「書証」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「書証」とは?基本的な意味をわかりやすく解説

「書証」とは、民事訴訟における証拠調べの方法のひとつであり、契約書やメールといった文書に書かれている内容そのものを、裁判所が証拠資料として取り調べていく手続きのことをいいます。

普段のニュースではあまり聞き慣れない言葉ですが、裁判に関わるとすぐに登場してくる基本用語です。

ここで押さえておきたいのは、紙やデータという「モノ」自体ではなく、そこに記された意味や趣旨の部分を、裁判所が事実認定の判断材料にしているという考え方です。

この視点を持っておくと、このあとで説明する取調べ手続きの意味もつかみやすくなります。

代表的な例としては、お金の貸し借りの条件を示す契約書や借用書、代金を支払った事実を示す領収書、取引先との取り決めを記した覚書や念書などが挙げられます。

こうした文書は、当事者の記憶があいまいになってしまった後でも、契約時点の約束の内容を客観的に示してくれる存在です。

最近では紙の書類だけでなく、やり取りの記録がそのまま残るメールやLINEのトーク履歴、SNSのメッセージのスクリーンショットなども書証として提出されることが珍しくなくなりました。

デジタルなやり取りが増えたことで、証拠になりうる文書の範囲は年々大きく広がってきています。

「言った」「言っていない」という水掛け論になりがちな場面であっても、こうした文書や記録さえ手元に残っていれば、裁判官が事実を認定するための強力な手がかりとなってくれるはずです。

特に日付や金額といった具体的な情報が書かれている文書は、記憶よりもずっと確かな証拠として重視されます。

「書証」の読み方と読み間違いに注意すべき点

「書証」の正しい読み方は「しょしょう」で、日常会話ではあまり聞き慣れない、法律の世界に特有の読み方だといえるでしょう。

ふだんの生活で目にする機会は少なく、裁判や契約に関する話題に触れたときに初めて出会う方も多い言葉です。

「書」を音読みで「しょ」、「証」を音読みで「しょう」と読み、この二つの音をそのままつなげた読み方になっていると覚えておくと理解しやすくなります。

このように漢字二字をどちらも音読みで組み合わせる言葉は、法律用語には意外と数多く見られます。

特に注意したいのが、漢字の並び順を入れ替えただけの「証書」という、見た目のよく似た別の言葉との混同です。

普段あまり使わない硬い言葉だからこそ、こうした混同は起こりやすいので気をつけましょう。

「書証」と「証書」は使われている漢字がまったく同じであるうえに読み方も異なるため、文章の中でうっかり取り違えてしまう方や、意味を逆に覚えてしまう方も少なくありません。

似ている言葉だからこそ、どちらの話をしているのか、前後の文脈をよく確認する習慣をつけておくと誤解を避けられます。

ニュースや新聞、法律関連の記事で裁判の様子を目にしたときは、「しょしょう」という読み方をあらためて意識しておくと、文章全体の意味を正確につかみやすくなります。

読み方ひとつで言葉の印象が変わってしまうので、人前で発言したり音読したりする機会があるときは、事前に確認しておくと安心です。

「書証」が使われる場面・分野

「書証」は、貸したお金を返してもらえない、契約内容の解釈をめぐって意見が食い違うといった、主に民事訴訟の手続きの中で使われる法律用語です。

たとえば売買代金の未払いをめぐる訴訟であれば、注文書や請求書が重要な書証として扱われます。

民事裁判では、原告と被告のそれぞれが自分の言い分の正しさを裏付けるために、手元にある契約書やメールなどを書証として裁判所に提出していきます。

当事者本人の言葉よりも、こうした客観的な文書のほうが説得力を持つ場面は少なくありません。

テレビや新聞が裁判の経過を報じる際にも「原告側が新たな書証を提出した」といった形で登場する、比較的なじみのある法律用語のひとつだといえます。

こうした場面では、当事者の記憶や主張以上に、書証の内容が重視される傾向にあります。

一方で刑事訴訟の分野では、同じように文書が証拠として扱われる場合であっても「証拠書類」と呼ばれることが多く、書証という言葉自体はあまり使われていません。

手続きを定めている法律が民事訴訟法と刑事訴訟法とで異なることも、呼び方の違いにつながっています。

行政不服申立てなどの行政手続きにも文書によって立証するという似た考え方はありますが、「書証」という名称が正式な手続き用語として使われるのは、基本的に民事訴訟の場面に限られると考えておくとよいでしょう。

