「掛け合わす」の読み方と意味とは
「掛け合わす」は「かけあわす」と読む動詞です。
ふだん見慣れない形に見えるかもしれませんが、国語辞典にきちんと載っている由緒正しい言葉です。
辞書には主に「数量を掛け算する」「動植物を交配させる」「複数のものを組み合わせる」という三つの意味が載っており、国語辞典の多くは掛け算の意味を最初の語義として掲げています。
教科書によっては、掛け算の単元でこの表現が登場することもあります。
対象が数字であっても、生き物であっても、仕事のアイデアであっても、「複数のものを一つに結びつける」という核となるイメージはどの意味でも共通しています。
算数の授業で使われるイメージが強い言葉ですが、実際の生活の中では、仕事のアイデアや趣味の道具、人と人との相性などを組み合わせる場面で耳にすることも少なくありません。
テレビや雑誌でも「異業種を掛け合わせた商品」のような見出しを見かけることがあります。
もともとの中心的な意味は掛け算だったものが、時代とともに交配や比喩の用法へ少しずつ広がっていったと言われています。
日常生活の中で使われる頻度としては、算数の場面よりもアイデアや物事を組み合わせる場面のほうが多いように感じられますが、正式な文書では掛け算の意味で使われることも珍しくありません。
「掛け合わす」と「掛け合わせる」は同じ意味の活用違い
「掛け合わす」と「掛け合わせる」は、どちらも「数量を掛け算する」「交配させる」「組み合わせる」という同じ意味で使える動詞です。
両者の違いは活用の種類だけで、指し示す内容そのものに差はなく、言い換えとして使うこともできます。
「掛け合わす」は五段活用の動詞で、「掛け合わさない」「掛け合わします」「掛け合わそう」のように変化します。
「掛け合わせる」は下一段活用の動詞で、「掛け合わせない」「掛け合わせます」のように変化する点が異なります。
語尾の活用の形が違うだけで意味そのものに差はないため、どちらを使っても間違いにはならず、好みや文脈に応じて自由に選べます。
ただし現在の国語辞典や書き言葉では「掛け合わせる」が見出し語として大きく扱われやすく、ビジネス文書やニュース原稿でも「掛け合わせる」が選ばれる傾向があるようです。
「掛け合わす」も誤用ではなく、話し言葉やテンポを重視した文章で自然に選ばれています。
この二つの違いについて、明確な地域差や世代による極端な偏りは特に知られていません。
「掛け合わす」も「掛け合わせる」も、年齢や地域を問わず今もごく普通に使われており、書き言葉と話し言葉のどちらでも通用します。
「掛け合わす」と「掛け合う」を混同しないための違い
「掛け合わす」とよく似た形の言葉に「掛け合う」があり、辞書でも別の項目として立てられています。
見た目はそっくりですが、実はまったく別の意味を持つ動詞なので、置き換えて使うことはできません。
「掛け合う」は主に「交渉する」「談判する」という意味で使われ、値段や納期、待遇の改善などを相手に求める場面でよく登場します。
労働組合が会社側と掛け合う、値上げ交渉で取引先と掛け合う、というような使い方が典型的で、「掛け合わす」とは意味も文脈もまったく異なります。
「掛け合わす」には「わ」が入るのに対し、「掛け合う」には「わ」がないという違いに注目すると、瞬時に見分けられるようになります。
見た目や読みのリズムが似ているため、文章を書くときに「掛け合わす」のつもりで「掛け合う」と入力してしまうケースも見られるようです。
検索するときも、この二つを混同して欲しい情報にたどり着けないことがあります。
数字や交配、組み合わせといった話題であれば「掛け合わす」、交渉や要求、駆け引きといった話題であれば「掛け合う」と覚えておくと、文脈から迷わず判断できるようになります。
ニュースなどで使われる場合も、この基準で読み分けることができます。
「掛け合わす」の語源・由来
「掛け合わす」は「掛ける」と「合わす」という、二つの動詞が組み合わさってできた複合動詞です。
一つ一つの動詞が持つ意味を知ると、「掛け合わす」全体のニュアンスが見えてきます。
「掛ける」には「上から重ねる」「作用を及ぼす」「数値を乗じる」など、幅広い意味があります。
橋を掛ける、電話を掛ける、疑いを掛ける、時間を掛けるなど、日常でもさまざまな場面で使われる動詞です。
そこに「一つにする」「ぴったり合わせる」という意味を持つ「合わす」が加わることで、「あるものを別のものに働きかけて一つに結びつける」というニュアンスが生まれたと言われています。
漢字だけを見ても、「掛」と「合」という二つの意味が重なっていることが分かります。
「掛ける」が持つ「作用させる」という力強いイメージと、「合わす」が持つ「一つにする」というイメージが重なり合って、「掛け合わす」独特の意味の広がりを作り出しています。
