「列伝」の読み方と意味
「列伝」は「れつでん」と読む言葉です。
辞書を確認してもこの読み方しか載っておらず、他の読み方で使われることはありません。
意味としては、一人分の伝記ではなく、複数の人物の生涯や功績をひとまとめにして順番に書き記した書物や記録のことを指します。
よく似た言葉に「伝記」がありますが、こちらは基本的に一人の人物の生涯を丁寧に描くものなので、対象が一人か複数かという点で性質が異なります。
「伝」という漢字一字だけでは一人分の記録というイメージにとどまりますが、そこに「列」が加わることで、何人もの人物が並んでいる様子まで一語で伝わる言葉になっています。
「列伝」という言葉には、単に人物の名前や経歴を並べるだけでなく、それぞれの人物がどのような功績を残し、どのような選択をしながら生きたのかという背景まで含めて記録するというニュアンスが込められています。
そのため「〇〇列伝」とタイトルに掲げられた本を手に取ったときには、単なる年表的な事実の確認だけでなく、人物同士の生き方の違いを味わうような読み方ができます。
一人の物語をじっくり追う伝記とは違い、複数の人物の生涯を続けて読んでいくことで、同じ時代や同じ分野に生きた人々の間にある違いや共通点が自然と見えてくるのも、「列伝」という形式ならではの読み方の楽しさだと言えるでしょう。
読者は一人の視点に縛られることなく、いくつもの人生を見比べながら、その時代や分野の全体像を立体的につかむことができます。
「列伝」の語源・由来にみる漢字の成り立ち
「列伝」は「列」と「伝」という二つの漢字が組み合わさってできた言葉です。
「列」には人やものを順番に並べるという意味があり、「伝」には人の生涯や事績を書き記すという意味があります。
この二つが合わさることで、「複数の人物の生涯を並べて書き記す」という意味が生まれたと言われています。
この言葉の起源は、中国の歴史書『史記』の記述形式にあると言われています。
『史記』は紀伝体という形式で書かれ、帝王の記録である「本紀」と個々の人物の生涯を描く「列伝」とに分かれており、この形式を確立したのは漢の時代の歴史家である司馬遷だと言われています。
司馬遷が確立した紀伝体は、その後に編まれた中国の歴史書にも長く受け継がれ、「列伝」という部立ては帝王以外の人物の記録を整理し、後世に伝えていくための基本的な枠組みとして定着していったとされています。
こうした漢文学や歴史書の伝統は日本にも伝わり、古くから「列伝」という言葉とその記述の形式が、人物の生涯を記録する書物の中で用いられるようになっていきました。
やや硬い響きを持つ言葉として現代まで受け継がれているのも、こうした由緒ある出自と無関係ではないでしょう。
「列伝」が指す内容とその特徴
「列伝」の一番の特徴は、一人ではなく複数の人物をまとめて記す点にあります。
一人分の生涯を描く「伝記」や「評伝」とは違い、何人もの人物の生涯を並べて紹介するのが「列伝」の形式です。
もともとは歴史上の人物を扱う場面で使われることが多い言葉でした。
しかし現代では歴史上の人物に限らず、スポーツ選手や企業家、文化人など幅広い分野の人物紹介にも使われています。
時代や分野、テーマごとに対象となる人物をいくつか選び、順番に生涯や功績を紹介していく構成になっているのが「列伝」に共通する特徴です。
一人あたりの記述量は、一冊をすべて使って一人の生涯を描く伝記ほど長くならないことが多く、それぞれの人物の生涯の要点や代表的な功績を手短にまとめて紹介するスタイルが一般的です。
そのため一冊の中に数人から数十人分の人生がコンパクトに収められていることも珍しくありません。
同じテーマのもとに集められた人物たちを読み比べることで、その時代の空気や分野特有の傾向が自然と浮かび上がってくる点も、「列伝」という形式ならではの魅力だと言えるでしょう。
似た境遇にあった人物たちの選択の違いを見比べることで、一人の伝記からは得られない視点が生まれます。
「列伝」の使い方―どんな場面で使われる言葉か
「列伝」は主に書物や作品のタイトルとして使われることが多い言葉です。
歴史書や文学作品の題名に「〇〇列伝」という形でよく登場します。
テレビ番組や雑誌の企画名としても「名将列伝」「偉人列伝」のように使われることが多い言葉です。
複数の人物を取り上げる企画であることを、タイトル一つで読者や視聴者に伝えられる便利な言葉だからです。
一方で普段の会話の中ではほとんど使われず、文章の中でも特集記事や見出しのような、少し格式のある文体で使われることが多い言葉です。
「〇〇列伝」の〇〇部分には時代名や職業名、分野名などが入ることが多く、タイトルを見るだけでどのような人物たちが取り上げられているのかを、読者や視聴者がある程度想像できるようになっています。
