「この度」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「この度」という言葉の意味を解説!

「この度」は“今回”や“今度”をていねいに示す改まった表現で、ビジネスから冠婚葬祭まで幅広く使われます。日常会話では「このたび〜」と前置きすることで、聞き手に対して丁寧かつ控えめな印象を与えます。特に目上の人や取引先など、フォーマルな場面で用いると失礼がなく重宝します。

この言葉は直近の出来事を示すだけでなく、話し手が相手への敬意を示す働きをします。「先日」「昨今」などと異なり、過去・現在・未来を限定せず文脈で時制が変わる柔軟性も特徴です。たとえば「この度はご迷惑をお掛けしました」は過去の事象、「この度の件につきまして」は進行中の事柄、「この度新製品を発売いたします」は未来の予定を示す使い方になります。

さらに「度」という漢字には“たび”の意味があり、回数や機会を表す語として古くから用いられてきました。「この」+「度」の組み合わせは、“今回という機会”を強調するニュアンスを持ち、謝罪や報告、祝辞など幅広い文脈で活躍します。

一般的に口語よりも文章語での使用頻度が高く、メール・手紙・スピーチ原稿などで見かけることが多いです。一方で友人同士のカジュアルな会話では「この度ね……」と言うとやや堅苦しく聞こえるため、TPOに合わせた表現選択が必要になります。

「この度」の読み方はなんと読む?

「この度」は平仮名で「このたび」と読み、アクセントは「の」の後ろに軽く置くのが標準的です。漢字表記には「度(たび)」を当てますが、小中学校の国語教育では主に平仮名で習うため読み間違えは少ない語です。

東京方言では「こNOたび」と後半をやや強めに発音する一方、関西ではフラット気味に「このたび」と流す場合もあります。とはいえ大きな違いではなく、ビジネス通話やオンライン会議でも問題なく通じる発音です。

読みのポイントは「この度“は”」と助詞が続く場合に、ブレスを置いて滑らかに言うことです。例えば「このたびは、ご応募いただき誠にありがとうございます」と区切ると、聞き手にクリアに伝わります。

なお「度」を「ど」と誤読し「このど」としてしまう例は稀ですが、“たび”と読む熟字訓の一種であると覚えておけば安心です。

「この度」という言葉の使い方や例文を解説!

使い方のコツは「冒頭のあいさつ+主体+内容」をセットで述べ、丁寧さと具体性を両立させることです。まず「この度」自体が相手への配慮を含むため、後続の文でも尊敬語や謙譲語を維持するとバランスが取れます。

【例文1】この度はご結婚、誠におめでとうございます。

【例文2】この度の台風被害に際し、心よりお見舞い申し上げます。

上記のように祝い事・災害見舞いなど幅広い文脈で使用できます。ビジネスメールでは「この度はお問い合わせいただき、ありがとうございます」といった導入が定番です。

一方、口語で堅さを和らげたい場合は「この度ね、転職することになったんだ」と語尾をカジュアルに調整すると自然な印象になります。ただし謝罪文では「この度は私の不注意によりご迷惑をお掛けし、申し訳ございませんでした」と改まった文体を保つことが重要です。

慣れないうちは「今回」と置き換えてみて不自然さがないか確認すると便利です。「この度」の方がやや丁寧な響きと覚えておくと、場面による使い分けがスムーズにできるでしょう。

「この度」の類語・同義語・言い換え表現

主な言い換え表現には「今回」「今般」「近頃」「先般」などがあり、フォーマル度や時制によって使い分けます。「今回」はもっとも汎用的で、カジュアルからビジネスまで幅広く使えます。「今般」は公文書・法令・プレスリリースなど硬い文章に適し、「先般」は少し前に起こった出来事を指し示すときに便利です。

類語を選ぶ際のポイントは、相手との関係性と文書の堅さです。社内メールであれば「この度」「今回」の差は大きくありませんが、官公庁への提出書類では「今般」の方が格式に合います。

【例文1】今回のキャンペーンは好評を博しました。

【例文2】今般、弊社は新拠点を設立いたしました。

これらの表現を適切に使い分けることで、文章全体の説得力と読みやすさが向上します。ただし「この度」と「近頃」は意味が重なる部分がありながら、「近頃」は期間の幅が広い点が異なるため混同に注意しましょう。

「この度」の対義語・反対語

明確な対義語は存在しないものの、場面によっては「以前」「従来」「旧来」などが機能的な反対語として用いられます。「以前」は過去全般を指し、「従来」や「旧来」は従来から続いてきた事柄を示す語で、いずれも“今より前”を表す点で「この度」の対概念として扱えます。