言葉の使われ方から、その話がどの手続きを前提にしているのかを読み取るヒントにもなります。

「書証」の種類(公文書と私文書の違い)

書証は、それを誰が作成したのかという観点から、大きく「公文書」と「私文書」の2種類に分けて考えることができます。

この分類によって、裁判所がその文書をどの程度信用してよいかの出発点が変わってきます。

公文書とは、役所や公務員がその職務の一環として作成した文書のことを指し、戸籍謄本や住民票の写し、不動産の登記事項証明書、印鑑証明書などが代表的な例です。

作成した公務員の氏名や所属する機関が明記されているため、誰が責任を持って作ったのかがはっきりしています。

公文書は、作成した機関や作成の経緯がはっきりしていることから、原則として真正に成立したもの、つまり本物であると法律上推定される点が大きな特徴です。

この推定があるおかげで、公文書を証拠として使う側は、いちいち本物であることを立証する手間が省けます。

これに対して私文書は、個人や会社が作成した文書のことを指し、当事者どうしで交わす契約書や念書、誓約書、個人的な手紙などが当てはまります。

日常のビジネスや暮らしの中でやり取りされる文書の多くは、こちらの私文書に分類されます。

私文書の場合は公文書のような強い推定が働かないため、本人の署名や押印があるかどうかが、その文書が本物かどうかを判断するうえで重要な手がかりになってきます。

逆にいえば、署名や押印のない私文書は、後になって相手から「自分は書いていない」「見た覚えがない」と争われてしまうリスクも抱えています。

「書証」の取調べ手続きと提出方法

書証を裁判で証拠として取り調べてもらうための提出方法には、当事者が自分で動く場合から裁判所の力を借りる場合まで、大きく分けて3つのやり方が用意されています。

どの方法を選ぶかは、証拠となる文書を誰が持っているかによって変わってきます。

最も基本的なのは、証拠となる文書を自分の手元に持っている当事者自身が、コピーを添えてその文書を法廷に直接提出するという方法です。

手元に証拠があるのであれば、まずこの方法を検討するのが一般的な流れになります。

相手方や取引先といった第三者が証拠となる文書を持っている場合には、裁判所に「文書提出命令」を出してもらうという方法が使われます。

自分では入手できない相手方の内部資料や、取引先しか持っていない記録などが、この方法の典型的な対象になります。

これは、文書を持っている側が自分から任意に提出してくれない場合であっても、裁判所の命令によって提出を法的に強制できる、当事者にとって心強い制度です。

命令に従わない場合には不利な扱いを受けることもあるため、実効性の高い手段だといえます。

そのほかにも、官公庁や病院、金融機関といった文書を保管している第三者に対して、必要な文書を裁判所宛てに送ってもらうよう依頼する「文書送付嘱託」という方法が、実務ではよく用いられています。

