「掛け率」の読み方とは?読み間違いに注意
「掛け率」は「かけりつ」と読むのが正しい読み方で、卸売や仕入れの現場でよく使われるビジネス用語です。
初めてこの言葉を目にすると、普段はあまり使わない読み方だけに戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
漢字の見た目から、うっかり「かけわりつ」と読んでしまう人が少なくありません。
「割」という字は入っていないにもかかわらず、割引や割合といった似た言葉につられて、割り算をイメージしてしまうことが原因のひとつと考えられています。
濁点をつけて「がけりつ」と発音してしまうケースも見られますが、これも正しい読み方ではありません。
「率」という字は「確率」や「効率」と同じように、常に「りつ」と読むと覚えておけば迷わずに済みます。
アパレルや卸売など、BtoBの商談の場ではごく日常的に飛び交う言葉なので、取引先を前にして読み間違えると、業界に不慣れな印象を与えかねません。
特にベテランのバイヤーや仕入れ担当者ほど、この言葉を自然に使いこなしています。
実際の商談では「ろくかけ」「ななかけ」のように「掛け」の部分だけで呼ばれることが多く、正式名称である「かけりつ」を耳にする機会はむしろ少ないかもしれません。
だからこそ、いざ文章で目にしたときに正しく読めるようにしておくと安心です。
「掛け率」の意味をわかりやすく解説
「掛け率」とは、定価に対して実際にいくらで仕入れるかを示す割合のことです。
卸売業にとっては販売価格を決める基準になり、小売業にとっては仕入れコストを決める基準になる、両者をつなぐ共通の物差しのような数字です。
小売店がメーカーや問屋から商品を仕入れる際、定価そのままの金額を支払うことはほとんどありません。
定価より安い金額で仕入れるのが商取引の基本であり、その安さの度合いを表す物差しとなっているのが掛け率という考え方です。
掛け率はパーセントで表されることもあれば、「〇掛け」という独特の言い方で表現されることもあります。
業界に慣れていない人にとっては、この「〇掛け」という表現こそが最初のハードルになりがちです。
たとえば「定価の70%で仕入れる」ことを、業界では「7掛け」と呼ぶのが一般的です。
数字が小さいほど仕入れ値が安く、数字が大きいほど仕入れ値が定価に近づくとイメージすれば覚えやすく、たとえば10掛けなら定価そのままという意味になります。
小売店はこの掛け率をもとに仕入れコストを把握し、そこにどれだけの利益を上乗せして販売するかという価格戦略を組み立てていきます。
卸売業と小売業がやり取りをする商談の場面では、この掛け率が条件交渉の中心となり、双方の利益を左右する重要な要素になります。
「掛け率」の計算方法と計算式
掛け率は「仕入れ価格 ÷ 定価 × 10」という式で求めることができ、この式で出てきた数字がそのまま「〇掛け」の「〇」にあたります。
数式だけを見ると難しく感じますが、実際に電卓を使って数字を当てはめてみると、仕組みは意外とシンプルであることがわかります。
仕入れ価格600円 ÷ 定価1000円 × 10 = 6(6掛け)
たとえば定価1000円の商品を600円で仕入れた場合、600÷1000×10という計算式に当てはめると「6掛け」という答えが導き出せます。
電卓があれば数秒で計算できるシンプルな式なので、暗算が苦手な人でも身構える必要はありません。
「6掛け」とは、定価の60%の金額で仕入れているという意味であり、数字が小さくなるほど仕入れ値は安くなります。
逆に「9掛け」であれば定価の90%と、ほぼ定価に近い金額で仕入れていることになります。
反対に、定価と掛け率さえわかっていれば、仕入れ価格を逆算することも簡単にできます。
計算式は先ほどとは逆に、定価に掛け率をパーセントに変換した数字を掛け算するだけなので、電卓があれば誰でもすぐに計算できます。
定価10000円の商品を7掛けで仕入れる場合は、10000円に70%をかけて7000円が仕入れ価格と計算できます。
逆算の考え方を知っておくと、見積書の数字が正しいかどうかを自分で検算できるので便利です。
「掛け率」が使われる業界・ビジネスシーン
「掛け率」は数ある業界用語の中でも、特にアパレル業界で日常的に使われる言葉です。
洋服やバッグ、雑貨などを扱うアパレル業界の卸売では、商談の中で欠かせない言葉として定着しています。
もちろんアパレルに限った言葉ではなく、雑貨や食品、日用品、インテリア用品など、幅広い業種のBtoB取引で同じ考え方が使われています。
問屋やメーカーが小売店に商品を卸すビジネスモデルであれば、業種を問わず登場しやすい言葉だと言えるでしょう。
展示会場やショールームでの商談でも、バイヤーが「掛けはいくつになりますか」と尋ねる場面がよく見られます。
