「引用」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「引用」という言葉の意味を解説!

「引用」とは、他人の言葉・文章・データなどを自分の文章に取り込み、出典を明示したうえで論証や説明を補強する行為を指します。

引用の目的は、自分の主張を裏づけたり、第三者の権威を借りて説得力を高めたりすることです。学術論文や報道記事のほか、ビジネス文書やプレゼン資料でも広く用いられます。

引用には「要約」と「パラフレーズ」との違いがあります。要約は情報を短くまとめ直す行為、パラフレーズは内容を変えずに言い換える行為ですが、どちらも原文をそのまま引用したわけではないため、厳密には引用とは区別されます。

日本の著作権法第三十二条では、引用の要件が明確に定められています。例えば「公正な慣行に合致すること」「報道・批評・研究など正当な目的があること」「主従関係を保つこと」「出所を明示すること」などが条件です。

以上のように、引用は文章表現を豊かにする便利な技法ですが、法的・倫理的なルールを守らなければ著作権侵害に当たるリスクもあるため注意が必要です。

「引用」の読み方はなんと読む?

「引用」は音読みで「いんよう」と読みます。訓読みや当て字はほとんど存在せず、ひらがな表記の「いんよう」も一般的に認知されています。

「いんよう」という二音の語感は比較的柔らかく、会話の中でも使いやすいのが特徴です。ビジネスの現場でも「この資料、引用はどこ?」のように口頭で使われることが増えています。

英語では “quotation” または “citation” と訳されます。quotation は文章や発言を「引用符付きで抜き出す」ニュアンス、citation は「出典を示す行為」そのものを指します。このように英語圏でも目的の違いによって語が分かれている点は覚えておくと便利です。

また、校正・校閲の世界では「引用符」を「ダブルクォーテーション」「二重かぎかっこ」などと呼び分けており、表記ゆれが起こりやすいので社内でルールを決めておくと混乱を避けられます。

「引用」という言葉の使い方や例文を解説!

引用は主に文章の信頼性を高める目的で使われます。文章中で原文を抜き出す場合にはかぎかっこ(「」)や引用符 (“ ”) を用い、ページ数や著者名を明示すると丁寧です。事実関係を確認できる数字や統計を示す場合にも効果的です。

出典を書籍・論文・ウェブサイトから示すときは、著者名、発行年、ページ、URLの順にそろえると読み手が確認しやすくなります。また、引用部分が長くなる場合には字下げやフォントサイズを変えて本文と区別する方法が推奨されます。

【例文1】卒業論文では国連の報告書を引用し、難民数の推移を説明した。

【例文2】プレゼン資料の最後に統計データの引用一覧を設けて、信頼性を担保した。

【例文3】記事中で芥川龍之介の言葉を引用し、文学的な雰囲気を演出した。

引用を行う際の注意点は、引用元の改ざんをしないこと、引用部分と自分の意見を明確に分けること、引用量を最小限にとどめることです。過度な引用は「勝手な転載」とみなされる恐れがあるため要注意です。

「引用」という言葉の成り立ちや由来について解説

「引用」は「引く」と「用いる」の二字から成り立っています。「引く」は古くから「言葉を引き出す」「喩えを引く」など、言説を取り込む意味で使われてきました。「用いる」は材料として活用するという意味です。

この二字が組み合わさることで「他から引き出した言葉を材料として用いる」という現在の意味が生まれました。漢籍にも同様の構成を持つ熟語があり、中国語の「引用(yǐn yòng)」は「例を引いて説明する」の意味で使われています。日本語は漢籍から語彙を借用する際に同じ字面を採用し、平安期の学者が記した『漢語抄』などにも「引用」の語が見られます。

江戸時代の儒学者は、経書を講義する際に他の文献を「引用」して注釈や補足を行いました。これが学問領域での引用概念の基礎となり、明治期に西洋由来の学術方法論と結びつくことで、現在の引用スタイルが確立されたと考えられます。

現代においてはデジタルデータの普及で出典の形式が多様化しましたが、「引用」の漢字構成が示す根本的なイメージ――他から引き、用いる――は変わっていません。

「引用」という言葉の歴史

引用の歴史は古代メソポタミアの粘土板文書までさかのぼることが研究からわかっています。楔形文字の手紙には他の王の布告文を抜粋し、「王はこう言った」と明示していました。