例えば「この度の仕様変更」には「従来の仕様」が対になる形です。文章内で両者を対比させることで旧状と新状を明確に示せます。

【例文1】この度のルール改定に伴い、従来の方法は無効となります。

【例文2】以前のご案内から変更がございますのでご注意ください。

なお「今後」は未来指向であり「この度」との直接の反対ではありませんが、文章構造上ペアで使われることもあります。反対語選択は内容の対比を明確にするための手段と覚えておくと便利です。

「この度」という言葉の成り立ちや由来について解説

「度(たび)」は奈良時代の『万葉集』にも見られる古語で、回数や機会を指す語として定着していました。平安期の文献では「此度」や「此度々」の表記が確認され、やがて現代の「この度」へ統一されます。

「度」は漢籍由来の語ですが、日本語では“たび”と訓読みし、移動や行為の回数を示す用途が発達しました。「この」は指示詞で近称を示し、両者が結合して“今回の機会”という意味合いになります。

室町時代の連歌や江戸期の俳諧においても「この度」はしばしば題材として詠まれました。季節の移ろいを表す際に「この度の春」「この度の秋」という言い回しが用いられ、文学的情緒を添える語として機能していたことが分かります。

近代に入り公的文書での表記が整理されると、「此度」よりも仮名交じりの「この度」が一般化しました。これにより今日のビジネスや冠婚葬祭における改まったあいさつ表現として広まりました。

「この度」という言葉の歴史

古典文学から現代のメール文化に至るまで、「この度」は約1300年にわたり形を変えつつ使われ続けてきました。奈良時代の歌集では多くがひらがな主体で「このたび」と記され、和歌では旅情や季節感を表す言葉として重宝されました。

江戸時代には商家の往来文書や公儀の布令に「此度」の表記が見られ、公式連絡語としての役割が強まりました。明治以降、西洋式のビジネス文書が普及し始めると、「拝啓」「謹啓」に続く定型句として「この度」が位置づけられました。

戦後の高度経済成長期には企業間取引が拡大し、礼儀作法の標準化とともに「この度」はさらに定着します。今日ではメール・チャットなど電子媒体でも使われますが、硬さを感じる場面では「今回」「このたび」と平仮名書きにすることで柔らかい印象を与える流れが見られます。

言葉の変遷をたどると、音韻は大きく変わらないまま、表記や使用シーンだけが時代に合わせて変容してきたことが分かります。これは日本語が持つ柔軟性の好例と言えるでしょう。

「この度」についてよくある誤解と正しい理解

もっとも多い誤解は「『この度』=過去の出来事限定」という思い込みで、実際には未来や進行中の事柄にも使えます。そのため「この度、来月より値上げいたします」という表現も正しい用法です。

次に多いのが「カジュアルシーンでは使えない」という誤解です。確かにフォーマル寄りですが、イントネーションや語尾を調整すれば親しい相手への報告にも活用できます。ただし若者言葉との混在は違和感を覚えやすいので注意しましょう。

また「この度は」の後ろに必ず謝罪や感謝が続くと思われがちですが、単なる事実報告でも問題ありません。「この度、新店舗をオープンしました」が好例です。

誤用を避けるコツは「今回」と入れ替え可能かどうかでチェックすることです。不自然さがなければ大抵は正しい使い方と判断できます。

「この度」を日常生活で活用する方法

日常で「この度」を上手に使うポイントは“少し改まった場面”を選び、丁寧さを添えたいタイミングで投入することです。たとえば子どもの保護者会で「この度はお忙しい中、ご参加いただきありがとうございます」と言えば好印象を与えます。

メールの場合、件名に「【ご報告】この度○○を取得しました」と書くと内容が一目で分かり、かつ礼儀正しい印象になります。

口頭では「この度ね、引っ越しすることになったの」と柔らかく伝えれば、親しい友人にも違和感なく使用できます。ただしラフな飲み会の場などでは堅すぎるため「今回」「今度」に置き換えるとよいでしょう。

小さな成功体験として、SNSでの丁寧な報告投稿にも活用できます。「この度、資格試験に合格しました」と述べることでフォロワーに感謝を示しつつ正式な印象を保てます。

「この度」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「この度」とは“今回・今度”を丁寧に示す敬意表現です。
  • 読み方は「このたび」で、漢字と平仮名表記の両方が用いられます。
  • 奈良時代から続く「度(たび)」の語に由来し、文献上でも長い歴史があります。
  • ビジネス・冠婚葬祭などフォーマルな場面で便利ですが、TPOに合わせた使い分けが必要です。

「この度」は日本語の中でも歴史が長く、現在まで意味や発音を大きく変えずに受け継がれてきた珍しい言葉の一つです。丁寧さと柔軟性を兼ね備えているため、ビジネスメールから祝辞・弔辞まで幅広く使用できるのが強みです。

実際に使う際は、相手との距離感や文章全体のトーンを意識しながら「この度」「今回」「今般」などを選び分けると、より洗練されたコミュニケーションが実現します。今日からぜひ、適切な場面で「この度」を活用してみてください。