言葉の使い方としては非常に効率のよいタイトルの付け方だと言えます。
近年では書籍や雑誌だけでなく、ウェブメディアの連載記事や動画配信サービスの企画名にも「列伝」という言葉が使われるようになり、活字の世界に限らず、幅広いメディアで見かける言葉へと広がりを見せています。
「列伝」を使った例文
- 【例文1】この本は戦国時代を生きた武将列伝として多くの歴史ファンに読まれている
- 【例文2】雑誌の特集記事では令和を代表する経営者列伝が組まれていた
- 【例文3】彼の活躍ぶりを見た編集者は現代のスポーツ列伝に加えたいと考えた
- 【例文4】祖父の本棚には中国古典を題材にした英雄列伝がずらりと並んでいる
- 【例文5】日常会話で突然列伝という言葉を使うと少し大げさに聞こえることがある
- 【例文6】社内報の新企画として若手社員列伝というコーナーが立ち上がった
例文を見ると分かるように、「列伝」は本の題名や特集記事の見出しとして使われることが多い言葉です。
複数の人物を一つのテーマでまとめて紹介する場面でこそ、自然に使える言葉だと言えます。
一方で例文5のように、日常会話にそのまま使うとやや硬く仰々しい印象を与えることもあるため、文章の見出しや作品名向けの言葉として覚えておくとよいでしょう。
例文2や例文6のように、ビジネスや社内向けの文章であっても「列伝」という言葉を使うことで、単なる人物紹介以上の読み応えや特別感を演出できるという利点もうかがえます。
例文1や例文4のように歴史や古典を題材にした使い方が王道ではありますが、例文3のようにスポーツや芸能の分野で使われることも増えており、「列伝」という言葉が指す範囲は時代とともに広がりを見せています。
「列伝」というタイトルで知られる作品・企画
「列伝」という言葉を使った作品の代表例は、中国の歴史書『史記』の「列伝」の部分です。
『史記』の列伝には孔子や項羽といった人物の生涯が記されており、後世における「列伝」という言葉の使い方の原点になったと言われています。
三国志の時代を描いた書物にも、英雄たちの生涯をまとめた列伝的な記述が数多く見られます。
日本でも歴史上の人物をまとめて紹介する「偉人列伝」というタイトルの本が、これまでに数多く出版されてきました。
現代ではスポーツの世界でも「名選手列伝」のような企画がテレビや雑誌でよく見られ、古典から現代のコンテンツまで幅広い分野でタイトルとして親しまれている言葉です。
日本の歴史小説や時代劇に関連する書籍の中にも、複数の武将や志士の生涯を一冊にまとめて紹介する列伝形式の作品が数多くあり、長年にわたって読者に親しまれてきました。
一人の主人公を中心に描く小説とは違う楽しみ方ができるのも、こうした列伝形式の作品の特徴です。
最近では学習まんがや子ども向けの読み物にも「〇〇列伝」というタイトルが使われることがあり、子どもたちが歴史上の人物や偉人の生き方に興味を持つきっかけとして、幅広い世代に向けて活用されています。
「列伝」と伝記・評伝・自伝との違い
「列伝」と似た言葉に「伝記」「評伝」「自伝」があります。
どれも人物の生涯を記録する言葉ですが、対象の人数や書き手の立場が異なります。
「伝記」は一人の人物の生涯をたどって記した文章を指す、もっとも広い意味の言葉です。
「列伝」はこの伝記を複数人分まとめて並べた形式を指す点が、最大の違いになります。
「評伝」は伝記に著者自身の評価や解釈を加えたもので、列伝とは視点の置き方が少し異なります。
列伝にも人物評が含まれることはありますが、複数人を並べて記すという前提までは評伝には必ずしもありません。
「自伝」は本人が自分自身の人生を振り返って書いたものです。
一方の列伝は第三者が複数人の生涯をまとめて記す言葉なので、書き手の立場も対象の人数もまったく異なります。
こうして並べてみると、「列伝」は常に複数人の存在が前提になる言葉だと整理できます。
「一人なら伝記、複数人なら列伝」と覚えておくと使い分けがしやすくなるでしょう。
複数の人物を扱う言葉としては「群像劇」という表現もありますが、これは小説や映像作品のストーリー構成を指すことが多く、実在の人物の記録を指す「列伝」とは使われる文脈が異なる点にも注意しておきたいところです。
また「列伝」に近い言葉として「人物誌」という表現もありますが、こちらは特定の分野や地域に関わる人物の情報を整理した資料的な色合いが強く、物語性を含んだ記述が中心となる「列伝」とは少しニュアンスが異なります。
「列伝」を使う際の注意点
「列伝」は雰囲気のある便利な言葉ですが、使う場面には少し注意が必要です。
まず、単独の人物だけを指す場合には「列伝」は使いにくい言葉です。
一人の生涯を語るときは、素直に「伝記」や「評伝」を使うのが自然です。
