「用いて」の読み方は「もちいて」で正しい
「用いて」は「もちいて」と読みます。
読み方はこの一つだけで、普段の会話よりも論文やビジネス文書、取扱説明書、研究発表といった改まった文章でよく見かける言葉です。
画数の多い漢字のせいか、「よういて」と誤って読んでしまう方も少なくありませんが、辞書やニュース記事でそのような読みが採用されることはなく、誤読として扱われます。
耳で聞くと「よういて」はやや不自然に響くため、音読みと訓読みの違いを意識しながら、音で覚えてしまうのもおすすめです。
「用」という漢字には、音読みの「ヨウ」と、訓読みの「もちいる」という二つの代表的な読み方があります。
「用いて」はこの訓読みが活用した形にあたり、語幹の「もちい」の部分は「用いる」「用いた」「用いれば」「用いられる」「用いない」など、どの活用形でも変わりません。
そのため「用途」や「費用」、「使用」のようにヨウと読む熟語とは、読み方の系統がまったく異なるので注意が必要です。
送り仮名も「用いる」の形で固定されているため、「用る」と書き誤ることのないようにしましょう。
実は「用いる」は歴史的仮名遣いでは「用ゐる」と書かれており、「ゐ」という仮名が後の仮名遣いの整理によって「い」にまとめられた経緯があります。
「率いる」や「居る」のように、同じく「ゐ」から変化した動詞は他にもいくつか存在し、こうした歴史を知っておくと「もちいて」という読みにもより納得感が持てます。
「用いて」の意味とは―「用いる」の連用形としての働き
「用いて」は、動詞「用いる」の連用形「用い」に、接続助詞の「て」が付いた形です。
「用いる」は上一段活用の動詞なので、「見る」が「見て」になるのと同じ要領で、規則的に活用します。
「用いる」そのものには、「使う」「採用する」という意味があり、辞書でもこの二つの語義が中心に説明されています。
何かの目的のために、数ある候補の中からふさわしいものを選んで使うというニュアンスを含んでいます。
「用いて」は、何らかの手段や方法、道具を使って物事を行うことを表す言葉です。
「朝起きて顔を洗う」のような単純な時間の前後関係を示す「て」とは異なり、「用いて」の「て」は手段・方法を示すことに重点がある、少し特別な使われ方です。
「〜を用いて」という形で、方法や材料、ルール、さらには知識や技術、言葉や表現などを目的語として取ることが多いのも特徴です。
目に見える道具だけでなく、経験や知識といった抽象的な概念まで対象にできる懐の深さが、この言葉の大きな魅力です。
主語には人だけでなく、企業や研究機関といった組織が来ても違和感はありません。
単に「使う」のではなく、複数の選択肢の中からあえてそれを選んだという、意図や判断を伴うニュアンスを持つ点も見逃せないポイントです。
「用いて」と「使って」「利用して」の違いを使い分ける
「使って」は最も口語的で、家族や友人との日常会話やSNSの投稿でも幅広く使われる表現です。
道具から方法まで、対象を選ばず気軽に使えるのが特徴で、年齢を問わず誰にとっても使いやすい表現です。
「用いて」は「使って」に比べて硬く、改まった印象を与える、書き言葉的な表現です。
そのため論文や特許文書、公文書、ビジネス文書といった、きちんとした文体が求められる場面でよく選ばれます。
一方「利用して」は、既にあるものをうまく活かすというニュアンスが強く、「用いて」とは方向性がやや異なります。
「空き時間を利用する」とは言えても「空き時間を用いる」とは言いにくいのは、「利用」には「既存の資源を活かす」という視点が強く働いているためです。
さらに「利用する」には、人や物を自分の都合のよいように使うという、やや否定的な意味合いが生まれる場合もあります。
これに対して「用いる」には、そうしたマイナスのニュアンスはほとんど含まれておらず、安心して使える言葉です。
フォーマルさの目安としては、「使って」が最もくだけた話し言葉で、「利用して」が中間、「用いて」は改まった書き言葉に近いと考えると整理しやすくなります。
ただし厳密な序列があるわけではなく、ニュース番組やスピーチなど、話し言葉の中でも改まった場面では「用いて」がそのまま使われることもあります。
「〜を用いて」の文法パターン・使い方を覚える
「用いて」の基本形は、「名詞+を+用いて」という形です。
英語でいう「by using〜」に近いイメージを持つと、文全体の構造を理解しやすくなります。
この名詞の部分には、手段・方法・道具・材料など、幅広い言葉を入れることができます。
「ハサミで切る」のように助詞「で」一語で済ませる言い方と比べると、「ハサミを用いて切る」はやや回りくどくても丁寧で説明的な響きになります。
「データを用いて」「グラフを用いて」のように、分析や説明の根拠を示す場面でよく使われます。
「この結果を用いて」のように、前の内容を受けて次の話を展開していく、文章をつなぐ接続としても機能します。
後ろには「説明する」「作成する」「証明する」など、具体的な動作を表す動詞が続くのが一般的です。
