「従事」とは?意味や例文や読み方や由来について解説!

「従事」という言葉の意味を解説!

「従事」は「決められた仕事や活動にたずさわること」を示す日本語です。主語が「人」である場合は「仕事に従事する」といった形で、職業的・義務的にその行為を行っているニュアンスが含まれます。単に「参加する」「関与する」よりも、もう一歩踏み込んで「責任を持って携わる」イメージが強い点が特徴です。

法律や公的文書では「従事者」という形で使われ、労務に就いている人を指し示すことがあります。「医療従事者」「建設従事者」などのように、特定の業界で働く人々を包摂的に指す際にも用いられます。

「仕事に従事する」「研究に従事する」など、対象は職務・研究・活動の別を問いません。多くの場合、対象と長期的または継続的に関わる状況を前提にします。

日常会話でもビジネスシーンでも使われ、硬すぎる印象はあるものの、書き言葉では定着しています。例えば求人票や履歴書に「○○業務に従事」といった表現が頻繁に登場することから、社会生活における実用性は高いと言えます。

要するに「従事」とは、単なる参加ではなく、責任ある立場で関与し続ける姿勢を示す語だと覚えておくと便利です。

「従事」の読み方はなんと読む?

「従事」は一般に「じゅうじ」と読み、音読みのみで用いられる例が大半です。常用漢字表では訓読みは登録されておらず、音読みが標準読みとなっています。「従」という字は音読みで「ジュウ」、訓読みで「したが(う)」を持ち、「事」は音読みで「ジ」、訓読みで「こと」。音読み同士の熟語なので「ジュウジ」と一気に読めば問題ありません。

「従事する」を「ジュウジする」と読むとやや硬さが目立つため、口頭では自然に「じゅうじする」と柔らかく発音する人が多いです。アクセントは東京式で「ジュ」に強勢を置き、「うじ」は軽く下がるパターンが一般的です。

類似語の「携わる(たずさわる)」と混同しないよう注意しましょう。「携わる」は訓読みで柔らかい言葉ですが、意味に近い点から置き換えられることもしばしばあります。

文章中でひらがな表記にすることも可能ですが、公的資料では漢字表記が推奨されます。「じゅうじ」とひらがなで書くと柔らかく見える一方、正式度は下がるため場面に応じて使い分けてください。

読み方が分からず「しょうじ」と誤読するケースも見られますが、「従」は「ジュウ」「したがう」と読むことを覚えれば誤読を防げます。

「従事」という言葉の使い方や例文を解説!

「従事」は主に「○○に従事する」「従事者」の形で用いられます。対象となる名詞や動名詞を前に置き、その活動に深く携わる意味を伝えます。書面・スピーチいずれでも使えますが、カジュアルな会話ではやや堅苦しく感じられることがあります。

【例文1】医療の最前線に従事する看護師たちは、高い専門知識と倫理観を求められる。

【例文2】彼は大学卒業後、地域振興プロジェクトに従事している。

【例文3】統計データの収集に従事するスタッフは、調査倫理を守らなければならない。

【例文4】長年教育に従事した経験を基に、彼女は独自の指導法を確立した。

敬語表現では「従事いたしております」のように謙譲語「いたす」を添え、より丁寧に示します。名詞化した「従事者」「従事率」という形もよく登場し、公的統計やテクニカルレポートでは不可欠な語彙です。

ポイントは「関わる」だけでなく「職務として携わる」というニュアンスを含めたい場面で選択することにあります。くだけた会話で「バイトに従事している」と言うと多少大仰に響くため、用途に応じて「働いている」と言い換える判断も必要です。

「従事」という言葉の成り立ちや由来について解説

「従事」は漢籍由来の熟語で、古代中国の官僚制度に端を発します。「従」は「従う」「後に付く」という意味が根本にあり、「事」は「つとめ」「仕事」を示す文字です。二字を合わせることで「仕事に従う=仕事の指示に応じる」という構造をもつ熟語が成立しました。

『書経』や『史記』といった先秦〜漢代の古典には、「従事」という語が既に登場しています。当時は上位者の命令の下で職務に就く意味が強調され、現代より上下関係を意識した語感でした。

日本へは奈良時代に漢籍とともに伝来し、律令制下の官職名「従事官」として採用されます。ここでは「太政官に従事する」といった形式で、業務補佐を担う役職を示しました。

中世以降は官吏制度が変化し、語の使用頻度は一時的に減少しますが、明治期に「近代官僚制」を導入する際「従事」「従事員」などが再び公式語彙として採択されました。以降、公文書や法令で安定的に使用され、現代日本語に定着しています。

つまり「従事」は中国古典に端を発し、日本では官職名から一般動詞へと意味が広がった言葉なのです。

「従事」という言葉の歴史

平安時代の文献には「従事」はほぼ見られず、代わりに「仕える」「随う」などが主流でした。鎌倉期・室町期の軍記物や公家日記でも用例は限定的で、主に公的役務を指す専門用語にとどまっていました。

明治政府は西洋の「occupation」「engage」などに対応する語として「従事」を積極的に採用し、法律・統計資料に組み込みました。1893年の「職業統計表」には既に「医師に従事する者」などの記述が見られます。

戦後は高度経済成長に伴い職業分類が細分化され、国勢調査でも「就業者」「従業者」「従事者」の区分が整えられました。このころから一般紙・テレビニュースでも使われる頻度が増し、社会語彙として定着します。