掛け率は、細かい価格交渉に入る前段階で、取引条件の大枠を端的に伝えるための共通言語として機能しているのです。
特に新規の取引を始める際には、掛け率の条件をどう提示するかが商談成立を左右する重要なポイントになります。
初回の商談でいきなり数字を切り出すのではなく、雑談の延長のように条件を確認し合う場面も少なくありません。
このように掛け率は、特定の業界だけの専門用語ではなく、商品を右から左へ流通させるあらゆるビジネスの現場で使われている実務的な言葉なのです。
仕入れや卸売に関わる仕事を目指すなら、早いうちに慣れておいて損はない表現と言えるでしょう。
「掛け率」の相場はどれくらい?業界別の目安
アパレル業界における掛け率の相場は、一般的に6〜7掛け程度と言われており、これより極端に低い場合は交渉の余地がある可能性も考えられます。
つまり定価の60〜70%程度で仕入れるのが、ごく標準的な取引条件ということになります。
ただしこれはあくまで目安であり、実際の掛け率は業種や商品カテゴリ、さらには発注のロット数やブランドとの信頼関係の深さ、取引開始からの年数によっても変わってきます。
日用品のように回転率が高く安定して売れる商品は、掛け率がやや高めに設定される傾向があると言われています。
反対に、季節性が強く売れ残りのリスクが大きいアパレル商品ほど、シーズンオフに一気に値崩れするリスクを織り込んで、掛け率が低めに交渉されやすい傾向があります。
掛け率が低いほど小売店の取り分は大きくなりますが、その分まとまった発注量や独占的な取引条件を求められることも少なくありません。
いわば安さと引き換えに、何らかの制約を受け入れる必要があるということです。
反対に掛け率が高い場合は、小売店側の利益は薄くなりやすいものの、少ない発注量でも取引に応じてもらいやすいという側面があります。
相場の数字だけでなく、その背景にある条件まで含めて判断することが大切です。
「掛け率」と原価率・粗利率との違い
掛け率と原価率は似ているようで、実は「何を基準にした割合なのか」という視点がまったく異なります。
どちらも仕入れに関するパーセントの話なので、混同してしまう方が少なくありません。
掛け率はメーカーや問屋が定めた「定価」を基準にした、いわば仕入れ側から見た割合を表す言葉です。
一方の原価率は、実際の販売価格に対して原価がどれくらいの割合を占めるかを示す会計上の指標です。
定価どおりに販売している間は両者はほぼ一致しますが、セールなどで販売価格を下げると、掛け率は変わらなくても原価率だけが上がってしまいます。
掛け率が仕入れ契約上の固定的な数字であるのに対し、原価率は販売のたびに変動しうる数字だと言えます。
粗利率(利益率)は原価率の裏返しにあたる数値で、「売上から原価を引いた利益が売上に占める割合」を示す、経営上とても重要な指標です。
掛け率そのものではないため、両者を同じ意味で使ってしまわないよう注意が必要です。
また「7掛けで仕入れる」ことは「3割引きで仕入れる」こととほぼ同じ意味になりますが、掛け率が支払う側の割合を表すのに対し、割引率は差し引かれる側の割合を表している点が異なるので、混同しないようにしましょう。
「掛け率」の由来・語源
「掛け率」は「掛ける」という言葉に「率」がついて生まれた言葉だと言われています。
定価に対してどのくらいの割合で仕入れるか、あるいはどれくらい値引きするかという発想を、掛け算という誰もが理解できるシンプルな形でそのまま言葉にしたものなのです。
定価にある割合を掛け算するだけで、電卓のない時代でも実際に取引される金額をその場ですぐに求められる点が、商売の現場でとても重宝されたと考えられています。
たとえば定価千円の品物を七掛けで仕入れるなら、千円に0.7を掛けた七百円がそのまま仕入れ値になる、という具合です。
日本の商取引では、そろばんを使って瞬時に金額をはじき出す文化が古くから根付いていました。
そろばん文化を象徴する言い回しとして、今も現場で使われているのが「三掛け」「七掛け」という呼び方です。
そろばんの珠をはじきながら定価に率を掛けて値決めをしていた商習慣から生まれた表現だと言われています。
「割引率」ではなく「掛け率」という言葉がずっと好まれてきたのには、それなりの理由があると言われています。
値引き後の金額そのものを、暗算や筆算に頼らず一度の掛け算でそのまま求められるという、そろばん商売ならではの実用性があったためだと考えられています。
このように「掛け率」という言葉ひとつには、そろばんの時代から続く商取引の知恵が今も息づいていると言えるでしょう。
「掛け率」を使った例文集
- 【例文1】今回はまとまったロットでご注文いただけるので掛け率を六掛けにできますよ
- 【例文2】御見積書には掛け率七掛けにて記載しておりますのでご確認ください
- 【例文3】掛け率がもう少し下がれば来月からの発注量をさらに増やせるのですが
