「掛算」の意味とは
「掛算」とは、同じ数を何度も足し合わせる計算をひとつの式で表す算数の言葉です。
たとえば「3を4回足す」という作業を、「3×4」という式ひとつで表せるのが掛算の便利なところです。
掛算の式は「被乗数×乗数=積」という3つの要素で成り立っています。
掛けられる側の数を被乗数、掛ける側の数を乗数と呼び、その結果として出てくる答えを積と呼びます。
掛算は、足し算・引き算・割り算と並んで、算数の土台となる四則演算のひとつに数えられています。
たとえば「1袋に3個入ったお菓子が4袋ある」という場面のように、同じ数のまとまりが複数あるときに掛算の考え方を使うと、全体の数をすばやく求めることができます。
足し合わせる数が増えるほど、ひとつずつ足していく方法では時間がかかってしまうため、掛算はまとまった数を効率よく計算したいときに特に力を発揮します。
「2の3倍」のように「◯倍」という言葉も掛算と同じ意味で使われており、日常会話では倍という言い方のほうが馴染み深いこともあります。
「掛算」の読み方
「掛算」は「かけざん」と読みます。
算数で習うとおり、「掛算」の正しい読み方は「かけざん」ひとつだけです。
この読み方をよく見ると、「掛」は訓読みの「かけ」、「算」は音読みの「さん」が組み合わさっています。
前の漢字を訓読み、後ろの漢字を音読みで読むこの型は「湯桶読み」と呼ばれています。
本来「さん」と読む「算」が「ざん」に濁るのは、言葉がつながるときに音が濁る「連濁」というルールのためです。
「掛算」は特別な当て字や熟字訓を使わない言葉なので、漢字を見ればそのまま「かけざん」と読める、読み間違いの起こりにくい言葉です。
小学校低学年向けの教材では、まだ漢字を習っていない子どもにもわかるように、ひらがなで「かけざん」と表記されることもあります。
九九を覚えるときは「にさんがろく」のように独特のリズムで声に出して暗唱するため、読み方そのものが記憶の助けになっています。
「掛算」と「掛け算」の表記の違い
「掛算」と「掛け算」は、どちらも同じ「かけざん」を指す表記のゆれです。
違いは送り仮名の「け」を入れるかどうかだけで、意味そのものに違いはありません。
学校の教科書や算数のドリルでは、送り仮名を入れた「掛け算」という表記が広く使われています。
新聞や一般向けの文章でも、読みやすさを重視して送り仮名を残す「掛け算」が使われる傾向にあります。
一方でニュースの見出しや数式まわりの表記では、字数を詰めやすい「掛算」が使われることもあります。
公的な文書やビジネスの文章では、どちらの表記を選んでもマナー違反にはなりませんが、ひとつの文章の中で表記をそろえておくと読み手に丁寧な印象を与えられます。
手書きのメモや会話の中では送り仮名の有無を意識する場面が少ないため、「掛算」「掛け算」のどちらを使っても違和感なく伝わります。
パソコンやスマートフォンで「かけざん」と入力して変換すると、送り仮名付きの「掛け算」が第一候補として表示されることが多いです。
「掛算」と「乗算」の違い
「掛算」と「乗算」は、どちらも同じ計算を指す言葉です。
両者の違いは計算の中身ではなく、使われる場面の硬さにあります。
「乗算」は数学の教科書や学術的な文章、プログラミングの世界でよく使われる、ややかたい言い方です。
コンピューターの分野でも「乗算命令」「乗算回路」のように、専門用語として組み込まれることが多くあります。
一方「掛算」は、小学校の算数教育や日常会話で使われる、親しみやすくやわらかい言い方です。
中学校以降の数学では「掛算」よりも「乗法」「乗算」という言葉が教科書に登場するようになり、学年が上がるにつれて呼び方も少しずつあらたまっていきます。
プログラミングの世界では掛算を表す記号として「×」ではなく「*」(アスタリスク)を使うのが一般的で、日常の掛算とは少し違うルールで書かれています。
同じように「割り算」と「除算」の関係にも、算数寄りのやわらかい言葉と数学・情報分野で使われるかたい言葉という同じ対応関係が見られます。
「掛算」の由来・語源
「掛算」という呼び名は、動詞「掛ける」の意味と関わっていると言われています。
「掛ける」には物事を重ね、作用させるという意味があり、これが名前の由来になったと考えられています。
日本では古くから、そろばんや算木を使って掛算を含む計算が行われてきました。
そうした計算文化の中で、九九をはじめ掛算の手順が整えられていったとされています。
記号「×」は17世紀のイギリスの数学者オートレッドが著書で用いたのが広まりの始まりだと言われています。
掛算の答えを覚えるための「九九」は、もともと中国で生まれ、奈良時代から平安時代ごろに日本へ伝わったと言われています。