現代ではIT業界やNPO分野など新興領域にも「従事」が適用され、「AI開発に従事する技術者」「福祉活動に従事するボランティア」のように範囲が拡大しました。語の硬さはあるものの、法令・契約書・学術論文では必須用語となっています。

歴史的に見ると、「従事」は官僚語から社会一般語へと用途を広げ、現代日本語で多角的に機能する言葉へと変貌しました。

「従事」の類語・同義語・言い換え表現

「従事」と似た意味をもつ語は多岐にわたります。代表的なものに「携わる」「従業する」「就く」「参画する」「取り組む」などがあります。ニュアンスやフォーマル度が異なるため、文脈に応じた使い分けが大切です。

「携わる」は<主体的に関与する>ニュアンスが強く、柔らかい口語表現として最適です。「就く」は「職に就く」など職位・ポストへの着任を示し、開始点を強調したい場合に向きます。「参画する」は政策や計画立案など共同作業への参加を示し、権限共有を前提にします。

ビジネスメールで「本プロジェクトに従事しております」だと硬すぎると感じたら、「携わっております」と言い換えると印象が和らぎます。逆に契約書面で「携わる」を使うと曖昧さが残るため、「従事する」で明確化することが望ましいです。

言い換えの際は「責任の重さ」「関与の深さ」「正式度」を軸に語を選ぶと誤用を避けられます。

「従事」の対義語・反対語

「従事」の反対概念は「職務や活動から離れる」「関与しない」を示す語が対応します。代表的には「離職」「辞職」「退く」「未就労」「遊休」などが該当します。

たとえば「農業に従事する」の対義的表現は「農業を離れる」「農業を辞める」となり、継続的関与を止めるイメージが強調されます。「非従事者」は統計上「その活動に従事していない人々」を指し、労働市場分析で使用されます。

注意したいのは「従事」自体が状態動詞的に継続を示すことから、対義語はそれを中断・放棄・未経験である状況を示す言葉になる点です。必ずしも一語だけで完全に対義になる語が存在するわけではなく、文脈で補う必要があります。

「従事」の対抗軸は“就業”と“離職”のように、関与の有無・継続が焦点になることを覚えておきましょう。

「従事」が使われる業界・分野

医療・福祉業界では「医療従事者」「介護従事者」が法律・通知文書で頻出します。これらは資格要件や責務を明確化するための法的用語として機能し、健康保険法や介護保険法の条文にも記載されています。

建設・製造業界では「作業従事者」「現場従事者」といった形で労働安全衛生監督の対象を定義します。労災補償や特殊健康診断の実施義務が「従事」を基準に決まるケースも多いです。

研究・教育分野では「研究開発に従事する教員」「実験作業に従事する研究員」といった表現が一般的で、科研費申請書にも使われます。プロジェクト体制図で「従事時間○%」と明示することで、人員の稼働度を示す指標となります。

さらにボランティアや市民活動の領域でも「災害復旧活動に従事するボランティア」のように採用され、営利・非営利を問いません。近年はリモートワークや副業の広がりに伴い、「複数事業に従事するフリーランサー」といった新しい組合せも見られます。

要するに「従事」は労務・教育・医療など幅広い現場で、責任範囲を明確化するキーワードとして不可欠なのです。

「従事」についてよくある誤解と正しい理解

第一の誤解は「従事=就職」だという思い込みです。「就職」は職に就く瞬間を指し、「従事」はその後の継続的活動を含むため完全に同義ではありません。就職後も育児休業で従事していない期間があるなど、概念が重なる部分と異なる部分があります。

次に「従事=正社員」というミスリードです。派遣社員やパートタイマー、ボランティアであっても対象活動に携わっていれば「従事者」と呼べます。雇用形態は問いません。

第三に「従事には上司部下の関係が必須」という誤解があります。語源的には指示系統を含意していたものの、現代ではフリーランスが自己責任で活動していても「従事」と表現できます。

【例文1】アルバイトとして物流業務に従事しているが、正社員登用を目指している。

【例文2】副業で翻訳作業に従事しているため、夜間は連絡が取りにくい。

「従事」は対象活動への関与度合いを示す語であり、雇用形態や上下関係の有無は二次的要素です。誤解を避けるには、文脈で「どの程度」「どの立場」で関わっているか補足するとよいでしょう。

正しくは「責任をもって携わっているかどうか」が「従事」の判断基準になると覚えてください。

「従事」という言葉についてまとめ

まとめ
  • 「従事」は一定の仕事や活動に責任をもって携わることを意味する熟語。
  • 読み方は「じゅうじ」で、主に音読みで表記・使用される。
  • 漢籍由来で奈良時代の官職名に採用された後、明治期以降に一般化した歴史を持つ。
  • 硬めの語なので日常会話では言い換えも検討しつつ、法令や公文書では正確に用いる必要がある。

「従事」は古代中国に端を発し、日本では官職語から社会語へと転じた経緯を持っています。現代では医療・研究・建設など多様な現場で、関与の深さや責任を明確にする目的で使われています。

読みは「じゅうじ」と覚えれば誤読の心配はほぼありませんが、硬い印象を与えるためカジュアルな場面では「携わる」「働く」などの類語と使い分けると伝わりやすくなります。語源や歴史、類義・対義語を押さえておけば、ビジネス文章や学術レポートでも迷わず適切に使用できるはずです。