「既遂」の読み方と意味
「既遂」という漢字を初めて目にすると、読み方に戸惑う方も少なくありません。
正しい読み方は「きすい」で、見慣れない字面のために誤って読まれてしまうことも多い言葉です。
見慣れない漢字の組み合わせのため、法律の文章を読む機会が少ない方ほど読み方に迷ってしまうことも多いでしょう。
パソコンやスマートフォンで文章を入力するときにも、変換ミスでそのまま確定してしまい、間違った読みを覚えてしまうケースも見られます。
「きすい」という読み方は見た目にも難しそうな印象を与えるため、一度で正確に覚えられないという方も少なくありません。
音読みの基本に忠実に「き」と「すい」をそのままつなげて読む言葉だと意識しておくと、読み間違いを防ぎやすくなります。
基本的な意味は「すでに物事を成し遂げた状態」や「行為を最後までやり終えたこと」を表す言葉です。
目標を達成したときや、計画していたことを実行し終えたときなどに使われる、完了や達成のイメージを持つ言葉だといえます。
ただしこの言葉は、使われる場面によって意味の重みが変わってくる点に注意が必要です。
一般的な「成し遂げた」という意味とは別に、法律用語としては「犯罪が完成した状態」という専門的で限定された意味を持つようになります。
そのため「既遂」という言葉に出会ったときは、一般的な意味ではなく法律用語としての意味で使われていないか、文脈をよく確認することが大切です。
この二つの意味の違いを意識しておくだけで、関連する文章を読むときの理解がぐっとスムーズになります。
「既遂」とはどのような状態を指すのか
法律の記事やニュースの中で「既遂」という言葉を見かけることがあります。
「既遂」とは、ある行為が最後まで実行され、必要な結果がしっかりと発生した状態を指す言葉です。
法律の場面でこの言葉が使われるときは、単に行動を起こしてみたというだけでは足りません。
犯罪として処罰されるためには、それぞれの犯罪で定められた行為や結果が、すべて実現している必要があります。
たとえば物を盗む行為であれば、盗もうとして手を伸ばしただけでは不十分です。
実際にその物を自分の支配下に置いた時点で、ようやく既遂と判断されることになります。
こうした判断の基準は、言葉そのものが持つ意味からも読み取ることができます。
「完了」や「達成」という言葉が持つイメージそのままに、既遂は物事がやり切られた最終段階を表しているのです。
途中で行為をやめてしまった場合や、結果が生じなかった場合には、たとえ強い意志を持って行動したとしても既遂とは呼ばれません。
あくまで最後までやり遂げられたかどうかが、既遂かどうかを見極める一番の基準になります。
ここで注意したいのは、既遂と判断されるかどうかに、本人がどれだけ強い意志を持っていたかという主観的な事情は関係しないという点です。
あくまで客観的に見て、法律が求める結果や行為が現実に発生したかどうかだけが判断材料になります。
この客観性こそが、既遂という概念の大きな特徴だといえるでしょう。
刑法における「既遂」の位置づけ
どの時点から処罰の対象になるのかは、刑法を理解するうえで欠かせない視点です。
刑法の世界では、それぞれの犯罪について定められた構成要件がすべて満たされた時点で「既遂」となります。
構成要件とは、簡単に言えば「この行為とこの結果がそろえば、この犯罪が成立する」と法律で定められた条件のことです。
刑法の各条文は、基本的にこの構成要件がすべて満たされた既遂の状態を前提として書かれています。
条文に「人を殺した者は」「他人の財物を窃取した者は」とだけ書かれているときは、特別な指定がない限り、この既遂の状態を指していると理解してよいでしょう。
こうした条文はいずれも既遂の状態を前提に書かれており、未遂を処罰する場合には、別の条文で「前条の罪の未遂は、罰する」といった形であらためて明記されるのが一般的です。
既遂と未遂を区別する仕組みは、条文の構造そのものにもはっきりと表れているのです。
つまり既遂は、犯罪が処罰されるときの基本の型だと考えることができます。
一方で、既遂の段階まで進んでいなくても処罰される場合があります。
未遂罪や予備罪は、法律に特別な規定がある場合に限って処罰される、既遂よりも手前の段階だという位置づけです。
犯罪の進み方を順番に見ていくと、計画段階の予備、実行に着手した未遂、そして結果が生じた既遂という流れになります。
この段階ごとの区別を知っておくと、刑法に関するニュースもぐっと理解しやすくなるはずです。
「既遂」と「未遂」の違い
刑事事件に関する報道では、「既遂」と「未遂」という言葉がセットで使われることがよくあります。