「×」の記号は世界共通というわけではなく、国や分野によっては掛算を「・」(ドット)で表すこともあります。
「九九」という呼び方は、古い時代には9の段から順に唱えていたためにこの名が付いたと言われています。
「掛算」の計算のしくみ
掛算のしくみはシンプルで、被乗数と乗数という二つの数を掛け合わせて積を求めます。
「3×4」であれば、3を4回分積み重ねた「12」が積になる、これが掛算の基本の考え方です。
1から9までの掛算は、あらかじめ答えを暗記できるようにまとめた「九九」という表で覚えます。
九九を覚えておけば、足し算を繰り返さなくても瞬時に答えを導き出せます。
2桁以上の掛算では、位ごとに分けて計算し、結果をずらしながら足し合わせる「筆算」という方法を使います。
10や100を掛けるときは、もとの数の右側に0を必要な数だけ付け足すだけで答えが求められるので、覚えておくと暗算がぐっと楽になります。
大きな数の掛算をおおよそで把握したいときは、位を四捨五入してから掛ける「概算」という考え方も、日常のさまざまな場面で役立ちます。
現在では電卓やコンピューターが瞬時に掛算をしてくれますが、しくみそのものを理解しておくことは、暗算力や計算の見積もり力を養ううえで役立ちます。
「掛算」の計算法則
掛算には、計算の順番や組み合わせ方を工夫することで、暗算をぐっと楽にしてくれる「計算法則」と呼ばれる便利なルールがいくつか存在しています。
算数の教科書だけでなく、日々の暗算やちょっとした工夫にも役立つ、覚えておいて損はない知識です。
その中でも特に大切なのが、交換法則・結合法則・分配法則という3つの基本的な法則で、覚えておくとテストの計算だけでなく暗算のスピードと正確さもぐんと上がります。
交換法則とは「a×b=b×a」のように、たとえば3×4でも4×3でも答えが12になるように、掛ける数の順番を入れ替えても結果が変わらないという法則です。
同じ答えになるからといって、文章題では聞かれている内容に合わせて式の順番を考えることも大切です。
結合法則とは「(a×b)×c=a×(b×c)」のように、2×3×4を計算するとき、先に2×3をしてから4を掛けても、先に3×4をしてから2を掛けても、答えは同じ24になるという法則です。
計算の途中で自分がやりやすいと感じる組み合わせを自由に選べるのは、結合法則のおかげです。
分配法則とは「a×(b+c)=a×b+a×c」のように、掛算と足し算を組み合わせたときの計算方法を表す法則で、たとえば98×5は100×5から2×5を引くと考えると暗算しやすくなります。
買い物の合計金額を工夫して計算したいときにも、この考え方がそのまま使え、レジで素早く暗算するときにも便利です。
「掛算」の使い方
掛算は算数や数学の授業の中で、ある数がいくつ分あるかをまとめて求めたいときに使う、もっとも基本的な計算方法のひとつとして登場します。
個数や金額、量などをひとつずつ足していく代わりに、掛算を使えば一気に答えを出すことができ、小学校で習う「九九」もこの使い方を支える基礎になっていて、九九を覚えるほど計算のスピードも自然と上がっていきます。
一方で掛算は、複数の要素が組み合わさることで効果が何倍にも大きくなる「相乗効果」を表す比喩表現としても、日常会話やビジネスの場面、スポーツの応援など、勢いを表したい場面でよく使われています。
数字を扱わない場面でも、複数の強みや工夫が組み合わさって物事の勢いが増していく様子を表したいときに、掛算という言葉が選ばれることがあります。
堅い文章よりも、会話や広告のキャッチコピーなど、少しやわらかい表現の中で見かけることが多い使い方です。
文章の中では「〜を掛算する」「掛算して〜を求める」という言い回しがよく登場し、「経験を掛算する」「強みを掛算して成果を求める」のように使われます。
こうした言い回しは、数式を知らない人にもニュアンスが伝わりやすいのが特徴です。
数式を使わずに掛算という言葉だけで計算や相乗効果のイメージを相手に伝えられるのは、この言葉ならではの便利なところです。
とくにビジネスシーンやスポーツの実況などでは、数式を出さなくても勢いや相乗効果を語れる表現として重宝されており、聞き手の心に残りやすいのも魅力です。
「掛算」を使った例文
- 【例文1】1皿に3個ずつ乗ったクッキーが5皿あるので、掛算で全部の個数を求めます
- 【例文2】1人あたり2本の鉛筆を配るので、30人分の本数を掛算で計算しました
- 【例文3】りんご1個120円を6個買うといくらになるか、掛算で計算しました
- 【例文4】カレーの分量を2倍にしたいので、材料の重さをすべて掛算して量を出します
- 【例文5】チームの人数と1人あたりの成果を掛算すると、全体の生産性が見えてきます
- 【例文6】経験と工夫を掛算することで、思わぬ相乗効果が生まれました
