「所存」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「所存」という言葉の意味を解説!

「所存(しょぞん)」は「考え・意向・決意」といった内面的な思いを丁寧に表明する日本語の敬語表現です。この言葉は、相手に対して自分の考えや方針をへりくだって示すときに用いられます。ビジネス文書やフォーマルなスピーチで頻出し、単なる「思います」よりも慎重で重みのある印象を与える点が特徴です。

「所存」は、自分の気持ちや方針を表す名詞「所存」に、補助動詞「でございます」や「です」を組み合わせて使うのが一般的です。「所存です」「所存でございます」と言い切る形が最もポピュラーであり、文章の末尾を端的に締める効果があります。

第三者に対して「~する所存です」と述べることで、明確な決意を示す一方、謙虚さも含むため柔らかな印象を残します。これは日本語特有の「自己卑下の敬語」文化が反映された表現といえるでしょう。

現代ではビジネスメールや自己紹介文、謝罪文など、フォーマルさを求められるシーンで広く用いられています。カジュアルな会話ではやや硬い印象となるため、使い分けが重要です。

誤用として「所存いたします」という形が見られますが、名詞を動詞化した二重敬語に近いため避けるのが無難です。名詞「所存」のあとに助動詞「です」をつけるのが正統的な用法と理解してください。

まとめると、「所存」は自己の強い意思を丁寧に伝え、同時に相手への敬意を示す万能な言葉です。

「所存」の読み方はなんと読む?

「所存」は「しょぞん」と読みます。一般的な読み方が一つしかないため誤読は少ないものの、初学者が「しょそん」や「しょぞく」と読み間違えるケースがあります。

漢字「所」は場所や部分を示す字、「存」は存在・存続を意味します。二文字をあわせて「心の中にある考え」を象徴する熟字訓として成立しています。

平仮名表記としては「しょぞん」、送り仮名や付け足しは必要ありません。公用文や就職活動のエントリーシートでも漢字表記が正式ですが、読みやすさを優先して(しょぞん)とルビを振る場合もあります。

ビジネスメールでは「所存でございます」と漢字+丁寧語で書くのが一般的で、読みの誤解を防ぐため声に出す場面では「しょぞん」とはっきり発声することが大切です。

「所存」という言葉の使い方や例文を解説!

「所存」の使い方はシンプルで、意向動詞を伴わずに単独で「所存です」と結ぶか、「~する所存です」と目的を補足する二択が基本です。語調が硬いため友人同士の会話ではほとんど登場せず、社内連絡や対外的な文書に適しています。

例文を提示します。

【例文1】今後も品質向上に努める所存です。

【例文2】今回の失敗を真摯に受け止め、再発防止に尽力する所存でございます。

上のように「所存」を用いる位置は文末が定番です。間に副詞を入れて「誠に遺憾に存じる所存です」と重ねて使うと冗長になるため避けるのが賢明です。

文章全体を簡潔に締める目的で「所存」を活用すると、相手に努力の決意や誠意をコンパクトに伝えられます。

「所存」という言葉の成り立ちや由来について解説

「所存」の語源は、中国の古典語「所在存心(しょざいそんしん)」にあるとされます。これは「心に留め置くところ」という意味で、平安期の和漢混淆文に輸入されました。

鎌倉〜室町時代にかけて禅僧が書いた漢文体の語録で「所存」に近い表記が散見され、そこから公家や武家の書状へ浸透したと考えられています。江戸期には武士の礼状で「所存候(そうろう)」という形で定着しました。

明治以降、近代日本語の整理により「候文」が廃れ、「所存です」「所存でございます」へと置き換わりました。現在のビジネス敬語に直結するルーツです。

つまり「所存」は中国古典→禅僧語録→武家文書→現代敬語へとバトンを渡してきた、きわめて由緒正しい表現なのです。

「所存」という言葉の歴史

歴史的推移をもう少し細かく追ってみましょう。平安時代の公文書には「所存」という表記はまだ希少で、「存心」や「存ずるところ」が主流でした。

室町時代には禅宗の影響で「所存」が広まり、武士階級が交わす起請文で頻繁に使われます。江戸幕府の公文書では「所存候」と書き添えることで「私の考えでございます」という謙譲の意を示しました。

