「取り組まれる」の読み方と意味
「取り組まれる」は「とりくまれる」と読みます。
「取り組む」自体に特別な当て字や複数の読み方はなく、「とりくまれる」という一つの読み方だけを覚えておけば十分です。
動詞「取り組む」が形を変えたもので、何らかの物事や課題に対して、人や組織が真剣に向き合っている様子を表します。
向き合う対象は、個人の勉強や仕事のような身近な課題から、企業の経営課題や社会全体の問題といった大きなテーマまで、規模を問わず幅広く使うことができます。
基本的な意味は受身で、ある課題や問題が誰かによって対応・対処されることを指します。
ここで大切なのは、ただ課題が「ある」という状態ではなく、誰かの手によって継続的に対応が進められている、という動きのあるニュアンスを含んでいる点で、完了形ではなく進行中の取り組みを表すことが多い言葉です。
たとえば、ある課題に向けて誰かが対応を進めている状況を指して使われる言葉です。
「課題」「問題」「テーマ」「プロジェクト」といった、対応すべき対象を表す名詞とセットで使われることが多く、単独で人の動作だけを説明する場面では使われにくい言葉です。
文法的には、「取り組む」という五段活用動詞に、助動詞「れる」が付いてできた形だと位置づけられます。
動詞の未然形である「取り組ま」に「れる」が続くという、他の五段動詞にも共通する標準的な活用のルールに従っており、特別な変化や例外的な接続はありません。
「取り組まれる」は受身と尊敬語のどちらになるのか
「取り組まれる」の「れる」には、受身と尊敬という二つの異なる使い方があります。
どちらも同じ「れる」という形をとるため、活用のうえで見分ける手がかりが一切なく、文脈や敬語表現の有無などから判断するしかありません。
そのため、同じ「取り組まれる」という形でも、文脈によって伝わる意味がまったく変わってきます。
文章の一部だけを切り取って読むと、受身と尊敬のどちらなのかを取り違えてしまい、意味を正反対に近い形で誤解することもあります。
見分ける一番のポイントは、文の主語が「人」なのか「物事」なのかを確認することです。
主語を特定できれば、あとはその主語が尊敬の対象になる人物かどうかを考えるだけで、意味はおのずと絞られていきます。
主語が課題やテーマといった物事であれば受身、主語が目上の人物や組織の代表者であれば尊敬の可能性が高くなります。
政策や施策、研究テーマなど抽象的な物事を主語にした文章であれば受身、社長や先生、お客様のように敬うべき特定の人物を主語にした文章であれば尊敬だと判断して、まず大きな間違いはありません。
ただし主語が省略された文章では判断が難しく、ニュース記事などでは誤解を招くケースも少なくありません。
特に見出しや箇条書きのように主語が省略された文章では、前後の文脈や、文章全体の敬語レベルを確認しなければ、受身か尊敬かを正しく判断できないことがあります。
「取り組まれる」の成り立ち・由来
「取り組まれる」のもとになる「取り組む」は、「取る」と「組む」という二つの動詞が組み合わさってできた言葉です。
「取る」には捉える、「組む」には相手と体を組み合わせるという意味があり、二つの動詞が結びつくことで、単独の動詞にはない独自の意味を作り出しています。
もともとは相手と組み合って争うような、身体的に深く関わる行為を指していたと言われています。
相撲や格闘技のように、相手と直接組み合って力を競い合う場面を思い浮かべると、もとになった意味合いがイメージしやすくなります。
相撲で対戦相手の組み合わせを「取組」と呼ぶのも、この「取り組む」と同じ由来を持つと考えられています。
「取組」は対戦の組み合わせそのものを指す名詞として使われる一方、「取り組む」は動詞として、課題や仕事に真剣に向き合う意味へと役割を広げていきました。
そこから意味が広がり、課題や仕事に真剣に向き合う様子を表すようになったとされています。