相手に強制力を及ぼすというより、協力をお願いする形に近い手続きです。

「書証」と「証書」の違い

「書証」と「証書」は使われている漢字の並びが逆になっているだけで、実は意味も読み方もまったく異なる言葉どうしです。

字面が似ているうえに使われる場面もどちらも法律関係であるため、文章を読んでいてもつい混同してしまいがちなので注意が必要です。

「証書」は、契約書や卒業証書、保険証書、借用証書のように、何かの事実を証明するために作られた文書そのものを指す、いわば「モノ」の名前にあたります。

日常生活の中で見聞きする機会も多く、比較的なじみのある言葉だといえるでしょう。

一方の「書証」は、その文書を裁判の証拠として取り調べるという、訴訟上の位置づけや手続きの流れを表す言葉である点が大きく異なります。

同じ漢字を使っているとは思えないほど、法律の世界ではこの二つは明確に役割分担がされています。

つまり証書はあくまで文書という「モノ」そのものの呼び名であり、書証はそのモノを証拠として扱うための「仕組み・手続き」の呼び名だと整理することができます。

名詞としての証書と、手続き上の役割を表す書証とでは、そもそも指しているものの性質が違うのです。

同じ一枚の卒業証書であっても、裁判の中で証拠として提出された瞬間から、その文書は「書証」としての性格もあわせ持つことになるのです。

ひとつの同じ文書であっても、日常生活の中にあるときと裁判で使われるときとで、呼び名が使い分けられている、と考えると整理しやすいかもしれません。

「書証」と人証・物証との違い

裁判で行われる証拠調べには、書証のほかに人証と物証という区分があります。

この三つは、何を根拠にして事実を証明するのか、その方法や信用性の考え方、さらには証拠調べにかかる手間までもが大きく異なります。

人証とは、証人尋問や当事者尋問のように、人が話す内容そのものを証拠とする取調べのことです。

たとえば交通事故の裁判で、目撃者が法廷でその場の様子を証言したり、当事者本人が事故の状況を尋ねられて答えたりする場合が、人証にあたります。

物証とは、凶器や事故車両のように物の存在や状態を確かめる証拠調べのことで、裁判官が実際に自分の目で見分する手続きは特に検証と呼ばれています。

血の付いた衣類や事故現場に残されたタイヤ痕、写真なども、物証として扱われることがあります。

書証が「紙に書かれた内容」を証拠にするのに対し、人証は「人の記憶に基づく供述」、物証は「物そのものの状態」を証拠にする点で、根本的に性質が異なります。

この違いを理解しておくと、裁判でどの証拠を重視すべきか、そしてどのように証拠を集めていくべきかが見えやすくなります。

人の記憶は時間の経過や思い違いで変わってしまうことがありますが、書証は文書として形に残るため内容が変化しにくいという特徴があります。

だからこそ訴訟実務では、契約書や領収書などの書証をどれだけ確保できているかが、裁判の勝敗を左右することも珍しくありません。

「書証」における成立の真正とは

成立の真正とは、その文書が作成者本人の意思に基づいて作られたことを言います。

作成者以外の誰かが勝手に作った文書、たとえば他人が本人になりすまして書いた契約書などでは、この成立の真正が認められません。

書証の内容がどれほど重要な内容であっても、まず成立の真正が認められなければ、裁判所はその文書の内容を証拠として扱うことができません。

この点は、書証を扱ううえで欠かせない、いわば大前提とも言える重要なポイントです。

私文書に印影がある場合、実務では「二段の推定」という考え方が使われています。

まず、印影が本人の印章と一致していれば、本人の意思で押されたものと事実上推定されます。

その上で、民事訴訟法の規定により、本人の署名や押印があると認められる文書は、契約書であっても念書であっても、特段の事情がない限り、全体として真正に成立したものと法律上推定されるのです。

印影の一致から始まり、文書全体の真正へとつながる、この二段階の推定こそが「二段の推定」と呼ばれる考え方です。

ただし成立の真正が争われた場合には話が変わり、実印を盗まれた、家族などの第三者に無断で押印された、といった具体的な反証が必要になります。

それでも決着がつかないときは、筆跡鑑定や印影の照合といった専門的な方法によって、最終的な判断が下されることもあります。

「書証」の由来・語源

「書証」は「書」と「証」という漢字を組み合わせてできた言葉です。

日常会話ではあまり意識しない組み合わせですが、六法や裁判のニュースに触れると自然と目にするようになる言葉で、一字ずつ分解すると成り立ちがよくわかります。

「書」は文書や書き記されたものを意味し、「証」は証拠や証明を意味する漢字で、法律用語には「証」の字を使う言葉が数多く存在します。

つまり「書証」とは、文字どおり「文書というかたちの証拠」を表すためにつくられた言葉と言われています。

同じように「人」と組み合わせた「人証」、「物」と組み合わせた「物証」も、この「証」の字を軸にした言葉と言われており、証拠の性質を漢字二字で端的に表す発想が共通しています。

