「生じた」の読み方は「しょうじた」で正しい理由
「生じた」は「しょうじた」と読みます。
この読みは、漢字「生」の音読み「ショウ」に動詞をつくる「じる」が結びついてできた、サ変動詞由来の言葉だからです。
国語辞典でも見出し語は「しょうじる」で載っており、「生じた」はその過去形にあたります。
「生」という漢字には、「なま」「い(きる)」「は(える)」といった訓読みもたくさんあります。
そのため初めて文章で見たとき、つい訓読みで読んでしまう方も少なくありません。
ですが「生じる」はもともと漢語の動詞であり、訓読みでは読まない言葉です。
同じ音読みでも「セイ」ではなく「ショウ」と読む点に注意してください。
もうひとつ気をつけたいのが、送り仮名を省いてしまう誤記です。
「生た」のように送り仮名を落とすと誤りになるため、必ず「生じた」と書きます。
音読みの言葉だと意識するだけで、読み間違いはぐっと減らせます。
新聞や辞書でも、読み間違えやすい語にはふりがなが添えられることがあります。
ビジネス文書やメールで使うときも、読み手が迷わないよう意識すると丁寧です。
パソコンやスマートフォンで文字を変換するときも、「しょうじた」と正しく入力すれば迷わず変換できます。
漢字の成り立ちまで深入りしなくても、「しょうじた」という読みの形をそのまま覚えてしまうのが一番の近道です。
見慣れない読み方に思えても、ニュースや新聞記事では意外なほど頻繁に登場する言葉です。
「生じた」の意味とは何か
「生じた」は「結果として新たに起こった」「発生した」という意味を表す言葉です。
誰かが意図して作り出したのではなく、状況の変化のなかで自然に”起こった”というニュアンスを持っています。
たとえば「作る」や「生み出す」のように、人の手で積極的に生み出すイメージとは少し違います。
何もなかったところに、ある状態や現象がぽっと現れる、というイメージを思い浮かべると理解しやすいでしょう。
「生じた」はどちらかというと、気づいたらそうなっていた、という受け身に近い感覚です。
多くの場合、何らかの原因や条件があって、その結果として”生じる”という流れになります。
この言葉は、良い出来事にも悪い出来事にも使える中立的な表現です。
「利益が生じた」のようにプラスの場面でも、「損害が生じた」のようにマイナスの場面でも使えます。
「問題」「差」「影響」「誤差」といった、目に見えにくい抽象的な名詞と結びつきやすいのも特徴です。
良くも悪くも、それまでなかったものが新たに存在し始める場面で使われる言葉です。
反対に、具体的な物がぽんと出現するような場面では、あまり使われません。
抽象的な変化や事態を説明したいときに、まず思い浮かべたい言葉です。
会話のなかで使うと少し堅苦しく聞こえることもありますが、書き言葉としては自然に使える表現です。
使う場面を選ぶからこそ、意味を正しく理解しておくと表現の幅が広がります。
「生じた」はどのように使うのか
「生じた」は「〜が生じた」という形で、主語を伴って使うのが基本です。
主語になりやすいのは「問題」「誤差」「支障」「亀裂」「疑問」など、変化や不具合を表す名詞です。
いずれも人ではなく、事態や現象そのものが主語になる点がポイントです。
主語が抽象的な事柄になりやすいぶん、「誰が生じたのか」と人を主語にする言い方は基本的にしません。
「〜に生じた」ではなく「〜が生じた」と助詞「が」を使う点も、間違えやすいポイントのひとつです。
また「生じた」はやや硬い書き言葉で、日常会話ではあまり使われません。
普段の会話では「問題が起きた」のように、「起きた」に置き換えられることがほとんどです。
原因を示したいときは、「〜によって生じた」「〜のため生じた」という形がよく使われます。
この「〜によって」「〜のため」という前置きが、原因と結果をはっきり結びつけてくれます。
また「生じた」は自動詞ですが、「生じさせた」にすると他動詞のような使い方になります。
「トラブルを生じさせた」のように、原因を作った側を主語にしたいときに使い分けます。
話し言葉に近いメールでも、内容が改まった話題のときは「生じた」を選ぶと文章が引き締まります。
資料や報告書の結論部分でも、課題や結果をまとめて伝える言葉として重宝します。
文章の締めくくりとして使われることが多く、話の要点を整理する働きも持っています。
「生じた」を使った例文集
- 【例文1】業務委託契約の履行に関して、双方に損害が生じた場合は速やかに協議する
- 【例文2】制度の変更により、現場の運用に影響が生じた
- 【例文3】二つのデータの間に、わずかな誤差が生じた
- 【例文4】丁寧に説明を受けたはずなのに、かえって疑問が生じた
- 【例文5】長引く在宅勤務がたたって、体調に変化が生じた
- 【例文6】新しい利用規約への移行で、一部の会員に混乱が生じた
契約書や規約のような公式な文書では、「双方に損害が生じた場合」のように条件と結びつけて使われることが多いです。