身体を使って相手と組み合うという具体的な行為から、精神的・抽象的な対象に力を注ぐという比喩的な意味へと、少しずつ使われ方が変化し、今の形に落ち着いていったようです。
この「取り組む」に、受身や尊敬を表す助動詞「れる」が付くことで、「取り組まれる」という形が作られています。
語そのものの由来は古くても、「れる」が付いた「取り組まれる」という形は、現代のニュースや文書でも非常によく使われています。
「取り組まれる」と「取り組む」はどう違うのか
「取り組む」は、行動する人自身を主語にした能動的な表現です。
誰が、何に対して、どのように向き合っているのかが、主語を省略しない限り、文章の中でとてもはっきりと伝わる言い方です。
一方「取り組まれる」は、受身であれば課題や物事を主語にし、尊敬であれば行動する人を立てた表現になります。
同じ出来事を描いていても、能動の「取り組む」と、受身・尊敬の「取り組まれる」のどちらを選ぶかによって、文章全体の印象や、読み手との距離感まで変わってきます。
両者の最大の違いは、文の視点がどちらに置かれているかという点にあります。
「取り組む」は行動する人自身の視点に立ち、「取り組まれる」は物事そのものの状態や、行動する相手を立てる視点に立っていると言えます。
「取り組む」では動作主をはっきり示すのに対し、「取り組まれる」では動作主があいまいになったり、あえて省略されたりします。
誰が行ったのかをぼかしたいときや、特定の個人を目立たせずに物事の経過だけを説明したいときなど、客観性を保ちたい場面で、この視点の違いが役立ちます。
誰が行ったかを明確に伝えたいときは「取り組む」を、物事を客観的に述べたいときや相手への敬意を示したいときは「取り組まれる」を選ぶとよいでしょう。
書き手が置かれた立場や、読み手に与えたい印象、さらには相手との上下関係に応じて、この二つの形を意識的に使い分けることが大切です。
「取り組まれる」が使われる場面・文脈
「取り組まれる」は、日常会話よりも書き言葉で目にすることが多い表現です。
かしこまった響きのある言葉なので、友人同士の会話や普段の雑談で使うと、かえって不自然に聞こえてしまうことがあります。
特にニュース記事や行政・自治体が発表する公的文書では、政策や施策の説明によく使われています。
誰が主導しているかを前面に出すよりも、どのような課題にどう対応しているかを客観的に伝えたい場面、たとえば施策の進捗を説明する場面などで、重宝される表現です。
客観的で硬い印象を与えられるため、公的な文章と非常に相性がよい言葉です。
書き手個人の感情や主観を抑えて、事実や経過を淡々と、かつ丁寧に伝えたいときに、自然と選ばれやすくなる表現です。
ビジネスメールでは、上司や取引先など目上の人の行動を敬って伝えたいときに、尊敬語として使われます。
直接的な言い方を避けて、相手の行動をやわらかく、かつ礼儀正しく伝えたい場面でも重宝されており、取引先への報告メールなどでも違和感なく使うことができます。
学術論文や調査報告書でも、研究者が取り上げた研究テーマを説明する場面でよく見られます。
先行研究の積み重ねを振り返りながら、これまでどのような研究が進められてきたかを客観的に説明する場面でも使われ、感情を交えずに淡々と記述する論文調の文体によく合う表現です。
「取り組まれる」の例文
- 【例文1】地域の防災対策は、住民との協力のもとで取り組まれています
- 【例文2】この研究テーマは、十年以上にわたって取り組まれてきました
- 【例文3】社長は社員の働きやすさの改善に、自ら熱心に取り組まれています
- 【例文4】先生は長年、方言の研究に取り組まれてきました
- 【例文5】市では、空き家問題の解消に向けた施策が今後取り組まれる予定です
例文1と例文2は受身の使い方で、課題や研究テーマを主語にして、それに向けた対応や努力が今も進められている、という様子を伝えています。
どちらの例文も、行動している人物をあえて示さず、物事がどのように進んでいるかという経過そのものに焦点を当てているのが特徴で、担当者が誰であるかを明示する必要のない場面に向いています。