明治期の文明開化後、横書き文化の導入によって「候」が急速に衰退し、「所存です」という口語体に転換します。大正〜昭和のビジネス文書において標準化され、戦後は公務員マニュアルやビジネス文例集に欠かせない語句となりました。

歴史を通じて「所存」は身分制度・文体変革・言語近代化の影響を受けながらも、常に「へりくだって自分の意思を告げる」という核心を保ち続けてきたのです。

「所存」の類語・同義語・言い換え表現

「所存」の類語として代表的なのは「所見」「所懐」「所感」「意向」「決意」などがあります。これらはニュアンスや敬語度合いが微妙に異なるため、場面によって使い分ける必要があります。

「所見」は専門家が持つ見解や意見を示す堅めの語で、医師の所見など客観性を帯びます。「所感」は出来事に対する感想であり、感情的要素が前面に出る点が「所存」との違いです。

「決意」は強い意志を前向きに打ち出す語で、謙譲性はあまりありません。「意向」は比較的カジュアルな書き言葉で、ビジネス調査アンケートでも活用されます。

最も近い言い換えは「所懐(しょかい)」ですが、現代では古語的で使用頻度が低く、「所存」を選ぶほうが理解されやすいと言えます。

「所存」の対義語・反対語

「所存」は「自分の意向をへりくだって示す語」なので、対義語を考える際は「相手の意向を尊重する語」または「意向がない状態を示す語」が該当します。代表的な対義語候補として「所存なし」「所存ございません」「未定」が挙げられます。

言い換えの文脈では「存じません」が近しい位置にあります。「存じません」は「わかりません」の謙譲語で、自分の考えを示さないため、結果的に「所存」と反対の立場になります。

ビジネスシーンでは「検討中」という語を用いて、現段階で明確な所存(意思)が固まっていないことを示す場合もあります。

つまり対義語としては「未定」「検討中」「所存ございません」など、意思表明を留保する語が適切です。

「所存」を日常生活で活用する方法

「所存」はフォーマルな響きが強いものの、日常でも適切に使えば自己主張をやわらげる便利な言葉となります。たとえば町内会の回覧で「清掃活動へ参加する所存です」と書くと、丁寧さと主体性を同時に示せます。

家庭内でも冠婚葬祭の場面で重宝します。叔父への結婚報告を手紙で行う際、「新天地でも精進する所存です」と記すと堅すぎず、かつ礼儀正しくまとまります。

友人とのメールで使う場合には注意が必要です。会話の温度感と噛み合わないと「急に他人行儀」と受け取られかねません。公的行事などハレの場に限定して取り入れると違和感が抑えられます。

日常活用のコツは「改まった場+自分の決意」の二条件が揃ったときに絞ることです。

「所存」についてよくある誤解と正しい理解

もっとも多い誤解は「所存=考えている途中」というイメージです。実際には「ほぼ決意が固まっている状態」を示すため、「検討中の所存です」と書くと矛盾が生じます。

二つ目の誤解は「所存いたします」という言い回しです。名詞「所存」に動詞「いたします」を重ねると、意味が重複するうえ二重敬語に近い形となります。正しくは「所存です」または「所存でございます」です。

三つ目の誤解は「カジュアルな場所でも問題なく使える」という認識です。実際はフォーマル度が高く、場違いな印象を与えるリスクがあります。

これらの誤解を避け、適切に使えば「所存」はあなたの文章力をワンランク上げる頼もしい武器となります。

「所存」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「所存」は自分の意思や決意をへりくだって示す丁寧な表現。
  • 読み方は「しょぞん」で、漢字表記が一般的。
  • 禅僧語録や武家文書を経て現代ビジネス敬語へと受け継がれた歴史を持つ。
  • 硬い語感ゆえ、フォーマルな場面での決意表明に限定して使うのが望ましい。

以上、「所存」という言葉の意味・読み方・使い方から、歴史や類語、誤解まで幅広く解説しました。「所存」は古い言葉に見えて、今なおビジネスや公的文書で活躍する現役の敬語です。

使う際は「決意が固まっている」ことと「フォーマルな場面」であることを確認し、「所存です」「所存でございます」と端的に結ぶのが基本です。この記事を参考に、正しくスマートに「所存」を活用してみてください。