「自他共に」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「自他共に」という言葉の意味を解説!

「自他共に」とは「自分も他人もそろって」という意味で、評価や認識が本人だけでなく周囲からも一致している状態を指す副詞的表現です。この語は「自分」と「他人」という対立する主体を並列し、両者が同じ立場で同じ判断に達していることを強調します。肯定的な評価を示すことが多く、「自他共に認める努力家」のように使われます。裏を返せば、自己評価と第三者評価のギャップが小さい、または無いことを示唆するため、客観性を帯びたニュアンスが生まれます。

「自他共に」は日常会話ではやや改まった響きがあり、ビジネス文書や式典のスピーチでも違和感なく使用できます。一方でカジュアルな場面では「みんなが認める」と置き換えられることも多いです。

【例文1】自他共に認める読書家のおかげで、部署内の勉強会が活性化した。

【例文2】彼は自他共に見ても計画性に優れている。

ビジネスの自己紹介で「自他共に~と評価されます」と述べると、謙遜と自信のバランスを取りつつ客観性を示す効果があります。ただし根拠となる具体例を続けなければ独りよがりな印象を与える点に注意が必要です。

要するに「自他共に」は“本人も周囲も同意している”という二重の保証を言葉の内部に含んでいる点が最大の特徴です。そのため好ましい特性を説明する際に用いれば説得力が増し、逆にネガティブな内容に添えると重みを強調する副詞となります。

「自他共に」の読み方はなんと読む?

「自他共に」は一般に「じたともに」と読みます。四字熟語ではなく、助詞を含まない熟語風の表記ゆえ、読みが浸透していない例もあります。「じたともに」を正しく読めないと文章の意味を取り違える恐れがあるため、まず読み方を押さえることが肝要です。

漢字それぞれは「自=じ」「他=た」「共=とも」と音読みし、「に」は送り仮名に相当する助詞として機能します。結果として全体は音読みに送り仮名を加えた形になります。

【例文1】彼は自他共に(じたともに)認める技術者だ。

【例文2】新社長は自他共に(じたともに)驚くほど行動が早い。

日常会話で「じたともに」を使う際、耳慣れない人のために一度だけ言い換えを添えると誤解を防げます。

活字文化では読み仮名が振られないことも多く、特に小説や新聞で初めて遭遇する人は「じたきょうに」と誤読しがちなので注意しましょう。辞書や国語資料でも「じたともに」以外の読みは示されていません。

「自他共に」という言葉の使い方や例文を解説!

「自他共に」は形容詞や動詞の連体修飾語として用い、「自他共に認める」「自他共に驚く」「自他共に称賛する」などの形が基本パターンです。後続語は評価動詞・心理動詞が多く、肯定的文脈が中心ながら状況次第で否定的ニュアンスも表せます。

例えば履歴書やエントリーシートでは「自他共に認める協調性」が定番表現です。説得力を持たせるため、具体的な行動や成果を次の文で補足すると良いでしょう。

【例文1】自他共に認める負けず嫌いで、目標は必ず達成してきました。

【例文2】この街は自他共に羨む自然環境に恵まれている。

ビジネスメールにおいては「自他共に」と硬い表現を使うことで文章を引き締める効果が期待できます。ただし過度に多用するとくどく感じられるため、要所に留める工夫も大切です。

注意点としては、自己評価と他者評価が実際にかけ離れている場合に「自他共に」を使うと誇張表現と取られ、信頼感を損ねるリスクがあることです。使用時は客観的根拠を示せるかどうかを確認しましょう。

「自他共に」という言葉の成り立ちや由来について解説

語源は漢文訓読に由来し、「自」と「他」を対句として並べ「共に」を加えることで主体の包含を示す古典的構文から派生したと考えられます。平安~鎌倉期に成立した仏教経典の訓読文に「自他共生」や「自他不二」など類似表現が登場しており、それらが近世以降に世俗の文章へ広がりました。

禅僧の語録や和歌では「自他共」として句を切る例もあり、江戸時代の儒学者が論文で「自他共に悦ぶ」と記した記録が見つかります。やがて明治期に新聞記事が「自他共に驚嘆す」と用い、常用語として定着しました。

