「掛図」とは?基本的な意味をわかりやすく解説
「掛図」とは、教室や会場などの壁面に掛けて、離れた場所にいる大勢の人にも見えるように示すための、大判サイズの図や表、地図、写真などをまとめた教材や資料のことをいいます。
ひとことで言えば、離れた場所からでも内容がひと目でわかるように、絵や文字を大きく描いて壁に掲げるための道具、それが掛図です。
学校の授業や講演会、博物館の展示といった、大勢の人に向けて同じ情報を一度に伝えたい場面で、口頭の説明を補いながら理解を助ける視覚教材として活用されてきました。
先生や講師が指し示しながら説明することで、聞き手は耳と目の両方から情報を受け取ることができ、内容がより記憶に残りやすくなります。
扱われる題材は幅広く、日本地図や世界地図といった地理のものから、人体のしくみを描いた図、動物や植物の姿を示したイラスト、歴史の出来事を順に並べた年表、さらには工場の設備や機械のしくみを説明する図まで、教科や目的に応じてさまざまな種類が作られています。
一枚の絵のように見えても、実際には授業や説明の中で使うことを前提に文字の大きさや配色まで工夫されており、単なる装飾ではなく実用性を重視した教具である点に注意しておきたいところです。
似たような掲示物でも、季節の飾りつけなど鑑賞を目的としたものとは、作られた意図がまったく異なりますし、掛図には情報の正確さがなにより求められます。
「掛図」の正しい読み方と読み間違いやすいポイント
「掛図」の正しい読み方は「かけず」です。
国語辞典を確認してみても、この読み方以外は載っていないほど、読み方が一つにはっきりと定まっている、迷いようのない言葉だといえます。
「掛図」を見たら読み方に迷う必要はなく、「かけず」以外の読み方はすべて誤りだと考えて差し支えありません。
初めてこの漢字を目にすると、「かけと」や「かけづ」のように読んでしまう方が、社会人になってからでも意外と多く見られる言葉です。
「地図」を「ちず」と読み、「意図」を「いと」と読むというように、似た漢字の読み方に引っ張られてしまうことが、主な原因として考えられます。
これは「掛」を訓読みの「かけ」で読み、「図」を音読みの「ず」で読むという、訓読みと音読みを組み合わせた熟語だからです。
地図や設計図のように「図」を「ず」と読む言葉は多いものの、組み合わせ方によって印象が変わるため、どちらか一方の読み方に引きずられると誤読が起こりやすくなるのです。
文章の中でこの言葉を見かけたときは、自己流で読み進めずに、まず「かけず」と声に出して確認する習慣をつけておくと安心です。
友人や同僚に説明するときも、この読み方さえ覚えておけば恥をかく心配はありませんし、正しく読めるだけで言葉への理解もぐっと深まります。
「掛図」の語源・由来
「掛図」という言葉は、壁などに「掛ける」という動作と、絵や図表を意味する「図」という、二つの言葉が組み合わさってできた熟語です。
それぞれの意味をつなげるだけで、道具の姿がそのまま思い浮かぶ、とてもわかりやすい成り立ちをしており、難しい漢字の知識がなくても理解しやすい熟語です。
壁に掛けて、見る人に向かって示すという使い方そのものが、「掛図」という名前の由来になっているのです。
「掛ける」は本来、物を壁や柱などに垂らして飾ったり、人目につくところに示したりする動作を指す言葉です。
「図」は絵や図表、地図などをまとめて指す言葉で、この二つが合わさることで「掛けて示すための図」という意味がそのまま名前に表れています。
日本には古くから、掛け軸のように部屋に掛けて鑑賞したり、季節の行事に合わせて掛け替えたりする、「掛ける」ことを前提にした表具の文化が根づいています。
掛図もそうした「掛ける」道具の系譜に連なる存在のひとつだと言われており、日本人にとって掲げて示すという行為はなじみ深いものだったのでしょう。
絵そのものを指す名前ではなく、「掛けて使う」という使い方に注目して名付けられているところに、実用性を重んじる道具らしい、機能に忠実な命名のセンスがうかがえます。
掛け軸から実用的な教材へと、使われる場面は変わっても、「掛けて見せる」という発想は今も受け継がれています。
「掛図」が広まった歴史的背景
「掛図」が日本で広く使われるようになったのは、明治五年に学制が公布され、欧米にならった近代的な学校教育のしくみが全国につくられていったことがきっかけだと言われています。
当時の文部省も、地理や博物、理科などの授業で使う掛図の作成に力を入れ、全国の学校に配布していたようです。
掛図は、黒板や教科書と並んで、近代日本の学校教育の土台を支え続けてきた、なくてはならない教具のひとつだったのです。
当時は一度に大勢の子どもへ同じ内容を教える必要があり、黒板の文字や口頭の説明だけでは伝えきれない地図や図解を、大きな掛図にして示すことがとても重宝されました。
地理や理科、歴史といった教科ごとに専用の掛図が作られ、黒板や教科書とあわせて、全国の教室で日常的に使われていたそうです。