数の掛け算も、生き物の交配も、アイデアの組み合わせも、この二つの動詞が重なってできたイメージの延長線上にあると考えると理解しやすくなります。
「掛ける」だけでは表せない、双方向の結びつきの強さが「合わす」によって加わっているのです。
数学の場面で「掛け合わす」を使うとき
算数や数学の場面では、「掛け合わす」は二つ以上の数を掛け算するという意味で使われます。
「3と4を掛け合わす」といえば、3×4を計算して12という答え、つまり「積」を求めるという意味になります。
「掛ける」は「3に4を掛ける」のように一方がもう一方に作用するイメージで使われるのに対し、「掛け合わす」は複数の数を対等に組み合わせて一つの答えを導くイメージで使われることが多いようです。
学校のテストや教科書でも、この言い回しを目にすることがあります。
単純な整数の計算だけでなく、確率や割合、倍率など、複数の数値をまとめて計算したい場面でも「掛け合わす」は広く使われています。
たとえば二つの独立した出来事が同時に起こる確率を求めるとき、それぞれの確率を掛け合わせて計算するという使い方をします。
消費税や割引率のように、複数の割合を続けて計算する場面でも使われ、電卓を使うときにも意識しやすい、応用範囲の広い考え方です。
数式の中だけでなく、日常会話でも「時給と時間を掛け合わせれば給料が分かる」のように、身近な計算を説明するときにも使われる表現です。
専門的な数式が苦手な人にとっても、日常のたとえ話として感覚的に理解しやすい言い回しといえます。
動植物の交配で「掛け合わす」を使うとき
生物の世界で「掛け合わす」を使うときは、異なる血統や品種の動植物を交配させて、新しい個体を生み出すという意味になります。
人間が意図的に手を貸して行う交配を指すことが多い表現で、双方の良いところを受け継がせる目的で行われます。
それぞれの持つ優れた性質を受け継がせたいときに、異なる品種同士を掛け合わすという方法がよく用いられます。
犬の世界では、ラブラドール・レトリバーとプードルを掛け合わせて生まれた「ラブラドゥードル」のように、二つの犬種の名前を組み合わせた呼び名が付けられることもあります。
猫や馬など、他の動物でも同じような掛け合わせが行われています。
農作物や園芸の分野でも、米や野菜、果物や花などの新しい品種を生み出すために、異なる品種を掛け合わせる取り組みが日々続けられています。
味の良さと育てやすさを両立させるなど、目的に応じて掛け合わせる相手が選ばれます。
この場面での「掛け合わす」は「交配させる」という言葉とほぼ同じ意味で使われており、専門的な文章では「交配」、親しみやすい文章では「掛け合わす」というように、書き手が使い分けることもできます。
アイデアや技術を「掛け合わす」比喩的な使い方
「掛け合わす」は数学の計算や生き物の交配だけでなく、異なるアイデアや技術を組み合わせる場面でも比喩的に使われます。
例えば「ITと農業の技術を掛け合わす」「伝統工芸と最新デザインを掛け合わす」のように、異分野の知恵を融合させる取り組みを指す言い方をします。
二つ以上の要素をあえて掛け合わすことで、単独では生まれなかった新しい価値を生み出す発想を表す言葉です。
ビジネスやマーケティングの現場でも、「異業種のノウハウを掛け合わす」「既存の発想とサブスクを掛け合わす」のように新しい企画を生み出す文脈でよく登場し、こうした表現は特に新規事業や商品開発のプレスリリースでよく見かけます。
料理の世界でも和と洋の食材を掛け合わすことで新しい味わいが生まれると表現され、単なる「組み合わせ」よりも化学反応的な相乗効果を期待するニュアンスが込められています。
こうした比喩的な使い方は辞書の見出し語としては載っていない場合もありますが、実際のビジネス現場では自然に通じる表現として定着しています。
「掛け合わす」という言葉を使うだけで、異なるものを組み合わせて新しい価値を生もうとする前向きな姿勢が伝わるのも魅力です。
会議やSNSでも「掛け合わせ」という名詞形が、新しい商品名やコラボ企画のキャッチコピーとして使われることがあります。
ただし比喩表現であるため、意味が広がりすぎると本来伝えたい意図がぼやけてしまう点には注意が必要です。
「掛け合わす」を使った例文集
- 【例文1】この式ではxとyを掛け合わす計算が必要です
- 【例文2】甘みが強い品種と病気に強い品種を掛け合わす研究が進んでいます
- 【例文3】デザイン思考とデータ分析を掛け合わすことで新しいサービスが生まれました
- 【例文4】老舗の技術と若手のセンスを掛け合わした商品が話題になっています
- 【例文5】お互いのアイデアを掛け合わせば、もっと面白い企画になりそうだね
- 【例文6】冷蔵庫の残り物を掛け合わして、今夜は新しいレシピに挑戦してみます
