「試みを行う」の読み方
「試みを行う」は「こころみをおこなう」と読みます。
見た目はシンプルでも、読み方には思わぬ落とし穴があります。
この言葉の読み方は「こころみをおこなう」のひと通りだけで、国語辞典を何冊調べてもほかの読み方は出てきません。
たとえば「試みをおこのう」のように後半を読み間違えるケースはあっても、前半の「こころみ」の部分で迷う人はまずいません。
「試み」は動詞「試みる」の連用形がそのまま名詞として独立した訓読みの言葉で、漢字自体は小学校で習う範囲なので、読み間違える心配はあまりないでしょう。
「試」という漢字は「試験」のように音読みされることもありますが、「試み」という訓読みの形になった時点で読み方は一つに定まります。
むしろ油断しやすいのは後半の「行う」のほうで、正しい読み方である「おこなう」ではなく、口癖で「おこのう」と発音してしまう大人が、ニュースの読み上げや会議の場面などで意外と見受けられます。
特にアナウンサーや司会者など人前で話す仕事をしている人ほど、この読み間違いには気を配っているようです。
学校で習った正しい読みのはずでも日々の会話の中で崩れやすいからこそ、文章を声に出すときは「こころみをおこなう」という一本の読み方を意識しておくと安心です。
読み方ひとつで文章全体の印象が変わることもあるので、小さな確認を怠らないようにしたいものです。
「試みを行う」の意味
「試みを行う」とは、結果がどうなるか分からない物事を、実際にやってみることを意味します。
「うまくいくかどうか保証はないけれど、とりあえずやってみる」という姿勢そのものを指す言葉だと考えると分かりやすいでしょう。
成功も失敗もまだ見えていない段階で行動を起こす点が、この言葉の核になっています。
この表現は、名詞の「試み」と動詞の「行う」という二つの言葉が組み合わさって一つの意味を作っている点が特徴で、「試み」という行為そのものを「行う」という動詞で支えている構造になっています。
単独の動詞「試みる」とは語の成り立ちが異なり、名詞を前面に出す言い方だと言えるでしょう。
日常の雑談よりも、報告書や説明文のような書き言葉で使われやすいのも、この表現ならではのニュアンスです。
「〜という試みを行いました」のように、済んだ出来事を淡々と報告する場面で特に馴染みやすい言葉です。
裏を返せば、まだ結果が確定していない取り組みに対して使う言葉なので、すでに成功が分かりきっていることや、日常のありふれた作業には不向きな表現とも言えます。
まだ答えの出ていない物事に挑むときほど、この言葉が持つ本来の意味が生きてくるのです。
「試みを行う」の使い方
「試みを行う」は「〜という試みを行う」「新たな試みを行う」のような形で、前に具体的な内容を添えて使うのが基本のパターンです。
何の試みなのかを言わずに使うと、読み手や聞き手には伝わりにくい表現でもあります。
「初の試みを行う」「独自の試みを行う」のように、形容詞や連体修飾語を挟んで試みの中身を説明する使い方も非常によく見られます。
何を試みているのかが相手に伝わるよう、前置きの言葉とセットで使われることが多いのです。
主語になりやすいのは、企業や研究者、行政機関、あるいは個人など、何らかの目的を持って行動を起こす対象で、組織が主語になるときは特に、取り組みの規模や公共性を感じさせる文になりやすいのが特徴です。
個人が主語のときは、挑戦する姿勢や意欲そのものに焦点が当たりやすくなります。
「試みを行う」をそのまま受け身にした「試みが行われる」も非常によく使われる形で、動作主をぼかしたいときや、出来事そのものに焦点を当てたいときに重宝します。
誰が行ったかよりも、何が行われたかを伝えたい文脈ほど、受け身形がふさわしくなります。
能動形の「試みを行う」は行動の主体をはっきり示したいとき、受け身形の「試みが行われる」は出来事そのものを淡々と伝えたいときと覚えておくと、文章を書く際に迷いにくくなります。
「試みを行う」と「試みる」の違い
「試みを行う」と「試みる」は、どちらも「実際にやってみる」という意味で大きく重なっており、基本的には言い換え可能な関係にあります。
そのため、どちらを使っても意味が通じなくなることはまずありません。
違いがはっきり出るのは意味よりも文体で、「試みを行う」のほうが名詞+「を行う」という形のぶん、硬く客観的な響きを持ちます。
動詞一語でシンプルに言い切る「試みる」に比べて、一歩引いた立場から出来事を描写しているような印象を与えるのです。
この硬さは、レポートやニュース記事のように、書き手が自分の感情を抑えて事実を伝えたい文章では長所として働きます。
一方で、友人との雑談や個人的な日記のような場面では、同じ硬さがどうしても大げさに聞こえてしまうことがあります。
実際、話し言葉では「新しいことを試みる」「ちょっと試みてみよう」のように動詞一語の「試みる」を使うほうが、圧倒的に自然に聞こえます。