例文3と例文4は尊敬語としての使い方で、社長や先生など目上の人物の行動を立てながら述べる、敬意のこもった形になっています。
身近な人や後輩を主語にして同じ言い方をすると、敬意が強すぎて不自然に響くこともあるため、尊敬語としての「取り組まれる」は、相手との立場や関係性を見極めてから使うことが大切です。
例文5のように、行政や自治体の文書では、これから着手される施策を客観的に説明する際にも使われます。
未来の行動を表す形で使うことで、まだ実現していない施策であっても、決定事項のような落ち着いた客観的な印象を保ったまま読み手に伝えることができます。
「取り組まれる」と似た表現との違い
「取り組まれる」と意味が重なりやすい言葉に、「対応される」「進められる」「扱われる」があります。
ニュースや行政文書、企業の報告書など同じような場面に登場するため、ニュアンスの違いを知らずに使うと誤解を招くこともあります。
「対応される」は、すでに起きたクレームや問い合わせ、トラブルなどにその場その場で手を打つ場面で使われることが多い言葉です。
「取り組まれる」は目先の処理ではなく、課題の解決に向けて根気よく力を注ぎ続ける姿勢を表す点が大きな違いです。
「進められる」は、計画や作業が段取りどおりに前へ進んでいく様子に重点がある言葉で、「工事が進められる」「手続きが進められる」のように手順や進行度を描くときに向いています。
一方「取り組まれる」は、進み具合そのものより、どれだけ真剣に向き合っているかという姿勢に焦点が当たる言葉です。
「扱われる」は、ニュースや会議などで「〜という議題が扱われる」のように話題や対象として取り上げられることを示すだけで、そこに意欲や努力が伴うかどうかは問いません。
「取り組まれる」には、主体的に努力しているという前向きな意味合いが加わる点が「扱われる」との違いです。
このように、出来事が単発か継続的か、処理なのか向き合う姿勢なのかを考えると、三つの言葉を自然に使い分けられるようになります。
文章を書く際は、単発の出来事なのか、時間をかけて向き合っている事柄なのかをまず見極めてから、場面に最もふさわしい一語を選ぶとよいでしょう。
「取り組まれる」を言い換えるとどうなるか
「取り組まれる」は、文章の硬さや場面に応じて、いくつかの言葉に言い換えることができます。
同じ内容を伝える場合でも、言葉を選び直すだけで、文章全体の印象や読み手が受け取る温度感、さらには書き手の立場までぐっと変えることができます。
トラブルや課題への対応に焦点を当てたいときは、「対処される」に言い換えると自然です。
「対処される」は目の前の問題を処理する意味が強く、「取り組まれる」より即時対応のニュアンスが増します。
政策や事業など、組織的に物事を前へ進める文脈では「推進される」がよく使われ、「少子化対策が推進される」「地域活性化が推進される」のように規模の大きな話題でよく見かける言葉です。
社内文書や報告書のように硬い文章では、「取り扱われる」に言い換えると、感情を交えない落ち着いた印象になります。
会話や親しみやすい文章では「頑張って取り組む」「一生懸命取り組んでいる」のように、受身・尊敬語を外した柔らかい言葉を選ぶとよいでしょう。
文章のフォーマル度に合わせて言い換え語を選ぶことで、読み手に伝わる印象が大きく変わります。
迷ったときは、まず「誰が」「何を」しているのか、そしてどのくらい改まった場面なのかを思い出すと、ふさわしい言い換えが見つかりやすくなります。
同じ文章の中でも硬い部分と柔らかい部分で言葉を変えてみると、読み手を飽きさせない、メリハリのあるバランスの良い文章に仕上がります。
「取り組まれる」を使うときに気をつけたいポイント
「取り組まれる」は主語を省略しやすい言葉なので、「地域活性化に取り組まれています」のように使うと、誰が取り組んでいるのか分かりにくくなることがあります。
