「決して」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「決して」という言葉の意味を解説!

「決して」は「どんなことがあってもそうはならない」という強い否定や断固たる意志を示す副詞です。この語は主に否定語(ない・ぬ・まい など)を伴って、「絶対に~しない」「断じて~しない」という意味を添えます。肯定文に用いられることは極めてまれで、慣用句的に「決して~ない」で成立するのが特徴です。日常会話だけでなく、公的文書やビジネス文脈でも「厳重に禁止したい」「確固たる保証を示したい」場面で多用されます。

「絶対に」や「断固として」よりも、やや厳粛でかたい印象を与えます。そのため、フォーマルな文章や謝罪文、正式な規約などでは「決して」を選ぶことで内容に重みを与えられます。一方、カジュアルな会話で多用すると芝居がかった印象になることもあるため、TPOの見極めが大切です。

重要なのは「決して」は単独では完結せず、後ろに否定表現を置くことで初めて機能する点です。これを忘れると意味が反転し、読み手に違和感を与えてしまいます。たとえば「彼は決して諦めた」という誤用は、否定の「ない」を補えば「彼は決して諦めない」と正しくなります。

【例文1】この秘密を決して他言してはならない。

【例文2】私は決してあなたを裏切らない。

「決して」の読み方はなんと読む?

日本語では「決して」と書いて「けっして」と読みます。「けして」と発音されることもありますが、公的な場面では促音「っ」を含む「けっして」が正式表記です。語源や辞書上の見出しも「けっして」ですから、ビジネス文書やレポートでは促音を省略しない方が無難です。

「けっして」と「けして」は発音上ほぼ同じですが、表記の揺れが誤字と誤解される恐れがあるため、統一するのが望ましいです。新聞・行政文書・学術論文では「決して(けっして)」に統一されており、公的基準になっています。国語審議会や文化審議会の指針でも促音の省略は推奨されていません。

なお、話し言葉では「けして」と軽く発音しても問題視されることはありません。ビジネス電話やプレゼンなど音声主体の場面では、発音より内容の明確性が重視されるためです。しかし書面では厳格な運用が求められるので、「けっして」と書く習慣をつけると混乱を防げます。

【例文1】この資料は社外へはけっして公開しません。

【例文2】彼はけっして遅刻しないことで有名だ。

「決して」という言葉の使い方や例文を解説!

使い方の基本は「決して+動詞(否定形)」という語順です。否定語が後続しないと意味が完結しないため、文章作成時には必ずセットで確認しましょう。ビジネス・法律・教育など、責任や義務を強調する文脈では「決して」を使うことで禁止や保証のニュアンスを明確にできます。

「決して」は相手に圧力を与えたり、強い決意を示したりするため、慎重に使わないと高圧的に受け取られるリスクがあります。特に目上の人や顧客へ用いる際は、「決してご迷惑をおかけしません」のように丁寧語を合わせることで柔らかさを維持できます。それでもなお強調が過剰だと感じたら、「必ず」「絶対に」など他の副詞に置き換える選択肢も検討しましょう。

例文を通してニュアンスを確認します。

【例文1】当社はお客様の個人情報を決して第三者に提供いたしません。

【例文2】私は決してその約束を忘れないと胸に誓った。

【例文3】雨でも彼は決して練習を休まない。

これらの文は全て「決して+否定形」で構成され、強い意志や禁止の意味が伝わります。肯定形に続けると誤用になるため、校正時には「~ない」「~ぬ」「~まい」が確実に入っているか確認してください。

「決して」という言葉の成り立ちや由来について解説

「決して」の「決」は「決定・決断」などと同系で、「はっきり分ける」「断ち切る」という意味を持ちます。「して」は連用形を接続助詞化したもので、古語「して(為て)」=「…して」の派生と考えられています。つまり「決めてして」→「決して」という流れで、「きっぱり決めて行う」「完全に区切る」という原義が推測されます。

語源的には「決断して行う」ニュアンスが転じ、「断固として~しない」という否定強調副詞へ発展したと見られます。平安末期の文献『方丈記』や鎌倉期の『徒然草』ですでに「けして」の形が見られ、当時は「けっして」より「けして」と表記されました。中世期の和歌や説話では「けして~ず」の語形で使用され、主に仏教説法や道徳的戒めの場面に登場したことから、強い禁戒の語感が培われたと推察されます。

江戸期になると武士の規定や商家の家訓など文書的用例が増加し、明治期には新聞や教科書にも採用されました。この歴史的推移を踏まえると、現代日本語における「決して」の格式高さは長い伝統に裏打ちされたものだと分かります。