「未遂」は犯罪の実行に着手したものの、結果が生じなかった状態を指し、結果が発生した「既遂」とは明確に区別されます。
たとえば人を殺害しようとナイフを振るったものの、命を奪うことができなかった場合は殺人未遂です。
実際に命を奪ってしまった場合には、殺人既遂として扱われることになります。
行為者の意図や行為の危険性という点では両者に大きな差がないように見えても、法律上の扱いは大きく異なります。
結果が発生したかどうかという一点が、既遂と未遂を分ける境目になっているのです。
この違いは、実際に科される刑罰の重さにも影響してきます。
多くの犯罪では、未遂罪の刑は既遂罪よりも軽くすることができると法律で定められています。
これは、結果が実際に発生した既遂の方が、被害の大きさや社会への影響がより重大だと考えられているためです。
なお、未遂罪が処罰されるのは、刑法や各種法律に「未遂を罰する」という規定がきちんと置かれている犯罪に限られます。
そうした規定がない犯罪については、実行に着手しただけでは処罰の対象にならず、既遂に至った場合だけが罪に問われる仕組みになっているのです。
同じ犯罪行為であっても、既遂か未遂かによって最終的な量刑の重さが変わってくる点を知っておくとよいでしょう。
「既遂」の成り立ち・由来
「既遂」という言葉の意味は、それぞれの漢字が持つ意味からひも解くことができます。
「既」は「すでに」という意味を持つ漢字で、「遂」は「なしとげる」という意味を持つ漢字です。
この二つの漢字が組み合わさることで、「すでにやり遂げた」という意味の言葉が生まれました。
「遂」という漢字は、道を進むことを意味するしんにょうを含んでおり、進んでいった末にようやくたどり着くという成り立ちから、「やり遂げる」「最後までなしとげる」という意味につながっていったと考えられています。
漢字そのものの成り立ちを知ると、言葉の意味がぐっとイメージしやすくなります。
もともと「既遂」は、物事が完了した状態を表す一般的な言葉として使われていたと言われています。
それが時代を経て、法律の世界でも「犯罪が完成した状態」を表す専門用語として使われるようになったと考えられています。
法律用語として広く使われるようになった背景には、犯罪の進行度を区別する必要性があったようです。
近代的な刑法の制度が整えられていく中で、犯罪の段階を区別する必要が生じ、「既遂」という言葉が法律用語として定着していったと言われています。
未遂や予備といった段階を区別するためには、結果が発生した状態を指す専用の言葉が必要だったのでしょう。
こうした経緯から、「既遂」は今もなお刑法の重要な用語として使われ続けています。
「既遂」の使い方と使われる場面
「既遂」という言葉は単独でも使われますが、特定の言い回しとセットで使われる場面が目立ちます。
「既遂に達する」「既遂となる」といった形で使われることが多く見られます。
「犯行は既遂に達した」「殺人罪が既遂となった」のように、動詞と組み合わせて使われるのが一般的な使い方です。
単独で「既遂だ」と言い切る形もよく見られます。
こうした言い回しは、主に法律の条文や裁判に関する報道、刑事事件を扱うニュース記事の中で使われています。
弁護士や検察官、裁判官といった法律の専門家が書く文章の中でも、よく見られる言葉です。
法学部の授業や司法試験の対策テキストなどでも、「既遂」という言葉は頻繁に登場します。
未遂や予備との違いを正確に理解するための基本用語として、法律を学ぶ人であれば早い段階で覚えておきたい言葉のひとつです。
反対に、普段の生活の中でこの言葉を使う機会はごくわずかです。
日常会話の中で「既遂」という言葉を使う場面は、ほとんどないといってよいでしょう。
友人との会話やSNSの投稿などで「既遂」という言葉を目にすることは稀でしょう。
もしニュースや記事でこの言葉に出会ったときは、事件の内容が最後までやり遂げられてしまったのだと理解しておけば十分です。
犯罪の種類で異なる「既遂」の判断基準
「既遂」と認められるタイミングは、犯罪の種類によって大きく異なります。
例えば殺人罪では、被害者が死亡した時点で初めて既遂が成立します。
殺人罪の既遂は「死亡という結果が発生したかどうか」だけで判断されるのが特徴です。
一方、窃盗罪では被害者の財物に対する占有が加害者側へ移った時点で既遂とされます。
物を盗もうとして手を伸ばした段階ではまだ未遂で、実際に持ち去った瞬間に既遂と判断されるのです。
放火罪や詐欺罪など他の犯罪でも、それぞれ異なる基準で既遂のタイミングが定められています。
詐欺罪であれば、相手をだまして財物やお金をだまし取った時点、つまり財産的な利益が実際に被害者から加害者へ移転した時点で既遂となります。