文章を書くときは「〜委員会が」「〜市が」「〜チームが」のように動作主を明示すると、読み手にぐっと伝わりやすくなります。
「取り組まれる」を尊敬語として使う場合、この言葉だけで十分に敬意を表せるため、さらに「ご」や「〜なさる」を重ねると、かえって不自然な二重敬語になってしまいます。
「ご取り組まれる」「取り組まれなさる」のような言い方は避け、ビジネス文書やあいさつ文でも「取り組まれる」のみを使うのが適切です。
「子育て支援に取り組まれ、推進され、期待されています」のように「れる」「られる」で終わる文がいくつも続くと、文章全体が硬く単調な印象になりやすい点に注意が必要です。
同じ文末が続くときは、「取り組んでいる」「力を入れている」「励んでいる」のような言い方を交ぜると、文章にリズムが生まれます。
特に取引先への案内文や挨拶状など、敬語を使うべき改まった文章では、動作主の明示と言葉のバリエーションの両方を意識すると安心です。
読み返すときは、誰が主語になっているか、そして文末が単調になっていないかを声に出して確認してみるのもおすすめの方法です。
こうした小さな気配りの積み重ねが、誤解のない、読み手にやさしい文章につながっていきます。
「取り組まれる」がよく登場するテーマ・分野
「取り組まれる」は、環境問題や社会課題に関する文章でとてもよく使われる言葉です。
「地域で温暖化対策が取り組まれる」「ごみ減量に向けた活動が取り組まれる」のように、行政や住民団体、NPOなどが社会全体で努力を積み重ねている様子を表すときに重宝します。
行政の政策や自治体の広報、SDGsやCSRに関する報告書でも、「持続可能な開発目標に向けて取り組まれる」のような形で頻繁に見かける表現です。
「〜という目標に向けて取り組まれる」という形は、行政や企業が継続的な姿勢を示し、取引先や住民からの信頼感をアピールしたいときに好んで使われます。
働き方改革や子育て支援、介護といった労働・福祉の制度に関する話題でもよく登場する言葉です。
「多様な人材の活躍に向けた制度づくりが取り組まれている」のように、行政や企業が時間をかけて支援の輪を広げていく様子を、ニュースや求人情報などでも見かけることができます。
このように、個人の一時的な行動よりも、組織や社会全体が関わる規模の大きな話題で選ばれやすい言葉だといえるでしょう。
堅めのテーマで使われることが多いからこそ、場面に合った言葉かどうかを意識して使うことが大切です。
ニュースや新聞、行政の広報誌でこの言葉を見かけたら、どんな分野の話題なのか、誰が担い手なのか、そしてどんな目的を掲げているのかに注目してみると、理解がより深まります。
「取り組まれる」のまとめ
- 「取り組まれる」は「とりくまれる」と読み、「取り組む」が受身または尊敬語になった形です。
- 受身か尊敬語かは、前後の文脈や動作主が誰なのかを手がかりに見分けます。
- 言い換えには「対処される」「推進される」「取り扱われる」など、文章の硬さに応じた選択肢があります。
- 動作主の曖昧さ、二重敬語、多用による文章の硬さには注意が必要です。
「取り組まれる」は「とりくまれる」と読み、「取り組む」という動詞が受身または尊敬語の形に変化した言葉です。
文脈の中で誰が何にどのように向き合っているかを確認し、周りに敬うべき人物がいるかどうかを考えると、受身と尊敬語のどちらの意味で使われているのかが見分けやすくなります。
似た言葉との違いを意識しながら、「対処される」や「推進される」「取り扱われる」などに言い換えると、文章の硬さを自在に調整できます。
動作主を明確にし、二重敬語や「れる」「られる」の多用を避けることが、読みやすい文章を書くための鍵です。
環境問題や行政の政策、労働・福祉といった社会的なテーマでよく使われる言葉なので、正しく使いこなせると文章の説得力や信頼感が増します。
読み方や成り立ち、似た表現との違い、そして言い換えや注意点までしっかり理解しておけば、「取り組まれる」をどんな場面でも自信を持って自然に使い分けられるようになるでしょう。