しかし昭和の後半になると、OHPやスライド映写機、さらにはビデオ教材といった視聴覚機器が学校に普及し始め、掛図に頼らなくても図や写真を大きく映し出せるようになっていきました。
近年では電子黒板やプロジェクターの導入も進み、紙の掛図を教室で目にする機会はさらに少なくなっています。
とはいえ、電源や機材を必要とせず、掛けるだけですぐに使える手軽さから、今も掛図ならではの良さを見直す動きがあると言われています。
「掛図」にはどんな種類があるか
「掛図」には、扱う分野や用途によって、いくつかの種類があります。
代表的なものとしては、地図を描いた地図掛図、人体のしくみや動植物を図解した理科掛図、歴史の流れをまとめた歴史年表掛図などが挙げられます。
- 地図掛図(日本地図・世界地図・都道府県地図など)
- 理科掛図(人体図・動植物図・天体図など)
- 歴史年表掛図(日本史・世界史など)
同じ掛図でも、日々の授業で説明のために使う学習指導用と、館内や会場に掲げておくための展示・掲示用とでは、想定される見る人の数や求められる役割が大きく異なります。
学習指導用の掛図は、教室の一番後ろの席からでも見えるように文字や絵を大きく、色分けもはっきりとつけて作られているのが特徴です。
一方の展示・掲示用は、じっくり見てもらうことを想定して、写真や説明文を多めに配置し、来場者が足を止めて読みたくなるような工夫が凝らされたものも多く見られます。
素材や大きさもさまざまで、教室で繰り返し使う掛図には丈夫な布製や厚手の紙製が選ばれる一方、一時的な展示用には比較的薄い紙のものも用いられます。
サイズも黒板いっぱいに広がる大判のものから、机の上で使える小ぶりなものまで、目的に応じて幅広く存在します。
どの掛図を選ぶかによって、遠くからの見やすさやじっくり読ませたい情報量が変わってくるため、使う場所や見る人との距離をよく考えながら、種類や素材を選ぶことが大切です。
「掛図」の使い方・使われる場面
「掛図」は、学校や地域の施設など、さまざまな現場で、説明や案内をわかりやすく伝えるための道具として使われています。
もっとも身近な例は、学校や学習塾の授業で、黒板の横などに掲げて使う場面でしょう。
先生が大きな地図や図表を指し示しながら説明することで、生徒全員が黒板の文字だけでは伝わりにくい情報を、一目で共有できるようになります。
学校以外にも、博物館や資料館、企業の展示会や説明会などで、来場者に向けた案内や解説のために掛図が用いられることがあります。
専門的で複雑な内容であっても、大きな一枚の図を指し示しながら話すことで、聞き手の理解がぐっと深まりますし、話の内容も記憶に残りやすくなります。
防災訓練では避難経路や避難場所を示したり、保健指導では体のしくみや病気の予防法をわかりやすく説明したりするなど、専門的な分野でも掛図はいまなお活用されています。
会議室や工場の掲示板に、作業手順や注意事項、安全確認のポイントなどをまとめた掛図が貼られていることも珍しくありません。
黒板や電子黒板と違って電源を必要とせず、掲げておくだけで情報を伝え続けられる手軽さが、今も掛図が選ばれる理由のひとつになっています。
急な停電時や屋外での説明会など、電気設備に頼れない場面でも、掛図なら変わらず活躍できます。
「掛図」を使った例文
- 【例文1】理科の先生は人体のつくりを説明するため、大きな掛図を黒板の前に掛けた
- 【例文2】保健室の壁には、応急手当の手順をまとめた掛図が今も貼られている
- 【例文3】明治時代の学校では、日本地図の掛図が授業に欠かせない教材だったと言われている
- 【例文4】防災訓練の会場には、避難経路をひと目で確認できる掛図が用意されていた
- 【例文5】電子黒板が当たり前になった今の教室でも、掛図を使い続けている先生は少なくない
例文1と例文2は、教室や保健室といった教育現場で「掛図」がどのように使われているかを表したものです。
掛図は黒板やフックに掛けて、その場にいる全員で同じ絵や図を見ながら学ぶための教具なのです。
例文3は、掛図が明治時代からの学校教育を支えてきた、歴史のある教材であることを踏まえた一文になっています。
黒板がまだ十分に普及していなかった時代、掛図は学びを支える重要な道具だったと言われています。
例文4と例文5のように、防災訓練や保健指導の場面、そしてデジタル機器が広まった今の教室でも、掛図はそれぞれの持ち味を生かしながら使われ続けています。
一目で全体を把握できる見やすさこそが、時代が変わっても掛図が選ばれ続ける理由です。
「掛図」と似た言葉との違い
「地図」や「絵図」は地形や事物を描いた情報そのものを指す言葉ですが、「掛図」はそれを大きな一枚の紙に仕立てて、壁や黒板に掛けて使うことまでを前提にした教具を指す言葉です。
たとえば教室で使われる大きな日本地図は、地図としての情報と、掛けて全員に見せるための工夫の両方を兼ね備えていれば、掛図とも呼べるのです。
「掛けて、その場にいる全員に同時に見せる」という使い方までが言葉の意味に含まれている点が、単なる地図や絵図との大きな違いです。
