「定款」という言葉の意味を解説!
定款とは、株式会社や一般社団法人などの組織が、自らの組織形態・目的・業務内容・機関設計などをあらかじめ文章で定め、公的に宣言する「組織の基本規則集」です。定款は会社法・民法などに基づき、法人格を取得するうえで必須の書類であり、いわば組織の「憲法」にあたります。設立時に公証人が認証し、登記申請書類の核となる点が特徴です。
定款は大きく「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の三層から構成されます。絶対的記載事項は目的・商号・本店所在地・設立に関わる出資内容など、法律上必ず記載しなければ無効となる項目です。
相対的記載事項は、「株式譲渡制限」や「役員の任期短縮」など、法律で「定めがなければ法律の一般規定に従う」とされる内容を独自に調整する部分です。任意的記載事項は「事業年度」や「公告方法」のように、法律上は自由に定められる補足規定を指します。
定款は設立後にも、「株主総会の特別決議」を経て変更可能です。事業拡大で目的を追加したり、本店移転を行ったりする際に修正されるケースが一般的です。
定款が正しく整備されていないと、登記申請の却下や税務上の不利益、さらに組織内の意思決定が無効となるリスクが生じます。そのため専門家である司法書士や行政書士に作成・チェックを依頼する企業も多いです。
「定款」の読み方はなんと読む?
「定款」は「ていかん」と読み、音読みのみで構成される漢熟語です。「ていけん」や「じょうかん」と誤読されやすいので注意しましょう。
「定」は「決める」「確定する」の意味、「款」は「条文」「項目」の意を持ちます。「款」を日常で見かける機会が少ないため、読みが定着しにくいといわれます。
ビジネス文書では「定款(Articles of Incorporation)」と英語訳が付記されることもありますが、読み方は日本語で「ていかん」に統一されます。電話応対や会議で口頭説明するとき、正確に読めるかどうかで専門知識を測られる場面もあるため、発音に不安がある場合は練習すると安心です。
株主総会や取締役会の議事録上でも「定款」の読み誤り・誤記はケアレスミスとして指摘されることがあります。社内外の信用を保つ意味でも、正しい読みと漢字表記を覚えておくと便利です。
「定款」という言葉の使い方や例文を解説!
定款は法律・会計・税務など幅広い文脈で用いられます。使用シーンは「設立」「変更」「保存・閲覧」などが代表的です。
【例文1】株式会社設立時、公証役場で定款の認証手続きを行った
【例文2】事業拡大に伴い、定款の目的条項を追加した。
【例文3】定款に定めた公告方法に従って官報に掲載した。
【例文4】株主はいつでも本店で定款を閲覧できる。
実務では「定款に基づき」「定款の規定により」「定款を変更する」など、助詞「に」「の」「を」と結び付きやすい点が特徴です。また、敬語表現としては「定款をご確認ください」「定款を添付いたします」などがよく使われます。
契約書や議事録と混同しないよう、「定款=設立時に作成し、その後も組織運営を方向付ける根本規程」と意識して使うことが大切です。
「定款」という言葉の成り立ちや由来について解説
「定款」は漢字二字で構成され、どちらも中国古典に由来します。「定」は『礼記』などで「定まる」の意で使われ、「款」は『周礼』などで「条文」「誠実」を示す言葉として登場します。日本では明治初期、西洋法制を翻訳する過程で「Articles」を「款」に当て、基本規程を「定款」と訳したのが始まりとされます。
江戸期の藩法や寺社の什則にも似た概念が存在しましたが、近代法の用語としては明治民法草案から正式に採用されました。当時の官僚・学者が欧州法の会社章程を参照し、「定款」という造語を作り上げた経緯があります。
「款」の字は「緩やか」「誠実な心」のニュアンスも帯びるため、「条文を誠実に守る」という意味合いも重ねられました。現代でも条約批准時に用いられる「条・項・号・款」という階層表現に痕跡が見られます。
こうした歴史的背景から、「定款」は単なる書面ではなく「組織運営の精神」を表す言葉として根強く使われているのです。
「定款」という言葉の歴史
明治32年に商法が施行され、株式会社制度が本格導入されると同時に「定款」の概念が一般に広まりました。当時は紙への割印・封緘が義務付けられ、重厚な書式で作成されていました。