古代ギリシアでは哲学者プラトンが師ソクラテスの発言を引用形式で対話篇に記述しました。この慣習がローマへ伝わり、キケロの演説でも引用符にあたる「」が用いられた痕跡が残っています。

日本では奈良・平安時代の漢詩文集に、原典を示しながら別の文章を抜き出す「引文」形式が見られ、これが後に「引用」と表記されるようになりました。仏教経典の注釈書『法華玄義』なども典型例です。

印刷技術が発達した近世以降、引用は学問の信頼性を担保する手段へと性格を変えました。1876年に東京大学が西洋式の脚注マニュアルを導入し、著作権法(1899年制定)で「引用」の合法性が明文化されたことで、現在の学術スタイルが定着しました。

「引用」の類語・同義語・言い換え表現

引用と似た働きを持つ言葉には「抜粋」「引用文」「引用句」などがあります。これらは原文を切り取って示す点でほぼ同義ですが、フォーマル度や文脈で使い分けられます。

「参照」「引証」「典拠」は、引用と同じく出典を示して説得力を高める目的を持つものの、必ずしも原文をそのまま書き写すわけではありません。「引用」と「参照」の差は、抜き出すかどうかにあると理解すると整理しやすいです。

日常会話で使いやすいカジュアルな言い換えとしては「例に挙げる」「引用する代わりに紹介する」などが挙げられます。一方、学術的には「citation」「quotation」「attribution」という英語も覚えておくと国際論文で役立ちます。

さらに、法律や行政文書では「援用」という言葉も近い位置づけです。援用は「既に存在する条文や判例をそのまま使う」という意味合いが強く、引用よりも硬いニュアンスを帯びています。

「引用」についてよくある誤解と正しい理解

引用に関する代表的な誤解は「文章をすべて引用符で囲めばどれだけ長くても合法」というものです。著作権法では「引用が主、引用以外が従」になっていることが必要とされており、引用部分が本文を上回ると主従が逆転して違法となる恐れがあります。

もう一つの誤解は「翻訳したら引用ではなくなる」というものですが、翻訳であっても原文の著作権は残るため、必ず出典を記載する必要があります。翻訳自体が二次的著作物として別途権利を生む点も見落とされがちです。

また、ウェブサイトのスクリーンショットや図表を貼り付ける際に「出典を書いたから引用」と思われがちですが、図版は文章よりも転載量が多いケースが多く、著作権者の了解を取らないと「引用の必要最小限」を超える恐れがあります。

引用の正しい理解として、量を最小限にとどめ、本文と引用の境界をはっきり示す、そして出典を明確に記載する――この3点を守れば大半のトラブルは避けられます。

「引用」を日常生活で活用する方法

引用はビジネスメールやSNSでも手軽に活用できます。上司への報告書で「経済産業省の統計によると…」と数字を示せば、提案の説得力が一段と高まります。SNSではニュース記事の一部を引用して自分の意見を添えることで、フォロワーに正確な情報源を示せます。

ただし、SNSでは全文転載になりやすいので、数行にとどめてリンクを貼るなど量を調整すると著作権侵害を避けられます。チャットツールでは返信相手の発言を引用符で囲んで再掲し、その上で回答すると齟齬が生まれにくくなります。

読書会や勉強会でも引用は役立ちます。気になったフレーズをノートに書き写し、出典とページ数をメモしておくと後日の議論でスムーズに参照できます。家計簿アプリの統計やダイエットアプリのグラフを友人に見せるときも、アプリ名と取得日を記載すると引用情報として機能します。

身近な生活の中で引用を意識するだけで、情報の信頼性が高まり、コミュニケーションの誤解が減るメリットがあります。

「引用」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「引用」とは他人の言葉や資料を取り込み、出典を明示して自分の主張を補強する行為。
  • 読み方は「いんよう」で、漢字・ひらがなどちらの表記も一般的。
  • 「引く」と「用いる」の組み合わせが語源で、奈良時代から用例が確認できる。
  • 現代では著作権法のルールに従い、量と出典を適切に示すことが重要。

引用は文章の信頼性を高め、議論を充実させるための不可欠な技法です。ルールを守れば学術・ビジネスはもちろん、日常生活でも幅広く活用できます。

一方で、引用量が多すぎたり出典を示さなかったりすると、著作権侵害や情報の誤用につながります。適切なマナーと法的知識を身につけ、情報社会を賢く生き抜きましょう。