「ポスター」や「パネル」も壁に掲示して使う点は掛図と共通していますが、その多くは商品の宣伝やイベントの告知など、人の目を引いて興味を持たせることを目的に作られています。
たとえば店頭に貼られる新商品のポスターは、内容を教えるためではなく、買ってもらうために作られています。
これに対して掛図は、はじめから授業や研修といった指導の場で使うことを目的に作られた学習教材である点が、ポスターやパネルとは大きく異なります。
例えば運動会のお知らせポスターと、跳び箱の跳び方を順を追って示す体育の掛図とでは、同じ壁に貼られていても、そこに込められた役割がまったく異なります。
「掛け軸」との違いも押さえておきたいところです。
掛け軸が床の間に飾って静かに鑑賞するための美術品であるのに対し、掛図はあくまで学びを助けるための実用的な道具なのです。
現代における「掛図」の役割
近年は電子黒板やスライドを使ったデジタル教材が学校現場に広がり、掛図を使って授業をする機会は少しずつ減ってきました。
ボタンひとつで地図も図表も切り替えられるデジタル教材の登場は、掛図の立ち位置を大きく変えるきっかけになりました。
それでも、掛図への需要がすべてなくなったわけではありません。
防災訓練で使う避難経路図や、保健室に貼られる応急手当の手順図のように、常に同じ場所に掲示しておき、誰もがひと目で確認できるようにしておきたい場面では、今も掛図が選ばれ続けています。
電源がなくても使え、壊れてもすぐ書き足せるという掛図の気軽さは、デジタル教材にはないアナログならではの強みです。
停電や機器トラブルの際にもすぐ使える安心感が、掛図というアナログ教材が見直されている理由のひとつだと言われています。
とっさに指し示しながら説明できる一覧性の高さは、今なお多くの指導者に支持されていると言われています。
教材としての主役の座はデジタル機器に譲りつつも、掛図は現場のすみずみで静かに活躍を続けているのです。
健康教室や地域の講習会、子ども向けの食育イベントなどでも、栄養バランスや体操の手順を示す掛図が今も活用されています。
細かい文字が読みにくい高齢の参加者にとって、大きく掲示できる掛図は今でも頼れる存在だと言えるでしょう。
「掛図」に関するよくある疑問
掛図はどこで購入できますか
学校教材を専門に扱う店舗や、教育用品を取り扱う通販サイトのほか、大型書店の教育コーナーでも購入することができます。
理科の人体図や社会科の日本地図、算数の九九表など、教科や単元にあわせた掛図が数多く販売されています。
サイズが大きく、破れにくい厚手の素材で作られたものほど、価格も高くなる傾向があります。
昭和期に使われていたレトロな掛図は独特の絵柄で人気があり、骨董市やネットオークションを通じて、あえて古いものを探して集める愛好家もいるほどです。
掛図は自分で作ることもできますか
模造紙やホワイトボードシート、あるいは大判の用紙を使えば、家庭や職場でも掛図を手作りすることができます。
伝えたい内容や見る人の年齢に合わせて、文字の大きさや色使いを自由に工夫できる点が、手作り掛図ならではの魅力です。
ラミネート加工を施しておけば、繰り返し使っても傷みにくく、長く使い続けられる掛図に仕上がります。
既存の写真やイラストを使う場合は、著作権に配慮することも忘れてはいけません。
掛図は英語で何と言いますか
掛図は英語で「wall chart」や「hanging chart」、地図であれば「wall map」と表現されることが多いです。
学校や園を紹介する英文サイトでも、教室の壁に掛けられた図表を指してこれらの言葉が使われています。
「掛図」のまとめ
- 「掛図」は「かけず」と読み、地図や図表、写真などを大きな一枚の紙に仕立てて、壁や黒板に掛けて示すことを前提とした教育用の教具である。
- 明治時代以降、学校制度の広まりとともに全国の教室に普及し、長きにわたって黒板とともに授業を支えてきたと言われている。
- 地図・絵図・ポスター・掛け軸とは、掲示して使うことが前提かどうか、指導目的か宣伝や鑑賞目的かといった点で意味合いが異なる言葉である。
- 電子黒板やスライドが主流になった現代でも、防災訓練や保健指導のように、常時掲示しておきたい分野では今なお掛図が活躍している。
ここまで、「掛図」の例文や似た言葉との違い、そして現代における役割まで見てきました。
教育現場から防災の現場まで、掛図は幅広い場所でその存在感を発揮してきた言葉なのです。
「かけず」という読み方と、掛けて使う教具であるという成り立ちさえ押さえておけば、「掛図」という言葉に迷うことはなくなるはずです。
読み方と語源はセットで覚えておくと、記憶に残りやすくなります。
デジタル教材が広がる時代だからこそ、いつでもどこでも掲示できる掛図の使いやすさが、あらためて見直されていくのかもしれません。
次に「掛図」という言葉を見かけたときは、こうした背景も思い出してみてください。