大正11年の商法改正では、株式譲渡制限などの規定を定款に盛り込む流れが整備され、第二次世界大戦後はGHQの影響で企業統治改革が進み、取締役会や監査役の設置要件が定款に直接反映されました。
平成18年(2006年)の会社法施行により、電子定款の作成が認められ、印紙代4万円の節約が可能になったことは大きな転換点です。以降、PDF化・クラウド保存が一般化し、テレワーク時代のニーズにも対応しています。
近年ではSDGsやESGの視点から、定款に「サステナブル経営」「社会貢献」を明記する企業が増加中です。歴史を通じて、社会情勢や技術革新に合わせて進化してきた点が「定款」の特色といえます。
「定款」の類語・同義語・言い換え表現
「定款」と近い意味をもつ言葉としては「章程」「規約」「規程」「憲章」「定例」などが挙げられます。ただし完全な同義ではなく、用途や法的効力が異なる点に注意が必要です。
たとえば「規約」は組合員や会員間の合意事項を示し、「憲章」は理念的・宣言的な文書を指す場合が多く、会社法上の強制力をもつ「定款」とは区別されます。
「章程」は銀行法で用いられた歴史用語で、現代では学校法人や宗教法人の内部規程を示すこともあります。「規程」は社内ルール全般を指す汎用語で、就業規則や出張旅費規程のように細部を定める際に登場します。
言い換えの際には、「法的な根拠」「変更手続きの難易度」「対象組織の範囲」を意識して選択すると誤解を防げます。
「定款」と関連する言葉・専門用語
定款と密接に関わる専門用語として「認証」「登記」「発起人」「株主総会」「特別決議」「公告」「機関設計」があります。
「認証」は公証人が定款内容を確認し、公文書化する手続きです。「登記」は法務局に定款を添付して法人情報を登録する作業を指します。
「発起人」は設立時に定款を作成・署名し出資を行う中心人物であり、出資比率や責任範囲が定款に記載されます。「特別決議」は株主総会で議決権の3分の2以上を要する重要決議で、定款変更時に求められます。
そのほか「機関設計」は取締役会・監査役などの設置パターンを決定する概念で、定款に明示することで会社ガバナンスの骨格が定まります。各用語の理解が深まると、定款を読み解く力が飛躍的に向上します。
「定款」についてよくある誤解と正しい理解
第一の誤解は「定款は一度作ったら変えられない」というものです。実際には株主総会の特別決議を経れば、目的変更や機関設計の再構築も可能です。
第二の誤解は「定款は専門家しか読めない」というイメージです。近年は条文番号・見出し付きの分かりやすいレイアウトが推奨され、非専門家でも理解しやすくなっています。
第三の誤解は「定款には細かい社内ルールを全て書く必要がある」という点で、実務上は骨格のみ記載し、細部は社内規程に委ねるのが一般的です。過度に詳細を盛り込むと変更のたびに特別決議が必要になり、運営の柔軟性が低下します。
最後に「電子定款は紙定款より法的効力が弱い」と誤解されがちですが、会社法は両者に同等の効力を認めています。電子署名・タイムスタンプが付与されていれば、改ざん防止も紙より優れている場合があります。
これらの誤解を解消し、定款を正しく位置付けることで、組織運営の透明性と機動力が向上します。
「定款」という言葉についてまとめ
- 定款は組織の基本規則を定めた公的文書で「会社の憲法」と呼ばれる。
- 読み方は「ていかん」で、誤読が多いので注意が必要。
- 明治期の西洋法翻訳を起点に生まれ、会社法改正ごとに進化してきた。
- 電子化や柔軟な変更手続きを活用し、現代のガバナンスに対応することが重要。
定款は法律で義務付けられる「組織の憲法」であり、目的・名称・所在地・機関設計など、会社の骨格を形づくる最重要文書です。読み方は「ていかん」で統一され、正確な表記と理解が信用を支えます。
歴史的には明治の商法施行から始まり、戦後改革や電子定款の導入など、社会変化に合わせて役割を拡大してきました。近年はサステナビリティ方針やDX推進を定款に盛り込む企業も現れ、内容はますます多様化しています。
今後も事業環境の変化に応じて定款を見直し、柔軟かつ適正なガバナンス体制を維持することが、あらゆる組織に求められる姿勢といえるでしょう。