あらかじめ起こりうる事態を想定し、責任の所在やその後の対応をはっきりさせておくための、大切な役割を担っています。
ニュースや報道の文章では、事実関係を客観的に伝えたい制度変更や事故の影響を説明する際に「生じた」がよく選ばれます。
淡々とした事実を伝える文体と相性がよく、感情をあまり交えずに状況や経緯を説明できるところが重宝されています。
「疑問が生じた」「不安が生じた」のように心の動きを表すときにも使え、硬さの度合いは文脈によって変わります。
「生じた」と「発生した」「起きた」はどう違うのか
「発生した」は「生じた」とよく似た意味を持ちますが、より客観的で専門的な響きがあります。
事故や災害、感染症のニュースなど、統計的・専門的な文脈では「発生した」が選ばれやすい傾向があります。
一方「生じた」は、専門的な硬さよりも、事態の変化そのものに焦点を当てた表現だといえます。
どちらも文章としては間違いではないため、使い分けに正解はひとつではありません。
「起きた」「起こった」は、日常会話でよく使われる口語的な言葉です。
「事故が起きた」「トラブルが起こった」のように、身近な出来事を説明するときにしっくりきます。
「生じた」を同じ場面で使うと、少し硬すぎる印象を与えることがあります。
ニュース原稿のように客観性を重んじる場面では「発生した」を、日常の説明では「起きた」を選ぶと自然です。
また「現れた」は、見えなかったものが目に見える形になった、という変化の”見え方”に重点があります。
「症状が現れた」とは言えても、「症状が生じた」に比べると出現そのものを強調するニュアンスになります。
「生じた」はその中間にあって、書き言葉としての硬さと、事態の変化を表す柔らかさをあわせ持っています。
友人との雑談で「差異が生じたね」と言うと不自然で、「差が出たね」の方が自然に聞こえます。
どの言葉を選ぶかによって、文章全体の印象が硬くも柔らかくもなります。
「生じた」の反対にあたる言葉は何か
「生じた」は何かが新たに起こったことを表すため、反対の意味は事態が終わる表現になります。
代表的なのは「解消した」「なくなった」「消えた」といった、問題や現象が収まったことを示す言葉です。
「誤差が生じた」の反対は、「誤差が解消した」「誤差がなくなった」のように表現できます。
これは「生じる」がもともと状態の変化を表す言葉であり、反対の状態を一語で言い切りにくいためです。
また「生じた」の否定形である「生じない」「生じなかった」も、よく使われる形です。
「今回は問題が生じなかった」のように、何も起こらなかったことを伝えたいときに使います。
似た働きをする言葉として「治まった」「収束した」なども、場面によっては反対の意味合いで使われます。
「生じさせない」という言い方は、これから先に問題を起こさないという予防や防止のニュアンスを持ちます。
「トラブルを生じさせないよう対策する」のように、未然に防ぐ意図を表すときに便利です。
ただし「生じた」には、辞書に載るようなはっきりとした対義語は定められていません。
文脈に応じて「解消」「消滅」「未然防止」などの言葉を使い分けるとよいでしょう。
完全な対義語を探すよりも、文脈にあわせて「解消」に近い言葉を選ぶ方が自然な文章になります。
反対語を丸暗記するよりも、場面に応じた言い換えを覚えておくほうが実践的です。
「生じた」という言葉はどこから来たのか
「生」という漢字には、もともと「生まれる」「育つ」「起こる」という意味が込められています。
「生じる」は、その字が持つ「新しく何かが起こる、あるいは生まれる」というイメージを動詞にした言葉で、単なる「起こる」よりも一段階、格式ばった印象を与えます。
「生じた」の語源をたどると、文語のサ変動詞「生ず」に行き着くと言われています。
「生ず」はやがて「生ずる」という形に整えられ、話し言葉では「生じる」という言い方が広まっていきました。
「案ずる→案じる」「命ずる→命じる」のように、漢語由来の動詞が「〜ずる」から「〜じる」へと変化する流れは、日本語の中でたびたび見られる現象だと言われています。
「重んずる→重んじる」「感ずる→感じる」も、同じ流れの一例だと考えられています。
こうした硬さの背景には、漢文を日本語の語順で読み下す「漢文訓読調」の影響があると考えられています。
そのため「生じる」は話し言葉というより書き言葉に近く、ニュースや論文、法律文などでもよく見かける、きちんとした硬さを帯びた動詞だと言えるでしょう。
実際、「生じる」「生じた」には、今も書き言葉らしいきちんとした響きが残っています。
会話では「起きる」が主役になった一方で、「生ずる」という文語の形は、法律文や学術的な文章、あるいは改まったスピーチのなかに今も息づいています。
「生じた」のもとになる「生じる」「生ずる」の関係
「生じる」は上一段活用、「生ずる」は文語のサ行変格活用という、もとになる活用の種類が異なる動詞です。
とはいえ、どちらも根っこは同じ言葉で、時代とともに形が分かれてきたと言われています。