最初の2つの例文のように、掛算は算数の文章題の中で「同じ数のまとまり」がいくつあるかを求めるときによく登場する計算です。
とくに「1つ分の数×いくつ分」という考え方は、掛算の最も基本的な使い方で、多くの文章題の土台になっています。
買い物や料理の例文のように、日常生活でも金額や分量をまとめて計算したいときに、掛算は自然な形で使われています。
レシートの合計を予想したり、必要な材料をそろえたりするときにも、同じ考え方が役立ち、慣れてくると買い物のスピードもぐんと上がります。
後半の例文のように、掛算はビジネスの場面や人の力を表すときにも「相乗効果」を意味する言葉として使われる、幅の広い表現です。
掛算という言葉ひとつで、数字を並べなくても勢いや広がりを感じさせられるのが、この表現の面白いところです。
日常生活で「掛算」が使われる場面
掛算は学校の教室の中だけでなく、私たちの毎日の暮らしのさまざまな場面でひっそりと活躍している計算方法です。
ふだんは意識していなくても、気づかないうちに掛算のお世話になっていることがたくさんあります。
買い物では商品の単価と個数を掛算して合計金額を出し、料理では人数分に合わせてレシピの分量を掛算で増やしたり減らしたりします。
1個200円のパンを5個買うときも、頭の中で自然と掛算をしているはずで、レジに並ぶ前に暗算しておくと会計もスムーズです。
時間・距離・単位の換算にも掛算は欠かせない存在で、旅行の計画を立てたり運動の記録をつけたりするときに、自然と使っている人も多いはずです。
地図上の縮尺から実際の距離を求めるときや、海外のお金を日本円に換算するときにも、この考え方がそのまま役立ちます。
たとえば時速40キロで2時間走ったときの距離や、1回5分の作業を10回繰り返したときの合計時間なども、掛算を使えばすぐに求められます。
単位をそろえてから掛算することが、正確な答えを出すためのちょっとしたコツで、分と時間のように単位がずれていると答えが大きく変わってしまいます。
アンケートの平均点を計算したり、売上の伸び率から将来の数字を予測したりする統計やデータ分析の場面でも、掛算は欠かせない基本の計算として活躍しています。
こうした細かい掛算の積み重ねが、大きなデータの傾向を読み解く力になり、仕事や勉強のさまざまな場面で役立っています。
「掛算」でよくある間違いと注意点
掛算には、うっかりミスにつながりやすいポイントがいくつかあります。
特につまずきやすいのが、筆算で位をずらし忘れることと、九九の答えをあいまいなまま計算してしまうことです。
2桁以上の筆算では、十の位を掛けた答えを1つ左にずらして書かないと、位がずれて答え全体が狂ってしまいます。
繰り上がりの数を書き忘れたり、最後に足し合わせるのを忘れたりするのも、筆算でよくあるミスのひとつです。
文章題では、何と何を掛け合わせればよいのかを取り違えてしまうことも少なくありません。
単位をそろえずに掛算してしまうのも典型的な間違いで、分と時間、gとkgなどの単位が混ざると答えが大きくずれてしまいます。
0を掛けると答えは必ず0になり、1を掛けても数はまったく変わらないという性質も、あわせて覚えておくと計算ミスを防げます。
こうした間違いに気づいたときは、答えの大きさが常識に合っているかをざっと見積もって確かめる習慣をつけると安心です。
「掛算」とは?まとめ
- 「掛算」の読み方は「かけざん」のひと通りで、ある数を何倍かした値を求める、算数でいちばん最初に習う基本の計算です。
- 「掛け算」という常用漢字表記も同じ意味・同じ読み方で使われており、送り仮名があるかないかだけの違いにすぎません。
- 「乗算」は主に数学やコンピューター、物理学などの分野で使われる、「掛算」よりも少し専門的でかたい言い方です。
- 交換法則・結合法則・分配法則を知っておくと、テストの計算だけでなく、日常のちょっとした暗算の工夫にも役立ちます。
ここまで、「掛算」の意味や読み方、由来から、計算の法則や使い方、例文、日常生活での活用場面まで幅広く見てきました。
読み方は「かけざん」のひと通りだけなので、初めて読む人でも迷うことはほとんどなく、安心して使うことができます。
「掛け算」も「乗算」も、指している計算そのものは「掛算」とまったく同じなので、文章や場面の雰囲気に合わせて自然に使い分けてみてください。
どちらの言葉を選んでも意味はきちんと相手に伝わるので、迷ったときはより自然に感じる方を使えば安心です。
今回紹介した例文や場面を参考にしながら、買い物や料理、仕事など身近なところでぜひ「掛算」という言葉を使ってみてください。
掛算のような小さな計算の積み重ねが、日々の暮らしや仕事をきっと少しスムーズにしてくれるはずなので、ぜひ気軽に意識してみてください。