「用いて」は手段を示す「〜によって」と似た働きを持つ接続表現で、「用いることで」と言い換えてもほぼ同じ意味になりますが、心持ちていねいな響きが加わります。
「新しい技術を用いて開発を進める」のように、目的を表す文の中心としても使われます。
また「この素材は医療機器にも用いられる」のように、「〜に用いる」の形で用途や応用先を示すパターンもあり、「を用いて」と合わせて覚えておくと表現の幅がぐっと広がります。
「用いて」を使った例文で使い方を理解する
- 【例文1】本資料は最新のデータを用いて作成しました
- 【例文2】この実験では新しい手法を用いて検証を行います
- 【例文3】彼は巧みな話術を用いて相手を説得しました
- 【例文4】この道具を用いれば作業時間を短縮できます
- 【例文5】古い資料は今回の調査には用いていません
- 【例文6】当時は木製の型を用いて製品を作っていました
例文1・2のように、ビジネス文書や学術的な文章では、「データ」や「手法」を対象として挙げる形がよく使われます。
もし同じ内容を「データを使って」と言い換えると、論文やレポートとしてはやや軽い印象になってしまいます。
例文5の否定形「用いていません」や、例文6の過去形「用いていました」も違和感なく使える表現です。
過去の資料や経緯、調査の範囲などを説明する際には、こうした活用形が特に役立ち、報告書や議事録の説明部分にもそのまま応用できます。
例文3のように人の行動を表す場合にも使えますが、日常会話ではやや硬く響くため、親しい相手との会話では「使って」に置き換える方が、相手に堅苦しい印象を与えずに自然に聞こえます。
例文4の「用いれば」のような仮定形も、手順書やマニュアルで条件を説明する際によく見られる、実務的に役立つ言い回しです。
「用いて」の由来・語源―元になった動詞「用いる」のルーツ
「用」という漢字の成り立ちには諸説ありますが、祭祀や占いに使う道具をかたどったものだとする説もあり、古くから「はたらかせる」「役立てる」という意味を持っていたと言われています。
仏教や儒教の思想で使われる「体用」という言葉でも、本質を表す「体」に対して「用」は「はたらき」を意味しており、この字の基本的な性格がよく表れています。
「用いる」は、この「用」を動詞化した和語として生まれた言葉で、古い時代の文献にもすでに用例が見られる、歴史の長い基本語彙の一つです。
読み書きの基本となる常用漢字表にも「用」は古くから含まれており、日本語の中核的な漢字の一つに位置づけられています。
中国の古典を日本語の語順で読み下す漢文訓読において、「用」の字に「もちいる」という読みが古くから当てられてきたことも、この言葉が持つ硬い響きに関係していると言われています。
漢文調の訓読文は公的な文書や学術的な文章の原型になったため、そこで使われた語が今も硬い言葉として残っていると考えられます。
「用いる」は平安時代の古典作品にもすでに登場しており、長い歴史を持つ動詞だと言われています。
当時から「人や物を取り立てて使う」という意味で用いられ、優れた人材を登用する場面などでも使われていました。
こうした漢文や古典文学を通じて育まれてきた成り立ちの古さが、「用いて」という言葉に今も残る格式張った響きの背景にあると言われています。
「用いて」はどんな場面で使われる?論文・ビジネス・マニュアルでの用法
「用いて」は話し言葉よりも書き言葉で好まれる表現で、学術論文やビジネス文書、技術マニュアルなど、正確さや客観性が求められる場面で特によく使われます。
日常会話ではやや硬く響くため、話し言葉では「使って」が選ばれる場面でも、書き言葉では「用いて」の方が自然に馴染みます。
硬めで整った印象を与える言葉なので、フォーマルな文章ほど「用いて」が選ばれやすくなります。
学術論文では、研究の手法や分析のツールを説明する際に「アンケート調査を用いて実態を調べた」のように使われ、研究の客観性や再現性を示す役割を果たします。
特に実験や調査の手順を記す部分では、誰が読んでも同じ手順を再現できるよう、何を用いたかを具体的に書くことが求められます。
ビジネス文書や報告書でも、「最新のデータを用いて市場動向を分析しました」のように、根拠とした資料や方法を明示する場面でよく登場します。
「使って」よりも客観的で責任の所在が明確な印象を与えるため、社外向けの資料や上司への報告書で重宝されます。
技術マニュアルや説明書では、「専用の工具を用いて部品を取り外してください」のように手順の中で道具や方法を指定するときに使われますが、読者層が幅広い一般向けマニュアルでは、より平易な「使って」が選ばれることも少なくありません。
「用いて」を使ううえで気をつけたい誤用・注意点
「用いて」は文章を正式に見せてくれる便利な表現ですが、硬い言葉だからこそ、使い方を誤ると意味が伝わりにくくなったり、不自然になったりする点に注意が必要です。
まず注意したいのが主語と目的語の対応ミスで、「用いて」はもともと他動詞「用いる」の連用形なので、何を用いるのかという対象が文中になければ成立しません。
