「自己効力感」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「自己効力感」という言葉の意味を解説!

自己効力感とは「自分には目標を達成できる力がある」と感じる心理的確信のことです。この感覚が高いと、未知の課題にも前向きに取り組めるようになり、行動の持続力が向上します。逆に自己効力感が低いと、挑戦前から諦めやすくなり、学習や成長の機会を逃しやすくなります。日常生活においても仕事や勉強、子育てなどあらゆる場面で影響を及ぼすため、現代心理学で特に注目される概念です。

自己効力感は、達成経験・代理経験・言語的説得・生理的情動状態という4要素から形成されるとされています。達成経験とは、過去に成功した体験そのものを指し、最も自己効力感を高めやすい要素です。代理経験は、他者が成功する姿を観察することで「自分にもできそうだ」と感じるプロセスをいいます。言語的説得は、周囲の励ましや肯定的なフィードバックが自信を支える要因です。

生理的情動状態は、心拍数や緊張などの身体反応が穏やかなほど「自分は落ち着いている」と解釈され、自己効力感が強化されると理解されています。これらの要素は互いに影響し合いながら、個人の挑戦意欲やストレス対処の仕方を左右します。したがって、自己効力感は単なる一時的な自信ではなく、過去の経験や周囲との関係を通じて育まれる「持続的な心理資源」と捉えられます。

「自己効力感」の読み方はなんと読む?

「自己効力感」は「じここうりょくかん」と読みます。ひらがなに直すと「じここうりょくかん」で、アクセントは「こう」に軽く置くと自然に発音できます。口頭で使用するときは漢字のままでは伝わりにくいため、ひらがな表記を併せて提示すると親切です。

英語では「self-efficacy」と訳され、アルバート・バンデューラ教授が提唱した概念として知られています。日本語が先に生まれた言葉ではなく、英語の心理学用語を翻訳する形で定着しました。専門家同士の会話では「セルフ・エフィカシー」とカタカナ表記が使われることもあります。

読み方を誤ると専門家との議論で齟齬が生じるため、特に研究論文や研修資料を作成する際は注意が必要です。「効力」を「こうりょく」と読むことで、単なる「能力」ではなく「効果を発揮する力」というニュアンスが伝わる点も覚えておきましょう。漢字表記に苦手意識がある場合は、最初にルビを振るか、括弧書きで読み添えすると誤読を防げます。

「自己効力感」という言葉の使い方や例文を解説!

自己効力感は「〇〇できる自信がある」という文脈で使うと正確に伝わります。具体的には、学習支援やメンタルトレーニングの場面で頻出します。単に「自信」や「やる気」と置き換えると意味が限定的になるため、文脈を付与して使用しましょう。

【例文1】自己効力感の高い学生は難しい課題にも粘り強く取り組む。

【例文2】小さな成功体験を積み重ねることで自己効力感が向上する。

これらの例文で分かるように、自己効力感は行動の質や学習成果と結びつけて語られることが多いです。ビジネス領域では「チーム全体の自己効力感を高める施策」という形で、組織開発のキーワードとしても使われます。言葉の後に「を高める」「が低い」と続けると、状態や課題を明確に表現でき便利です。

また、会議やプレゼンで用いる際には「自己効力感(セルフ・エフィカシー)」と併記し、専門用語であることを示すと聴衆の理解が進みます。反対に日常会話では「やればできる感覚」と言い換えて補足すると、耳馴染みのない相手にもイメージしてもらいやすくなります。状況に合わせて言い換えや注釈を工夫しましょう。

「自己効力感」という言葉の成り立ちや由来について解説

自己効力感の語源は心理学者アルバート・バンデューラが1970年代に提唱した「self-efficacy」理論です。「efficacy」は「効き目」や「効果」という意味を持つ英単語で、「self」が付くことで「自己の効果発揮」というニュアンスになります。日本語訳の際に「自己+効力+感」と3語を組み合わせ、直訳に近い形で導入されました。

訳語の考案にあたっては、日本の心理学者たちが「有能感」や「自己能力感」など複数の候補を検討しましたが、「効果を発揮する力」を強調するため最終的に「自己効力感」が定着したと報告されています。ここには「単なる能力ではなく、能力を行動として発揮できるという確信」を表すという原著の意図が反映されています。

さらに「感」という字を加えたことで、客観的な能力そのものより主観的な感覚・確信を示す言葉である点が強調されました。日本語の「○○感」という接尾辞は「安心感」「達成感」などと同様、個人の情緒的状態を指す際によく使われます。そのため、「自己効力」だけではなく「感」を付与することで、概念の心理的側面が明確になったわけです。

日本語圏では、教育心理学や保健医療領域で急速に認知が広まり、専門書や研修テキストに訳語が定着しました。特に学校教育において「学習自己効力感」という派生語が生まれ、学習動機づけ研究の中心概念として定番化しています。こうした経緯から、「自己効力感」という訳語は原典の意味を保ちつつ、日本特有の語感をまとった表現として浸透しました。

「自己効力感」という言葉の歴史

自己効力感は1977年の学術論文を契機に国際的な注目を集め、その後わずか数十年で多様な分野へ広がりました。バンデューラはオピオイド依存症治療における恐怖条件づけ研究を通じ、成功体験が不安を乗り越える力になることを示しました。この成果が「self-efficacy theory」としてまとめられ、行動変容モデルの核となったのです。

