「貫く」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「貫く」という言葉の意味を解説!

「貫く」は「物体を端から端まで突き通す」という物理的な意味と、「態度や信念を最後まで変えずに保つ」という比喩的な意味の二本柱で成り立つ言葉です。前者は矢や光が壁を貫通するイメージ、後者は志や方針を曲げずに行動し続けるイメージに対応します。辞書によっては「徹底する」「貫徹する」といった語義を同列に扱い、目的達成までの一連の姿勢そのものを表す場合もあります。現代日本語では比喩的な使い方が圧倒的に多く、ビジネスから日常会話まで幅広く浸透しています。

主語が人の場合は「信念を貫く」、主語が物の場合は「針が布を貫く」のように対象が異なる点に注意が必要です。さらに「貫きを通す」といった慣用表現もあり、「自らの主張を守り抜く」という意味が強調されます。

いずれの意味でも「途中で止めない・曲げない」というニュアンスが核となっています。会社経営の方針、芸術家の作風、学者の研究テーマなど、長期にわたる姿勢を示す場面で使われることが多いです。

「貫く」の読み方はなんと読む?

「貫く」の一般的な読み方は「つらぬく」です。音読みと訓読みの組み合わせで、漢字自体は音読み「カン」、訓読み「つらぬく」があります。会議資料やニュース原稿では「貫徹(かんてつ)」と混同されるケースがあるため、ふりがなを振ると誤読を防げます。

歴史的仮名遣いでは「つらぬく」と表記され、江戸時代の文献でも同様の読み方が確認できます。小学校5年生で学習する漢字ですが、送り仮名を省き「貫く」と書くことが多いため、読み慣れていない子どもが「ぬき」と読んでしまうこともあります。

書き言葉では「貫き通す」「意志を貫く」のように複合語で用いられる頻度が高く、そのまま読むときは「つらぬきとおす」と連濁しない点も特徴です。英語訳としては「penetrate」「persist」「stick to」などが適切ですが、文脈により意訳が必要になります。

「貫く」という言葉の使い方や例文を解説!

使い方を把握する鍵は「物理的に突き通す」か「精神的に貫徹する」かを判断し、それぞれに応じた主語と目的語を設定することです。以下の例文を参考にすると、文脈に合わせた自然な表現を身につけられます。

【例文1】強い光線が雲を貫き、地上に一筋の光が差した。

【例文2】彼女はどんな反対意見にも屈せず、自分の信念を貫いた。

【例文3】長年にわたり一つのテーマを貫く研究者の姿勢に感銘を受けた。

【例文4】細い針が布を貫く音だけが静かに部屋に響いた。

例文では物理的・比喩的両面をバランスよく盛り込みました。文章を書く際は、目的語に「意志」「思想」「ポリシー」など抽象的語を置くことで精神的意味合いを強められます。一方、建物・壁・布・雲など具体的語を置けば物理的ニュアンスが伝わります。

比喩的用法では「最後までやり遂げる」というニュアンスが付随し、途中で折れない強さや継続性を暗示するため、モチベーションを語る場面で効果的です。ただし過度に使用すると頑固・独善的な印象を与える可能性もあります。文脈や相手の立場を考慮しながら使うと、言葉の力を最大化できます。

「貫く」という言葉の成り立ちや由来について解説

漢字「貫」は「貝を糸で貫いたさま」を象った象形文字で、古代中国で貨幣を紐で通し束ねた様子が起源とされています。このことから「貫」は「ひと繋がりに通す」「まとめる」といった意味を帯びました。日本では奈良時代に中国文化と共に伝来し、律令制下の貨幣単位「一貫文」にも採用されました。

動詞「貫く」は、この名詞的意味に接尾語「く」を添えて動詞化したもので、「ひもで通してまとめる」行為が転じて「物を突き通す」「思想を通し続ける」という広義に発展しました。

貨幣を串刺しにして束ねる行為が「貫」の核心であるため、「始点と終点を一本でつなぐ」イメージが語源的にも明確です。やがて日本語の文脈では精神的持続性を示す用法が拡⼤し、文学や武家社会の倫理観にも深く根づきました。元の「数をまとめる」機能は計量単位として現代まで残る一方、動詞としては「信念を守る」意味が主流になっています。

