他人行儀な印象を与えてしまうことがあります。
「授受する」と「授受が行われる」はどちらも同じ出来事を指せますが、前者は渡す人・受け取る人という行為者を意識した言い方であるのに対し、後者は行為者をぼかして出来事そのものを客観的に伝えたいときに選ばれる言い方だという違いがあります。
文書の目的に応じて、この二つの形を使い分けられるようになると、「授受」という言葉をより自在に扱えるようになるでしょう。
「授受」と「やり取り」「受け渡し」との違い
「授受」と意味が近い言葉に、「やり取り」や「受け渡し」があります。
似ているようでいて、この三つの言葉を比べてみると、使われる場面や硬さ、対象となる物の範囲にまではっきりとした違いがあることが見えてきます。
「やり取り」は口語的な言葉で、物だけでなく言葉や気持ちのやり取りにも使える幅広い表現です。
「メールのやり取り」「意見のやり取り」のように、会話や情報のキャッチボールを指す場合にも自然に使われます。
「受け渡し」は、目に見える物理的な物を直接手渡す場面に限定されやすい言葉です。
「鍵の受け渡し」「荷物の受け渡し」「バトンの受け渡し」のように、スポーツの現場から日常のちょっとした場面まで、具体的な物の移動そのものを指すことがほとんどです。
それに対して「授受」は、両者と比べてより硬く、公式な場面で使われる言葉です。
書類や式典など、あらたまった場面でこそ選ばれる言い回しだと言えるでしょう。
日常会話では「やり取り」、物の受け渡しの場面では「受け渡し」、あらたまった文書や式典では「授受」と覚えておくと、自然に使い分けられるようになります。
たとえば契約書を交換する場面でも、雑談として話すときは「書類のやり取り」、実際に手渡す動作を指すなら「書類の受け渡し」、正式な記録として残すときは「書類の授受」と表現すると、ニュアンスの違いがはっきり伝わります。
「授受」と「贈与」「受領」など一方向の言葉との違い
「授受」の性質は、方向性を持つ言葉と比べてみると、より鮮明に浮かび上がってきます。
似たような場面で使われがちな「贈与」や「受領」は、法律や税金の話にもよく登場しますが、どちらも片方向の動きだけを切り取って表す言葉です。
「贈与」は、与える側の行為だけを表す言葉です。
「贈与契約」「生前贈与」「贈与税」のように、財産や物を無償で相手に渡す場面で使われ、受け取る側の事情には触れません。
「受領」は反対に、受け取る側の行為だけを表す言葉です。
「受領書」「受領確認」「商品受領」のように、物やお金を確かに受け取ったという事実だけを、受け取った側の視点から、日付や品目とともに示す場面で使われます。
「授受」はこれらと違い、渡す側と受け取る側の両方の動きを一つにまとめて表せる点が最大の特徴です。
たとえばAさんがBさんにお金を渡した場面を考えると、Aさん側から見れば「贈与」、Bさん側から見れば「受領」というように、どちらも片方の立場しか説明できません。
「授受」を使えば、AさんとBさんのやり取り全体を、立場を問わず一つの言葉でまとめて表現できます。
契約書や領収書のように、当事者どうしの関係を対等な立場で記録として残したい文書ほど、「贈与」でも「受領」でもなく「授受」という言葉があえて選ばれる傾向にあると、実務の現場では言われています。
ビジネス・法律文書での「授受」の使い方
「授受」はビジネス文書や法律文書で特によく使われる硬い言葉です。
書類のタイトルやメールの文面、契約書の条文、さらには不動産取引の現場まで、さまざまな場面で目にする機会があります。
代表的な例が「授受確認書」や「物品授受書」といった書類名です。
金銭や物品を確かに渡し、確かに受け取ったという事実を、渡す側と受け取る側の双方が確認し、日付や署名、記名や押印とともに残しておくための書類です。
ビジネスメールでは、「本日、資料の授受をいたしましたことをご報告いたします」のような形で使われることがあります。
取引先や社外の相手に対して使うと、やや硬い言い回しではありますが、その分きちんとした印象を与えられる表現です。
契約書や覚書では、「甲乙間における金銭の授受は、次の方法によるものとする」といった形で、授受の方法や時期まで具体的に定める定型表現もよく見られます。
こうした条文は、いつ・誰が・何を渡し、誰が受け取ったのかを、後から見てもあいまいさなく示すために使われています。
こうした文書で「贈与」でも「受領」でもなく「授受」という言葉が選ばれるのは、渡した事実と受け取った事実を同時に、かつ客観的な形で記録できるからだと考えられます。
口約束だけでは残らない「言った言わない」のトラブルを未然に防ぐうえでも、法務や経理の現場で重宝されている言葉だと言われています。
「授受」を使う際の注意点
「授受」は便利で使い勝手のよい言葉ですが、実際に使うときには少し注意しておきたいポイントがいくつかあります。
読み方や意味を知っているだけでなく、誰と誰の間で使われる言葉なのか、場面に合っているかどうかも意識してみましょう。
まず、カジュアルな日常会話で使うと、必要以上に堅すぎる印象を与えてしまいます。
友人同士でお菓子を分け合ったり、ちょっとした物を貸し借りしたりする場面なら、「授受」より「やり取り」や「受け渡し」の方がずっと自然に聞こえます。
次に気をつけたいのが、一方向だけの行為に「授受」を使ってしまう誤用です。
プレゼントを一方的に贈っただけの場面や、荷物を一方的に受け取っただけの場面は、「授受」という言葉がぴったり当てはまる状況ではありません。
「授受」は渡す側と受け取る側の動きが両方そろってはじめて成り立つ言葉なので、片方だけの動作には使えません。
一方的に物をあげただけの場面では「贈与」や「進呈」、一方的に受け取っただけの場面では「受領」といった言葉の方が適切です。
また「授受」は話し言葉としてはあまり使われず、書類や文章、あらたまったスピーチなど書き言葉的な場面で使われる傾向が強い言葉です。
ふだんの会話の中で多用すると、少し浮いた印象を与えることもあるので、相手や場面を選んで使うと安心です。
「授受」の意味と使い方のまとめ
- 「授受」は「じゅじゅ」と読み、物やお金などを渡すことと受け取ることを同時に表す言葉です。
- 「やり取り」より硬く、「受け渡し」より意味の範囲が広い、公式な場面向けの言葉です。
- 「贈与」「受領」のような一方向の言葉と違い、両方向の動きをまとめて表せます。
- ビジネス文書や法律文書で使われることが多く、日常会話ではやや硬い印象になります。
ここまで、「授受」という言葉についてさまざまな角度から見てきました。
読み方は「じゅじゅ」で、渡すことと受け取ることをワンセットで表す言葉だと、まずはおさえておけば安心です。
似た言葉との違いを整理すると、「授受」は「やり取り」よりもかしこまった場面向きで、「受け渡し」より意味の範囲が広く、「贈与」「受領」のような一方向の言葉とは違って、渡す側と受け取る側の双方向の動きをまとめて表せる言葉でした。
ビジネス文書や法律文書、契約や取引の場面で「授受」が好まれるのも、こうした特徴があってこそです。
実生活では契約書や確認書、ビジネスメールなど、きちんとした記録を残したい場面で活躍してくれる言葉です。
友人同士の気軽なやり取りでは少し硬く聞こえることも意識しつつ、正しい意味と使い方を知っておけば、日常でもビジネスでも、いざというときに自信を持って使いこなせるはずです。