「新しいことの試みを行おう」と話しかけられたら、多くの人がどこか硬い印象を受けるはずです。
書くときは「試みを行う」、話すときは「試みる」と大まかに使い分けておくと、文章にも会話にも無理のない表現を選びやすくなりますし、相手や場面に応じた言葉選びの感覚も自然と身についていきます。
「試みを行う」を使った例文
- 【例文1】彼は独学でプログラミングを学ぶという試みを行ったが、三日で挫折した
- 【例文2】当社は来月から在宅勤務の試みを行う予定だ
- 【例文3】市は空き家を活用する試みを行い、一定の成果を上げた
- 【例文4】研究チームは新薬の効果を確かめる試みを行っている
- 【例文5】友人は「今年こそ早起きの試みを行う」と笑いながら話した
- 【例文6】この学校では昨年から、授業にゲームを取り入れる試みを行っている
例文1や例文5のように、個人の行動や友人同士の会話を描写する場面でも「試みを行う」という言葉そのものは文法的に問題なく使えますが、実際の会話でここまで硬い言い方をする人は多くありません。
日常会話なら「今年こそ早起きを試みる」「早起きしてみる」のほうが自然で、「試みを行う」をそのまま話し言葉で使うと、どこか他人行儀な印象になりがちです。
一方で例文2〜4、例文6のようなビジネス文書やニュース記事、研究報告、学校からのお知らせなどでは、「試みを行う」が持つ硬さや客観性がむしろ相性よく働き、組織や専門家による取り組みを淡々と伝える定番の言い回しとして重宝されています。
「試みを行う」の成り立ち・由来
「試みを行う」の成り立ちを考えるうえで欠かせないのが、「試み」という名詞がどこから生まれたのかという点です。
普段何気なく使っている言葉ほど、さかのぼってみると意外な発見があるものです。
「試み」は動詞「試みる」の連用形がそのまま名詞として独立した言葉で、日本語にはこのように動詞の連用形が名詞に転じる例が数多くあります。
「遊び」が「遊ぶ」から、「始まり」が「始まる」から生まれているのと同じ仕組みです。
では「試みる」自体はどこから来た言葉なのかというと、「試す」と「見る」という二つの動詞が組み合わさってできた言葉だと言われています。
何かを「試して」、その結果を「見る」という二段階の行為が一語に凝縮されたのが「試みる」という動詞だと考えると、意味のつながりが見えてきます。
一方の「行う」は、古語の「行ふ(おこなふ)」が時代とともに発音や表記を変えて現在の形になったと言われています。
もともとは神事や公的な儀式を執り行うことを指す、やや改まった言葉だったと考えられています。
「試み」という名詞と、由緒ある「行う」という動詞が組み合わさることで、「試みを行う」は単に「試す」だけでは出せない、どこか格式ばった響きを帯びた表現になったと考えられます。
「試みを行う」の表記・送り仮名の注意点
「試みを行う」は、送り仮名の選び方によって見た目の印象が変わる表現です。
特によく話題になるのが「行う」と「行なう」という表記のゆれです。
戦後に国語の送り仮名の基準が整理され、「な」を送らない「行う」の形が広く定着しました。
この経緯から、現在の公用文や新聞の表記ルールでは「行う」が標準とされています。
例えば報告書や記事では「実験を行う」「調査を行う」のように「行う」でそろえるのが一般的です。
仕事の文書やウェブ記事を書くときは「行う」を使っておくのが安心です。
一方で「行なう」という書き方も古くからの慣用として根強く残っています。
文芸作品や個人のブログなどでは、あえて「行なう」を選ぶ書き手も見かけます。
どちらが間違いというわけではなく、読み手にどんな印象を与えたいかの違いだと考えられています。
ただし同じ文章の中で両方が混在すると、読み手に統一感のなさを感じさせてしまいます。
また「試みを行う」をすべてひらがなで「試みをおこなう」と書く場合もあります。
漢字の硬い印象を避けたいときや、子ども向けの文章ではひらがな表記が選ばれやすいです。
どの表記を選んでも、読みは「こころみをおこなう」のまま変わりません。
文書の種類や読者層に合わせて、表記を使い分けてみてください。
「試みを行う」が使われる場面
「試みを行う」は、くだけた会話よりも改まった文章でよく使われる表現です。
代表的なのが研究や実験のレポートです。
「新しい手法を用いた比較実験の試みを行った」のように、研究の経過を客観的に伝えたいときに選ばれます。
学術的な文章では、気持ちの高まりよりも事実としての行動を淡々と示すのに向いています。
論文や学会発表の要旨などでも、よく目にする言い回しです。
企業のプレスリリースや行政の文書でも頻繁に登場します。
「業務効率化に向けた試みを行いました」のように、取り組みの内容を丁寧に報告する場面です。
自治体の広報誌や事業報告書でも、同じような使われ方をしています。