例文1は数学の場面で使われる、最も基本的な用法です。
数字や式を扱うときには、この言い方がもっとも自然に響き、学校の授業やテストでもよく登場します。
例文2・4は動植物の交配や異なる強みを組み合わせる場面での使い方を示しており、専門的な響きを持つ言い方です。
「掛け合わす」は掛け合わせる相手によって硬い印象にも柔らかい印象にもなる、幅の広い言葉です。
例文5・6のような会話表現からも分かる通り、「掛け合わす」はかしこまった場面だけでなく、日常のちょっとした発想の場面でも自然に使えます。
友人や家族との軽い会話にも取り入れやすい、親しみのある表現だと言えるでしょう。
「掛け合わす」の類語・言い換え表現
「掛け合わす」と似た言葉に「組み合わせる」がありますが、両者にはニュアンスの違いがあります。
どちらも複数の要素を一つにする点では共通していますが、生まれる結果の質感が異なります。
「組み合わせる」は要素を並べて一つにまとめる意味合いが強く、「掛け合わす」ほど相乗効果や化学変化を連想させない点が異なります。
混同すると意図が正しく伝わらないことがあるため注意しましょう。
「混ぜ合わせる」も似た場面で使われますが、こちらは液体や粉末などを物理的に混ぜる場合に向いた言葉です。
台所での調理シーンなど、日常的な場面でよく登場する、親しみやすい表現だと言えるでしょう。
交配の場面では「交配させる」「交雑させる」も使われ、「交雑」は異なる品種・系統を掛け合わす場合を指す、より学術的な言葉です。
論文や専門書、学術的な解説記事などフォーマルな文章でよく見かける言い回しです。
数式なら「乗じる」、交配なら「交配させる」、比喩表現なら「組み合わせる」というように、文脈に応じて言い換えを選ぶことが大切です。
迷ったときは、相手に伝えたい印象の硬さや柔らかさを基準にすると選びやすくなります。
ビジネス文書で「掛け合わす」を連続して使うと単調に感じられるため、こうした類語で言い換えると文章にリズムが生まれます。
ただし置き換えた結果、意味が微妙にずれてしまわないか確認することも忘れないようにしましょう。
「掛け合わす」の英語表現
「掛け合わす」を英語にするときは、どの意味で使われているかによって選ぶ単語を変える必要があります。
数学の場面では「multiply」を使い、「3と4を掛け合わす」は「multiply 3 by 4」のように表現します。
「times」という単語を使って「3 times 4」と表現することも、日常的な計算の場面ではよくあります。
交配の場面では「cross」や「hybridize」が使われ、「異なる品種を掛け合わす」は「cross two varieties」と訳せます。
アイデアや技術を掛け合わす比喩的な場面では「combine」や「mix」がよく使われ、「異分野の知識を掛け合わす」なら「combine knowledge from different fields」と表現できます。
ネイティブスピーカーも、数式や実験結果を伝えるときと、新商品の企画を説明するときとでは、まったく違う単語を選んでいます。
英語には日本語の「掛け合わす」のように一語で全ての意味をカバーできる動詞がないため、数学・交配・比喩のどの意味かを見極めてから単語を選ぶことがポイントです。
直訳をそのまま探すのではなく、まず意味を分類してから英単語を当てはめると失敗しにくくなります。
翻訳サイトにそのまま入力すると、文脈を無視して不自然な単語が選ばれてしまうこともあるため注意が必要です。
特にビジネスメールなど正式な文章で英訳する際は、意味を正しく汲み取った上で単語を選ぶ姿勢が求められます。
「掛け合わす」のまとめ
- 「掛け合わす」は「掛け合わせる」と同じ意味を持つ活用違いの表現である。
- 「掛け合う」とは意味が異なり、交渉や意見のやり取りを表す言葉であり、掛け算や交配の意味は持たないため混同しないよう注意する。
- 数学の掛け算、動植物の交配、アイデアや技術の比喩表現という3つの場面で使われる。
- 文脈に応じて類語や英語表現を適切に使い分けることで、より的確で伝わりやすい言い回しができる。
ここまで「掛け合わす」の比喩的な使い方や例文、類語、英語表現について見てきました。
この記事では特に、数学や交配以外の場面での使われ方や、似た言葉との違いに焦点を当てて解説しました。
「掛け合わす」は数学の掛け算、動植物の交配、アイデアや技術の比喩という3つの意味を持つ、幅広い場面で活躍する言葉です。
どの意味で使われているかは、前後の文脈から自然に判断できることがほとんどです。
「掛け合わせる」との同義関係や「掛け合う」との違いを意識しながら、場面に合った意味で使いこなしてみてください。
数学の授業からビジネスの企画会議、日々の何気ない会話まで、「掛け合わす」は意外と身近な言葉なのです。