- 【例文4】新規のお取引先様には掛け率八掛けからのご案内となります
- 【例文5】長年のお付き合いですので今回は掛け率を五掛けまで下げさせていただきます
- 【例文6】この商品は掛け率が低めなので利益を確保しやすい仕入れ先です
このように「掛け率」は、取引先との会話や見積書のやり取りの中で、数字とセットにして使われることがほとんどです。
口頭でもメールでも、率の数字さえ正しく伝われば、細かい説明をしなくても取引条件がすぐに共有できるという利点があります。
「六掛け」「七掛け」のように率を具体的な数字で示すことで、価格交渉の内容が誰にでも誤解なく伝わりやすくなります。
あいまいな言葉で伝えるより、数字を挟んだほうがずっとスムーズに話が進むのです。
商談メールでは「掛け率○掛けにて」という定型表現がよく使われるため、あらかじめ覚えておくとビジネスの現場でスムーズにやり取りできるでしょう。
初めて聞く相手でも、この言い回しさえ知っていれば戸惑うことなく話を合わせられます。
「掛け率」を交渉する際に押さえておきたいポイント
掛け率の交渉では、提示された率の数字だけに気を取られないことが大切です。
送料や梱包費、振込手数料が別途かかるのか、最低ロット数や納期の条件はどうなっているのかといった点も、契約前に必ずあわせて確認しましょう。
掛け率が低く見えても、送料や梱包費、手数料が別にかかれば、実質的な仕入れコストはかえって高くなってしまいます。
数字の見た目だけで即決してしまうと、契約後になって思っていたより出費がかさむと気づくことになりかねません。
取引条件全体をきちんと比較したうえで、本当にお得な取引かどうかを見極める必要があるのです。
掛け率はあくまで数ある判断材料のひとつにすぎないと考え、送料や手数料も含めた総額でいくら支払うことになるのかを必ず計算してみましょう。
取引が長く続いている場合や、発注量がまとまって増えてきた場合には、掛け率の見直しを相談してみる価値があります。
仕入れ先にとっても安定した継続発注はありがたいものなので、意外と交渉に応じてもらえることも少なくありません。
「これだけ発注量が増えましたので、掛け率を見直していただけませんか」と、感謝の気持ちを添えて伝えてみるのも、立派な交渉のひとつです。
日頃の取引への感謝を一言添えるだけで、相手の受け止め方もきっと変わってくるはずです。
「掛け率」に関するよくある誤解と注意点
「掛け率が高いほどお得」と思われがちですが、これは仕入れの現場で意外と多いよくある誤解のひとつです。
掛け率は数字が低くなるほど仕入れ値が安くなる仕組みになっているため、有利な条件かどうかは、率の数字が高いか低いかだけでは正しく判断できないのです。
たとえば同じ一万円の商品でも「六掛け」と「八掛け」という二つの掛け率を比べた場合、仕入れる側にとって有利なのは数字が小さい六掛けのほうになります。
数字の大小からくる印象だけで判断せず、実際に計算した金額をきちんと並べて比べる習慣をつけておきましょう。
また、提示された掛け率が消費税込みの金額なのか、それとも送料や振込手数料まで含んだ金額なのかは、取引先によって表記のルールが違うこともあり、うっかり確認し忘れてしまうケースも少なくありません。
思っていたよりも最終的な支払い額が多くなってしまい、後になって取引先や社内とのトラブルの原因になることもあります。
掛け率や適用条件は、口約束のままにせず、必ず契約書や取引条件書などの書面にきちんと明記してもらうようにしましょう。
「言った言わない」のトラブルを未然に防ぐための備えになりますし、担当者が変わった際の引き継ぎもスムーズになります。
「掛け率」のまとめ
- 「掛け率」の読み方は「かけりつ」で、定価に対してどのくらいの割合で仕入れるかを表す言葉です。
- 「定価×掛け率」というシンプルな式で、仕入れ値や卸値をすぐに計算できます。
- 業界や商品によって掛け率の相場は異なるため、あくまで目安として捉えることが大切です。
- 送料や消費税が掛け率に含まれているかどうかも、忘れずに確認しておきましょう。
ここまで「掛け率」の読み方や由来、例文、そして交渉の際のポイントまでをじっくりと一緒に見てきました。
読み方も計算方法も、一度理解してしまえば決して難しいものではなく、とてもシンプルな言葉だとおわかりいただけたのではないでしょうか。
「掛け率」を実務で使いこなすうえで何より大切なのは、率の数字の高い低いだけにとらわれず、送料や条件まで含めた取引全体を見る姿勢です。
相場や条件は業界ごとに異なるので、迷ったときは同業者や取引先に相場感を尋ねてみるのも一つの方法です。
送料や最低ロット、消費税の扱いといった条件もあわせて確認しながら、日々の仕事の中で「掛け率」という言葉を上手に活用していきましょう。
ちょっとした確認を怠らないだけで、取引先とのやり取りはこれまで以上にスムーズで気持ちの良いものになるはずです。