「貫く」という言葉の歴史

平安期の『源氏物語』や『枕草子』にはすでに「矢、門を貫きて」など物理的用法が確認でき、室町期には精神的な意味が文献上に増加しました。鎌倉武士の気風を示す『徒然草』では「よくよく心を貫きてこそ、武の道は定まる」といった表現が登場し、武家社会の価値観に定着したことがわかります。

江戸時代には朱子学や陽明学の思想書に「義を貫く」「節を貫く」が多用され、士道教育の中核概念として扱われました。明治維新後、西洋語の「パーシステンス」「プリンシプル」に対応する訳語としても採用され、新聞や演説で広まりました。

20世紀以降はビジネス書や自己啓発書で「信念を貫け」が常套句となり、SNS時代の現在もハッシュタグ化して使われるなど、歴史を通じて語感の鮮度を保っている点が特徴です。このように「貫く」は1000年以上の長い歴史を持ちながら、時代の変化に合わせて物理的・精神的意味の比重を調整しつつ生き残ってきた言葉だといえます。

「貫く」の類語・同義語・言い換え表現

比喩的な意味合いでの類語には「貫徹」「堅持」「守り抜く」「押し通す」などがあり、ニュアンスの強弱や丁寧度によって使い分けが可能です。「貫徹」は目標達成までやり遂げる点で近似し、「堅持」は主張を守る姿勢を強調します。「押し通す」はやや強硬な印象があり、相手の反対を想定しているのが特徴です。

物理的な意味では「貫通」「突き抜ける」「射抜く」などが類語です。「貫通」は通り抜けた結果に焦点を当て、「突き抜ける」は勢いを示し、「射抜く」は矢や弾丸といった射出物に限定されやすいです。

文体や敬語レベルに応じて「最後まで通す」「一貫する」のような口語的言い換えも使えるため、文章のトーンに合わせた選択が大切です。

「貫く」の対義語・反対語

精神的用法の対義語として最も代表的なのは「折れる」で、意志を曲げる・妥協するという意味になります。類似の語に「挫折する」「断念する」「諦める」があり、継続性が途切れる点で「貫く」と対照的です。「翻す(ひるがえす)」は主張を変えることを示し、文語的な対語として用いられます。

物理的用法の反対概念としては「遮る」「防ぐ」「止める」が当たります。矢が壁を貫くの逆として「矢を防ぐ壁」のように使うと意味が明確です。

反対語を理解しておくと、文章にコントラストをつけやすくなり、説得力を高めるテクニックとしても役立ちます。

「貫く」を日常生活で活用する方法

目標設定や自己管理の場面で「貫く」という言葉を意識すると、行動の指針がぶれにくくなるメリットがあります。たとえば手帳に「早起き習慣を貫く」と書き込むだけで、達成度を日々チェックする習慣が生まれます。家族や友人に「私はこのルールを貫く」と宣言すれば、周囲の応援やフィードバックを得やすくなります。

ビジネスシーンではプレゼンの締めくくりに「顧客第一を貫く所存です」と述べることで、会社の姿勢を端的に示せます。教育現場でも「学習計画を貫く」といったフレーズは生徒の自律心を促します。

ただし状況が大きく変化したときにまで無理に貫こうとすると、柔軟性を欠き逆効果になる場合があります。そのため「どこまでが譲れないラインか」を明確に定義し、必要なら部分的な修正を加える「しなやかさ」とセットで使うことが望ましいです。

「貫く」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「貫く」は「突き通す」と「信念を貫徹する」の二大意味を持つ言葉。
  • 読み方は「つらぬく」で、送り仮名を含めた表記が一般的。
  • 「貝を糸で通す」象形が語源で、古代から貨幣単位としても使われた。
  • 比喩的用法が主流だが、状況に応じて柔軟に使うことが重要。

まとめると、「貫く」は物理的・精神的の両面で「始点から終点まで一直線に通す」力強いイメージを持つ語です。読み方や送り仮名は中学生までに定着しますが、大人でも「かんぬく」と誤読する例があるため注意しましょう。

歴史的には貨幣単位や武士道の倫理観を支え、現代では目標達成やブランド理念を語るキーワードとして生き続けています。反対に柔軟さが必要な場面では「貫く」よりも「調整する」「歩み寄る」といった用語が適切になる場合もあります。

日常生活やビジネスで使う際は、自分の中で「折れない核」を見極めたうえで宣言的に用いると、他者にもブレない姿勢が伝わりやすくなります。言葉の力を借りて行動と信念を一致させることこそ、「貫く」の真価といえるでしょう。