活用の種類が違っても連用形はどちらも「生じ」になるため、過去形は「生じる」からも「生ずる」からも同じ「生じた」という形にそろいます。
そのため、文章に「生じた」とだけ書かれていても、もとが「生じる」なのか「生ずる」なのかを読み分ける必要はありません。
ふだんの会話や、一般的な文章、SNSの投稿などでは「生じる」が中心に使われています。
一方の「生じる」の文語形にあたる「生ずる」は、法律の条文や古い文書、改まったスピーチなどで見かける程度の、やや古風な言い方になっていると言われています。
丁寧な言い方に整えるときの仕組みも共通していて、「生じます」「生じません」という形は「生じる」からも「生ずる」からも同じように導かれます。
つまり、丁寧形や否定形を作るときは「生じる」を基準に考えれば迷わずに済むということです。
国語辞典の多くでは「生じる」が主な見出し語として立てられ、「生ずる」はその文語形として説明される扱いになっていると言われています。
特に「生ずる」を単独の見出しとして大きく扱う辞書は少ないとされています。
「生じた」が契約書やビジネス文書で使われるのはなぜか
契約書や利用規約には、「損害が生じた場合」「不備が生じた際は」といった定型フレーズが数多く登場します。
こうした言い回しは、契約書だけでなく報告書やマニュアルなど、かたい文書全般で目にする機会が多い表現です。
「生じた」は誰が引き起こしたのかに触れず、出来事だけを客観的に述べられる言葉なので、責任の所在をぼかしたい契約文にとても向いています。
「AがBに損害を与えた」ではなく「損害が生じた」と書けば、行為者を名指しせずに事実だけを淡々と示すことができます。
このような硬い言い回しは契約書・規約・報告書などの書面に集中して現れます。
日常会話で「今日、何か生じた?」とはまず言わず、友人同士なら「今日、何かあった?」のように、もっとやわらかい言い方をするのが自然です。
似た意味の「発生した」と比べると、「生じた」の方がより書き言葉らしく、格式ばった響きを持つと言われています。
目安として、事故や数値の話には「発生した」、権利・義務や損害の話には「生じた」が選ばれやすい傾向があります。
たとえば「システムに不具合が生じた場合は、速やかにサポートまでご連絡ください」という一文は、まさにビジネス文書らしい「生じた」の使い方です。
普段の会話にはまず出てこない、書き言葉ならではの表現だと言えるでしょう。
「生じた」を使うときに気をつけたい誤用
「生じた」は、人が意図してする動作ではなく、出来事や状態が自然に起こったことを表す言葉です。
そのため、人を主語にして「彼が生じた」のように使うと、不自然な文になってしまいます。
「彼が問題を生じた」という言い方は誤りで、正しくは「問題が生じた」と、出来事そのものを主語にする必要があります。
同じように「私が誤解を生じた」ではなく、「私に誤解が生じた」あるいは「誤解が生じた」と表現するのが自然です。
人の行為として「引き起こした」ことを言いたい場合は、「不注意がトラブルを生じさせた」のように、「生じさせた」という別の言葉を使うのが正解です。
「生じた」は自動詞、「生じさせた」は他動詞というように、両者は役割がはっきりと分かれているため、この二つを混同しないよう注意が必要です。
丁寧形や否定形に言い換えるときにも、うっかり活用を崩してしまうミスに気をつけたいところです。
「生じた」の丁寧形は「生じました」、否定形は「生じません」「生じませんでした」であり、「生じいました」のような形は誤りです。
読み方の面でも注意が必要で、「生じた」を勢いで「なまじた」と読んでしまうのは誤りです。
正しい読みはあくまで「しょうじた」だけなので、この機会にあわせて確認しておきましょう。
「生じた」の意味・使い方のまとめ
- 「生じた」の読み方は「しょうじた」である。
- 意味は「結果として新たに物事が起こること」を表す。
- 主語になるのは人の行為ではなく、出来事や状態そのものである。
- 「発生した」などの類語と、場面や文体に応じて使い分けるとよい。
「生じた」は「しょうじた」と読み、「結果として、それまでなかった物事が新たに起こる」ことを表す、少し硬めの言葉です。
「発生した」や「起きた」と似た意味を持ちながらも、契約書や報告書などで好まれる、より書き言葉らしい硬さを帯びているのが特徴です。
主語になるのは出来事や状態であって、意図的に何かをする人ではないという原則さえ押さえれば、「生じた」は迷わず使いこなせます。
人の行為として引き起こしたことを言いたいときは「生じさせた」を使う、という自動詞・他動詞の区別もあわせて覚えておくと安心です。
契約書やビジネス文書、規約や報告書など、日常会話にはほとんど出てこない客観的で硬い文章によく登場する言葉なので、例文や言い換えとあわせてニュアンスをつかんでおきましょう。
実際に使うときは、主語が出来事や状態になっているか、そして読みが「しょうじた」になっているかの二点を確認すると安心です。