【例文1】古写本に「自他共に信ずる道」とある。

【例文2】幕末の志士は「自他共に許す剛胆」と評された。

つまり「自他共に」は仏教思想の“自他不二”を背景に、主体と客体の分断を否定する倫理観を表す語として結晶したと見る説が有力です。現代では宗教色が薄れ、純粋に評価一致を示す副詞として使用されています。

「自他共に」という言葉の歴史

室町期の禅林文献に端を発し、江戸中期の儒学書で定型化、明治の新聞で普及、大正期に国定教科書へ採録されたことで全国的に認知された経緯があります。特に明治33年の『報知新聞』紙面で「自他共に歎息す」と掲載された記事はデジタルアーカイブに残る最古級の用例として確認できます。

昭和期には政治家の演説で頻繁に登場し、「自他共に許す人格者」という決まり文句が生まれました。平成以降は就職活動や自己PRのテンプレートに採用され、ビジネスシーンでの使用が定番化しています。

【例文1】戦後復興を支えた技術者は自他共に尊敬された。

【例文2】平成の流行語調査では「自他共に」が安定して用例上位に位置した。

歴史的推移を追うと、宗教語から学術語、そして一般語へという三段階の変遷をたどったことがわかります。時代ごとに使用領域は拡大しつつも、「評価の一致」という核となる意味は一貫して保持されています。

「自他共に」の類語・同義語・言い換え表現

類語には「万人が認める」「誰もが知る」「公然の事実」「定評のある」など、本人と第三者の評価の一致を示す語が挙げられます。いずれも客観性を付与する効果がありますが、微妙なニュアンスの差に注意が必要です。

たとえば「万人が認める」は評価対象が極めて広範であり統計的裏付けを連想させます。一方「公然の事実」は既に周知で議論の余地が無い状態を強調します。

【例文1】万人が認める快挙。

【例文2】公然の事実となった功績。

対照的に「定評のある」は長期的かつ専門的評価を強め、学術・技術分野で好まれます。また「誰もが知る」はカジュアルな文脈に適します。

言い換えを選ぶ際は、評価範囲の広さと形式度合いのバランスを考慮すると表現の精度が向上します。「自他共に」が硬い印象を与える場合は「みんなが認める」へ差し替えると柔らかくなります。

「自他共に」についてよくある誤解と正しい理解

最も多い誤解は「自他共に=多くの人」という意味だけで、自己評価を含まないと思い込むケースですが、実際は“本人も”が必ず含まれます。この点を取り違えると、第三者評価のみに依存した文章になり、本来の言外のニュアンスが失われます。

次に「自他共に」はポジティブな文脈にしか使えないとされる誤解があります。否定的文脈でも成立し、「自他共に認める失敗例」のように用いれば問題ありません。ただしネガティブ要素を強調する結果となるため、慎重に選択する必要があります。

【例文1】自他共に認める準備不足が露呈した。

【例文2】自他共に避けたい最悪のケース。

また「自他共に」を自己紹介で多用すると自己顕示的に映るとの誤解もありますが、適切に根拠を添えればむしろ信頼感を高める表現です。要は濫用せず、実績との整合性を示すことがポイントです。

「自他共に」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「自他共に」は本人と他者が一致して評価・認識している状態を表す副詞的表現。
  • 読み方は「じたともに」で、四字熟語ではない点が特徴。
  • 仏教語「自他不二」に淵源を持ち、近世以降の文献で一般語化した歴史を持つ。
  • 使用時は自己評価と他者評価の一致を示す根拠を添えると信頼性が高まる。

「自他共に」は評価の一致を強調する便利な言葉ですが、自己評価だけが先行してしまうと説得力が落ちます。使用する際は、第三者からの具体的な証拠や客観的データを合わせて提示すると文章全体の信頼度が向上します。

また、読み手によっては漢字の連なりが難しく感じられるため、初出時にふりがなや簡単な言い換えを補足すると親切です。歴史的背景を押さえつつ適切な場面で活用し、あなた自身の言葉の引き出しを一段と深めてみてください。