この「書証」という言葉自体は、明治時代以降に民事訴訟法という制度が整えられていく中で、証拠調べの一区分を示す専門用語として定着していったと考えられています。

現在の民事訴訟法の条文でも「書証」という言葉がそのまま章や節の見出しに使われており、長い年月を経て法律用語として深く根づいていることがわかります。

似た言葉に「証書」がありますが、こちらは借用証書や卒業証書のように、文書そのものを指す言葉として古くから使われてきました。

一方の「書証」は裁判における証拠調べの種類を指す言葉であり、対象が「文書そのもの」か「証拠調べの手続き」かという違いから、自然と使い分けが生まれていったようです。

「書証」を使った例文

  • 【例文1】原告は契約書を書証として裁判所に提出した
  • 【例文2】被告側の弁護士は、その書証について成立の真正を争う方針を示した
  • 【例文3】取引先とのやり取りは、後日の書証として残せるよう必ずメールで行っている
  • 【例文4】領収書や契約書は、トラブルが起きたときに重要な書証になる
  • 【例文5】裁判所は、原告と被告の双方から提出された書証をもとに事実関係を認定した
  • 【例文6】原本を紛失した場合でも、写しを書証として扱ってもらえることがある

例文からもわかるとおり、「書証」は「〜を書証として提出する」「〜を書証として扱う」という形で、動詞と組み合わせて使われることが多い言葉です。

日常会話で使うことはほとんどなく、裁判や契約、あるいはビジネスの取引トラブルに関する話題で登場する、ややかたい表現と言えます。

ビジネスの場面でも、後々「言った言わない」という水掛け論のトラブルにならないよう、日頃のやり取りを書証として残しておく意識はとても大切です。

口約束だけで済ませてしまうと、いざというときに自分の主張を裏付ける証明の手段がなくなってしまいます。

ニュース記事などでは「書証をもとに」「書証によれば」という表現で、裁判所の事実認定の根拠として登場することもよくあります。

こうした言い回しを知っておくと、裁判関連のニュースや判決の記事の内容が、ぐっと理解しやすくなるはずです。

「書証」のまとめ

まとめ
  • 「書証」は「しょしょう」と読み、文書の内容を証拠として使う証拠調べのことです。
  • 人証・物証とは異なり、紙に書かれた内容そのものが証拠として扱われます。
  • 私文書では、印影をめぐる「二段の推定」によって成立の真正が判断されることがあります。
  • 「証書」は文書そのものを指す言葉であり、証拠調べの一種を意味する「書証」とは使い方が異なります。

ここまで、「書証」の読み方はしょしょうであり、それ以外の読み方はしないということを、あらためて確認してきました。

読み間違いやすい言葉ではありませんが、日常生活で目にする機会が少なく、いざ声に出そうとすると一瞬迷ってしまう人もいるかもしれません。

「書証」は単なる紙の書類ではなく、裁判所が公平に事実を認定するための大切な手がかりとして扱われる、重みのある証拠なのです。

人証や物証といった他の証拠と組み合わせて使われることで、裁判における事実認定は、よりいっそう確かなものになっていきます。

人証・物証との違いや成立の真正の考え方、そして「証書」との使い分けというポイントを押さえておけば、「書証」という言葉の意味を、より深く、そして正確に理解できるはずです。

日常生活であまり使う機会のない言葉だからこそ、いざというときのために、意味と読み方をあわせて覚えておきたい表現と言えるでしょう。