次に、「列伝」はかなり硬めの書き言葉なので、カジュアルな文章の中では大げさに響くことがあります。
友人同士の会話や普段のSNS投稿には、あまり向かない言葉だと言えます。
読み方にも注意したい点があります。
「列伝」は「れつでん」と読み、これ以外の読み方はありません。
変換の際に見た目の似た「烈伝」などの字と取り違えないよう、入力後に文字をひと目確認する習慣をつけると安心です。
タイトルに「列伝」を使う場合は、取り上げる人数があまりに少ないと、言葉が本来持っている重みに内容が見合わず、どこか大げさな印象を与えてしまうことがあります。
目安としては、三人以上のまとまった人物を扱う企画であれば、「列伝」という言葉の格式と内容のボリュームのバランスが取りやすくなるでしょう。
逆に一人や二人だけの紹介であれば、「伝記」や「ストーリー」といった別の言葉を選んだほうが実態に合った表現になります。
「列伝」の英語での言い方
「列伝」を英語で表すときは、複数人の伝記という意味合いをきちんと伝える工夫が必要になります。
もっとも近い表現は「biographies」で、複数形にすることで複数人を扱う点を表せます。
単数形の「biography」では、一人分の伝記という意味に限られてしまいます。
古典の書名を訳す場合には、「Records of …」のような形式の表現が使われることもあります。
『史記』の「列伝」部分は、こうした形で英語に訳されることがあると言われています。
ただし英語に直すと、「列」という字が持つ「並べて記す」という格調高いイメージまでは、うまく伝わりません。
日本語の「列伝」には、単に複数の伝記を集めたという以上の重みが込められていると考えてよいでしょう。
複数人の経歴を紹介する企画そのものを指したい場合には、「profiles」という単語が使われることもあり、「Profiles of …」という形でタイトルに用いられることもあります。
日本語の「〇〇列伝」という響きに近づけたいときには、こうした単語の選び方も参考になります。
『史記』の英訳では「Records of the Grand Historian」という訳題が知られており、その中で列伝に当たる部分は「biographies」として扱われることが多いとされています。
古典の翻訳では、こうした複数の単語を組み合わせることで、ニュアンスの違いをできるだけ正確に伝える工夫がされているようです。
ビジネス・現代コンテンツにおける「列伝」の使い方
現代では「列伝」という言葉が、ビジネスの分野でもよく使われるようになっています。
特に多いのは「経営者列伝」のように、複数の経営者の歩みをまとめて紹介する企業史コンテンツです。
多くの経営者を並べることで、業界全体の流れを読み取れるという良さがあります。
書籍や動画、記事のタイトルに「列伝」を使うと、内容の網羅感や格式の高さを一言で伝えられます。
一人ひとりの事例を淡々と並べるよりも、「列伝」という言葉が加わるだけで、不思議と権威性や説得力が増す効果があります。
こうした効果があるため、歴史上の人物だけでなく、現代の成功者やスタートアップ創業者を紹介するコンテンツにも「列伝」というタイトルが好まれています。
企業が自社のブログやオウンドメディアで「創業者列伝」のような連載を続けると、単発の成功談を紹介するよりも、歴史の積み重ねや事業の広がりを感じさせる見せ方ができ、読み手に対するブランドへの信頼感にもつながりやすくなります。
採用広報の場面でも「若手社員列伝」のような企画名を使うことで、一人ひとりの社員紹介記事にちょっとした特別感を持たせる効果が期待できます。
就職や転職を考えている読者にとっても、複数の社員の歩みをまとめて読めることは、会社の雰囲気をつかむ手がかりになるでしょう。
「列伝」のまとめ
- 「列伝」の読み方は「れつでん」です。
- 複数人の生涯を並べて記した文章や書物を指す言葉です。
- 伝記・評伝・自伝とは異なり、複数人の存在が前提になります。
- 硬めの書き言葉のため、場面やタイトルを選んで使うのがおすすめです。
ここまで「列伝」という言葉について、意味や使い方、関連する言葉との違いを見てきました。
読み方は「れつでん」で、複数の人物の生涯をまとめて記した文章や書物を指す言葉です。
古代の歴史書から生まれた言葉が、今もビジネスや現代のコンテンツの中で活躍しているのは興味深いところです。
硬めの書き言葉であることを踏まえつつ、タイトルや文章の中に取り入れてみると、内容に重みと説得力を添えることができます。
タイトルや見出しに「列伝」を使うかどうか迷ったときは、紹介する対象が複数の人物であるかどうか、そして硬めの文体にふさわしい場面であるかどうかを基準に考えると、判断がしやすくなるでしょう。