「資料をもとに、工夫して用いて説明する」は何を用いたのかが抜け落ちた誤用で、「最新の資料を用いて説明する」のように対象を明示して初めて意味が通ります。
「用いて」の前には必ず「何を」という対象が置かれているか、書いたあとに読み返して確認する習慣をつけましょう。
硬すぎて不自然になるケースにも気をつけたいところで、友人への手紙で「このペンを用いて書きました」と言うと、かしこまりすぎて距離を感じさせてしまいます。
家族への連絡や親しい同僚とのやり取りなど、くだけた場面では「使って」の方が温かみのある自然な響きになります。
さらに注意したいのが「このデータを用いて使用する」のような二重表現で、「用いる」と「使う」はほぼ同じ意味を持つため、重ねて使うと意味が重複し、くどい印象を与えてしまいます。
マニュアルや報告書でもこの重複は意外と見落とされやすいので、「用いて分析する」か「使用して分析する」のどちらか一方を選ぶよう意識すると引き締まった文章になります。
「用いて」の言い換え表現・類語にはどんなものがあるか
「用いて」には、文章の雰囲気や目的に応じて使い分けられるさまざまな類語があり、同じ内容を書いていても、置き換える言葉ひとつで文章の印象は大きく変わります。
代表的なものが「使用して」で、「用いて」とほぼ同じ意味を持ちながら、より事務的で無機質な響きを持つため、「新しいシステムを使用して管理する」のように、仕様書や手順書で好まれます。
「活用して」は単に使うだけでなく、持っている機能や価値を十分に引き出して使うという前向きなニュアンスが加わる言い換えで、「地域の人材を活用してイベントを企画した」のように、埋もれた力を生かす場面に向いています。
やや古風で格式ばった文章では「もって」という言い方もあり、「誠意をもって対応する」のように手段や方法を強調したいときに使われるほか、巧みに使いこなす様子を表したいときは「技術を駆使して」のような、より躍動感のある表現も選択肢になります。
同じ「手段を示す」表現でも、選ぶ言葉によって文章の硬さや印象は変わります。
論文や契約書なら「用いて」や「もって」、日常的な説明文なら「使って」や「活用して」というように、読み手との距離感に合わせて選ぶと自然な文章になります。
「用いて」を英語で表現するときの対応表現
「用いて」を英語にする場合、もっとも基本的な対応表現は「using」で、動詞のうしろに置いて手段や道具を補足する形でよく使われます。
「このツールを用いて作業を行う」は「work using this tool」のように、動作の後ろに手段を添える形で訳せるほか、「analyze the data using this software(このソフトを用いてデータを分析する)」のように専門的な文脈でも同じ形がそのまま使えます。
文全体の手段を強調したいときは文頭に置く「by using」が適しており、「By using this method, we improved efficiency.(この方法を用いることで、効率が改善しました)」のように、手段がもたらした結果とセットで語るときによく使われます。
日本語の「用いて」は「使う」より硬い響きを持ちますが、英語の「using」自体には強い丁寧さのニュアンスはありません。
フォーマルさを出したい場合は、単語ではなく文全体の構文や語彙を整えて調整する必要があります。
ビジネス英語では「utilizing」や「through the use of」もよく使われるほか、強みを生かすという意味合いを出したいときは「leveraging(〜を活用して)」が好んで使われ、「用いて」と「活用して」の使い分けにちょうど対応します。
「用いて」の使い方・読み方まとめ
- 「用いて」は「もちいて」と読みます。
- 動詞「用いる」の連用形で、手段や方法を示す働きを持ちます。
- 「使って」「利用して」より硬く、論文やビジネス文書など正式な場面で選ばれます。
- 目的語との対応や二重表現に注意し、場面に応じて類語と使い分けることが大切です。
ここまで、「用いて」の読み方や意味、使われる場面、そして注意点や類語、英語表現まで幅広く確認してきました。
「もちいて」という読み方と、動詞「用いる」の連用形として手段や方法を示すという基本さえ押さえておけば、論文からビジネス文書まで、どんな文章でも迷わず使いこなせます。
「使って」や「利用して」との違いを意識しながら、論文やビジネス文書では「用いて」、日常会話では「使って」というように、フォーマル度に応じて選び分けることが自然な文章への近道です。
主語と目的語の対応や、「用いて使用する」のような二重表現になっていないかも、忘れずに見直したいポイントです。
実際に例文を作るときは、何を用いるのかという対象をはっきりさせること、そして硬すぎたり冗長になったりしていないかを声に出して読み返すこと、この2点を最後のチェックポイントにしてください。
迷ったときは、この記事をもう一度読み返してみてくださいね。