「決して」という言葉の歴史

古典作品に遡ると、『源氏物語』には存在せず、平安末期から鎌倉初期にかけて登場し始めたとされます。鎌倉仏教の戒律文書で用いられた事例から、宗教的な影響が語の広がりに寄与したと考えられます。特に臨済宗の公案集『碧巌録』和訳や法語抄で「けして悟りを妨げるなかれ」などの表現が確認できます。

江戸時代には寺子屋の往来物や士農工商の心得帳に頻出しました。幕府の禁令「火気ヲ決シテ持チ込ムヘカラス」のような行政文書からは、禁止表現としての機能が確立していたことが分かります。明治期になると民法・刑法の条文草案で「決シテ」が使われましたが、大正期の文体改革で口語体が進み、現代の運用に近づきました。

戦後の国語改革でも「決して」は旧字体から新字体へ置換された程度で、語形や意味はほぼ不変のまま現在に伝わっています。この安定性は、用法が明確で代替の難しい語であったことを示します。現代ではインターネット上の注意書きや企業のコンプライアンス表明においても重要なキーワードとして健在です。

「決して」の類語・同義語・言い換え表現

「決して」は強い否定を示すため、近い意味を持つ語として「絶対に」「断じて」「決しても」「何があっても」「一切」「万に一つも」などが挙げられます。ただし微妙なニュアンス差があります。

「断じて」はより峻烈で威圧的、「絶対に」は口語的で幅広く使いやすい、といった違いを把握すると表現の幅が広がります。たとえば法令や謝罪文では「断じて」を使うと強硬に響き過ぎる恐れがあるため、「決して」を選ぶと重みと適度な柔らかさを両立できます。逆に日常会話なら「絶対に」の方が自然です。

【例文1】私は絶対に(決して)嘘はつきません。

【例文2】政府は断じてテロを許さない。

また、「一切~ない」「万に一つも~ない」は数量概念と結びつき、客観性を伴う強調になります。文章のトーンや対象読者に合わせて語を選択しましょう。

「決して」の対義語・反対語

「決して」は否定を強める語なので、対義的な発想は「積極的肯定」や「許容」にあります。適切な対義語としては「必ず」「きっと」「進んで」「おそらく」「何となく」など、確実性や柔軟性を示す副詞が候補です。

特に「必ず」は「決して」の否定を外した形で、同じくらいの確実性を肯定方向に示すため対照的な位置にあります。例えば「必ず成功する」⇔「決して失敗しない」と置き換えると、肯定と否定の違いが際立ちます。

【例文1】私は必ず目標を達成します ⇔ 私は決して途中で諦めません。

【例文2】この製品はきっと役に立つ ⇔ この製品は決して無駄になりません。

対義語を理解することで、文章を対照的に構成したり、強調表現を選択したりする際の選択肢が広がります。

「決して」についてよくある誤解と正しい理解

最も多い誤解は「決して」は単独で使えるという思い込みです。前述の通り、否定語を必ず伴わなければ文が成立しません。「決して〜です」など肯定形で終われば真逆の意味になり、読み手を混乱させます。

次に、「決して」は上から目線で失礼だという誤解がありますが、丁寧語や謙譲語を組み合わせれば十分に礼儀正しい表現になります。実際、大手企業のプレスリリースや官公庁の広報資料でも「決してご心配にはおよびません」といった例が見られます。重要なのは文脈に合った語調調整です。

また、「絶対に」と比べてやさしい印象とする人もいれば、かたい印象とみなす人もいます。これは受け手の経験や業界文化によって異なるため、一概に断定できません。文面を確認できる同僚やツールで読みやすさを検証することを推奨します。

【例文1】誤用:この商品は決して安心です。

【例文2】正用:この商品は決して安全性に問題はございません。

「決して」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「決して」は「どんなことがあってもそうはならない」と強い否定を示す副詞。
  • 正式な読み方は「けっして」で、書面では促音を省略しない。
  • 語源は「決めてして」から派生し、中世の戒律文書で否定強調へ発展した。
  • 使用時は必ず否定語を伴い、高圧的にならないよう丁寧語と合わせて活用する。

「決して」は否定強調の中でも格式と汎用性を兼ね備えた便利な語です。書き手の意志の強さを的確に伝えられますが、否定語を忘れると意味が崩壊するため要注意です。また、フォーマルな文章では「けっして」と促音を含めることで誤字と誤解されるリスクを避けられます。

歴史的背景や類語・対義語を理解すると、文脈や相手に応じた柔軟な表現選択が可能になります。読者の心に届く言葉づかいを心掛け、「決して」の力を適切に活かしてみてください。