だまそうとして嘘をついただけでは未遂にとどまり、相手が実際に財物を渡してしまった瞬間に初めて既遂が成立するのです。
傷害罪であれば、暴行などによって実際に相手の身体に傷害という結果が生じた時点で既遂と判断されます。
殴る蹴るといった行為そのものだけでは暴行罪にとどまる場合もあり、結果として傷害が生じたかどうかが既遂か否かを分ける重要な基準になります。
このように同じ「既遂」という言葉でも、犯罪の種類によって成立の中身は大きく異なるのです。
「既遂罪」「既遂犯」など「既遂」を使った関連語
「既遂」という言葉は、他の言葉と組み合わせて使われることが多くあります。
代表的なのが「既遂罪」や「既遂犯」で、どちらも犯罪が完成した状態を指す表現です。
「既遂罪」は犯罪そのものが成立した事実に注目した言い方です。
「既遂犯」は犯罪を完成させた人そのものを指すときに使われる言葉です。
法律の世界には「既遂時期」という概念もあり、これはその犯罪がいつ既遂に達するかを示すものです。
既遂時期は犯罪の種類ごとに細かく決められており、裁判でも重要な判断基準となります。
この既遂時期がいつと判断されるかは、公訴時効の起算点にも関わる重要な問題です。
公訴時効は原則として犯罪行為が終わった時点、つまり既遂に達した時点から数えられるため、既遂時期の判断がそのまま事件の時効の計算にも直結してくるのです。
また「既遂」と対になる言葉として、「未遂犯」や「中止犯」も覚えておきたい関連語です。
未遂犯は犯罪を完成させられなかった人、中止犯は自分の意思で犯罪をやめた人を指し、既遂犯とは扱いが異なります。
ニュース・報道での「既遂」の使われ方
事件報道では、「既遂」と「未遂」が明確に区別されて報じられます。
これは、犯罪が完成したかどうかで事件の性質や処罰の重さが大きく変わるためです。
「殺人未遂事件」と「殺人既遂事件」では、法律上の扱いがまったく異なるのです。
事件が発生した直後の報道では、被害の実態がまだ正確に確認できていない場合も多く、「既遂」か「未遂」かの判断が慎重に行われます。
捜査が進み、結果の発生がはっきりと確認された段階で、ようやく報道でも既遂という表現が使われるようになるのが一般的です。
また判決が確定する前の段階では、起訴された罪名として「既遂」の文字が使われていても、それはあくまで検察による判断であり、裁判で確定した事実ではない点にも注意が必要です。
報道を読む際は、こうした段階ごとの違いを意識しておくとよいでしょう。
ただし、「既遂」という言葉が必ずしも被害の重大さを表しているわけではありません。
例えば窃盗の既遂は、わずかな金額の盗難であっても成立する場合があります。
そのため、ニュースで「既遂」と聞いても、被害の大きさを直接イメージしないよう注意が必要です。
「既遂」は犯罪が完成した事実を示す言葉であり、被害の深刻度を表す言葉ではないと理解しておきましょう。
「既遂」を使った例文
- 【例文1】被告人は窃盗罪の既遂として起訴された
- 【例文2】容疑者は殺人未遂ではなく殺人既遂の疑いで送検された
- 【例文3】今回の事件は既遂に至らず未遂のまま終わった
- 【例文4】財物の占有が加害者に移転した時点で既遂が成立する
- 【例文5】既遂罪として処罰される場合は量刑が重くなる傾向がある
法律文書や判決文では、「既遂」は犯罪が完成した事実を淡々と示す言葉として使われます。
ニュース記事では「既遂」と「未遂」を対比させることで、事件の結末を簡潔に伝える役割を果たしています。
日常の説明文で使う場合も、「結果が実際に起きたかどうか」を表す言葉として活用できます。
これらの例文からもわかるように、「既遂」という言葉は基本的に硬い文脈で使われる表現です。
ビジネスメールや日常的な案内文などで使うと不自然な印象を与えてしまうため、法律や事件に関する説明以外の場面ではあまり用いないほうがよいでしょう。
「既遂」のまとめ
- 「既遂」は「きすい」と読み、犯罪や行為が完全に成し遂げられた状態を指す。
- 刑法では、犯罪の構成要件をすべて満たした時点で既遂と判断される。
- 「未遂」との違いは、結果が実際に発生したかどうかにある。
- ニュースや法律文書、日常の説明文など幅広い場面で使われる言葉である。
「既遂」は「きすい」と読み、犯罪や物事が最後までやり遂げられた状態を表す言葉です。
「未遂」との違いを理解するうえで大切なのは、結果が実際に発生したかどうかという一点です。
ニュース報道から法律文書まで幅広い場面で使われる言葉なので、場面に応じた意味の違いを意識しながら使いこなしていきましょう。