1980年代に入ると、健康心理学の分野で禁煙支援や運動習慣形成の指標として採用されました。同時期、日本でも教育現場で学習意欲向上の鍵として研究が始まり、大学院の研究室を中心に測定尺度の日本語版が作成されました。1990年代には産業・組織心理学にも導入され、メンタルヘルス対策やリーダーシップ開発の研修プログラムが相次いで展開されました。

2000年代以降、脳科学やポジティブ心理学の台頭により「ウェルビーイング」という観点から自己効力感の意義が再評価されました。脳画像研究では、自己効力感の高い人が報酬系を活発に働かせる特徴が確認され、学術的な裏付けが強化されています。現在では世界各国で2万件を超える関連論文が存在し、言語や文化の違いを超えて普遍的に機能する心理メカニズムとして認知されています。

日本国内では、東日本大震災後に被災地のレジリエンス支援の一環として自己効力感を高める介入が行われました。困難な状況においても「自分にできることがある」と感じられることが、心的外傷後成長(PTG)を促す重要な要素だったと報告されています。こうした歴史は、自己効力感が単なる理論ではなく、多くの人々を支える実践的な資源であることを示しています。

「自己効力感」の類語・同義語・言い換え表現

自己効力感の類語には「セルフコンフィデンス(自信)」や「自己肯定感」が挙げられます。ただし完全な同義ではなく、ニュアンスの違いを理解して使い分けることが大切です。セルフコンフィデンスは広義の自信を指し、状況を限定しない包括的な概念です。

一方、自己肯定感は「自分自身の価値を肯定的に受け止められる感覚」を示し、存在そのものへの評価が中心です。自己効力感は「行動を通じて目標を達成できるという確信」に焦点を当てるため、自己肯定感よりも具体的な課題達成に紐づく点が異なります。類似語として「自己調整感」「達成予期」など学術用語もありますが、日常的な言い換えには不向きです。

ビジネスシーンでは「現状を打破できる感覚」「実行自信」などと表現される場合があります。教育現場では「やればできる感覚」「できる見込み」といった平易な日本語が導入されることもあります。状況に応じて、専門性を保ちながら聞き手に合わせて言い換えを工夫するとコミュニケーションが円滑になります。

「自己効力感」を日常生活で活用する方法

自己効力感を高める最も確実な方法は「小さな成功体験を積み重ねる」ことです。例えば、朝早く起きる、10分の散歩を続けるなど、ハードルの低い行動から始めると成功確率が高まり、自己効力感が自然と上がります。目標は「SMART」(具体的・測定可能・達成可能・現実的・期限付き)の原則に沿って設定すると管理しやすくなります。

代理経験を活用するなら、ロールモデルを観察することが有効です。動画や書籍で成功談を学び、「自分にもできそうだ」と感じることで挑戦意欲が湧いてきます。友人や同僚と成果を共有し合うコミュニティに参加すると、互いの成功が刺激となり自己効力感を高め合えます。

言語的説得としては、ポジティブな声掛けが欠かせません。「頑張ればいけるよ」「前より上達しているね」など具体的な行動を認める言葉を意識的に送ると、相手だけでなく自分自身の自己効力感も高まります。セルフトーク(自己対話)で肯定的な言葉を用いることも効果的です。

生理的情動状態を整えるには、適度な運動や十分な睡眠、深呼吸などが推奨されます。身体がリラックスすると脳は「落ち着いて対処できる」と解釈し、自己効力感を後押しします。習慣化のために記録アプリや手帳を活用すると、努力の軌跡が可視化され達成経験として蓄積されやすくなります。

「自己効力感」についてよくある誤解と正しい理解

「自己効力感が高い=根拠のない自信」という誤解は大きな間違いです。自己効力感は成功体験を根拠に形成されるため、現実的な手がかりを伴う点が特徴です。根拠の乏しい楽観主義と混同すると、失敗時の対処が甘くなる恐れがあります。

次に多い誤解は「自己効力感は生まれつき決まる」という考え方です。実際には、人生のあらゆる段階で上げたり下げたりが可能で、学習や環境調整によって変動します。行動療法やコーチングなどの介入研究は、この可塑性を裏付けています。

また「自己効力感は万能で、高ければ失敗しない」という誤認もあります。自己効力感が過剰に高い場合、リスク評価が甘くなり無理な行動計画を立てる可能性があるため、客観的なフィードバックと組み合わせることが重要です。適切なレベルを維持しつつ、失敗から学ぶ姿勢を並行して育むことが望ましいとされています。

最後に、「自己効力感が低い人は意志が弱いだけ」という偏見も誤解の一つです。低い背景には過去の失敗体験や環境要因、精神的ストレスなど複合的な原因が存在します。根性論ではなく、具体的な支援と適切な目標設定がカギとなる点を理解しましょう。

「自己効力感」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 自己効力感は「自分には目標を達成できる力がある」と感じる心理的確信を示す概念。
  • 読み方は「じここうりょくかん」で、英語ではself-efficacyと表記される。
  • 1970年代にバンデューラが提唱し、日本語訳は「自己+効力+感」の組み合わせで定着した。
  • 小さな成功体験を積むことで高まり、行動の持続やストレス対処を支える点に注意する。

自己効力感は行動科学と実生活をつなぐ架け橋のような役割を果たしています。読み方や歴史を理解したうえで、自身や周囲の挑戦を支える指標として活用すれば、学習効果・仕事のパフォーマンス・メンタルヘルスの向上に大きく寄与します。

本記事で紹介した類語や誤解のポイントを押さえ、適切な場面と言葉遣いを選ぶことで、自己効力感はさらに有用なツールとなります。まずは今日から小さな成功体験を記録し、その積み重ねで「できる自分」を少しずつ育ててみてください。