新聞記事でも「〇〇市が新しい試みを行った」といった見出しで使われることがあります。
硬めの言葉遣いが求められる文書では、「試みを行う」の落ち着いた響きがちょうどよく感じられます。
教育や指導の場面でも見られる表現です。
「生徒の理解を深めるため、新しい授業の試みを行う」のように、取り組みを紹介する文脈で使われます。
先生や指導者が自分の工夫を説明するとき、ほどよい丁寧さを出せる言葉です。
いずれの場面でも、話し言葉というより書き言葉として選ばれやすい点が共通しています。
「試みを行う」の類語・言い換え表現
「試みを行う」には、場面に応じて使える言い換え表現がいくつかあります。
まず「試行する」は、結果を確かめるために実際に行動することを指す言葉です。
実験や検証のように、データや手応えを得ることが目的のときによく使われます。
「試みを行う」よりもやや専門的で、理系の文章との相性がよい言葉です。
一方「挑戦する」は困難なことに立ち向かう気持ちが前面に出る点で、「試みを行う」とは印象が異なります。
例えば「新商品開発に挑戦する」は意欲を感じさせますが、「新商品開発の試みを行う」は淡々とした報告の印象になります。
カタカナ語の「トライする」「チャレンジする」も似た場面で使われる言葉です。
こちらは口語的で、カジュアルな会話やSNSの投稿との相性がよい表現です。
「試みを行う」が書き言葉寄りなのに対し、カタカナ語は話し言葉として自然に使えます。
友人同士の会話で「試みを行った」と言うと、少し他人行儀に聞こえてしまうこともあります。
文章の硬さを調整したいときは、こうした類語を使い分けると便利です。
フォーマルな文書を少し柔らかくしたいなら「取り組む」、もっと軽い印象にしたいなら「やってみる」が候補になります。
同じ内容でも言葉を選び直すだけで、文章全体の雰囲気を調整できます。
読み手や場面を意識しながら、ふさわしい言い換えを選んでみてください。
「試みを行う」を使う際の注意点
「試みを行う」は便利な表現ですが、使い方によっては読みにくくなることがあります。
よくあるのが「試みを行おうとする」のように言葉を重ねてしまうケースです。
「〜しようとする」を付け足すと意味が曖昧になり、文章がもたついた印象になります。
例えば「新しい施策の試みを行おうとする方針です」という文は、「新しい施策を試みる方針です」とする方がすっきりします。
意図を強調したいときは、「試みる」や「試みを計画する」などシンプルな表現に置き換えると読みやすくなります。
一文の中で同じ意味の言葉を重ねていないか、書いたあとに読み返して確認する習慣をつけると安心です。
主語や目的語を省略しすぎると、何についての試みなのかが伝わりにくくなります。
「試みを行いました」とだけ書かれても、読み手は何を試みたのか想像するしかありません。
誰が、何のために、どんな試みを行ったのかを一緒に示すことが大切です。
特に報告書やメールなど、相手が背景を知らない文章ほど説明を省略しないよう気をつけましょう。
また「試みを行う」は書き言葉としての性格が強く、くだけた場面では硬すぎる印象を与えます。
友人との雑談やカジュアルなメッセージで使うと、よそよそしく感じられることがあります。
日常会話では「やってみる」「試してみる」など、柔らかい言葉を選ぶほうが自然です。
文章の目的や相手との距離感に合わせて、表現の硬さを調整してみてください。
「試みを行う」のまとめ
- 「試みを行う」の読みは「こころみをおこなう」です。
- 新しいことを実際にやってみる行動を、丁寧であらたまった言い方で表します。
- 「試みる」は一語でシンプルに伝えられ、「試みを行う」は行動として客観的に示せます。
- 表記は「行う」が標準で、「行なう」「試みをおこなう」という書き方もあります。
ここまで、「試みを行う」の表記や使われる場面、類語との違いなどを見てきました。
読みは「こころみをおこなう」で一貫しており、意味は新しい物事に実際に取り組むことを指します。
由来としては「試みる」という動詞が名詞化し、「行う」と組み合わさって生まれた言い方だと言われています。
研究や仕事の報告など、あらたまった文章で選ばれやすい点も特徴です。
「試みる」は動詞一語で手軽に使え、「試みを行う」は行動そのものを客観的に伝えたいときに向いています。
話し言葉では「試みる」、書き言葉では「試みを行う」というように、場面で選び分けると自然です。
迷ったときは、文章全体の硬さに合わせて言葉を選ぶと失敗が少なくなります。
文章の目的や相手との距離感に応じて、どちらを使うか意識してみてください。
あわせて「試行する」「挑戦する」「取り組む」といった関連語も調べてみると、言葉選びの引き出しが増えます。
似た言葉のニュアンスを比べながら使うことで、より伝わりやすい文章になります。
日々の文章作りに、少しずつ役立ててもらえたらうれしいです。