「広報」という言葉の意味を解説!
「広報」とは、組織や個人が社会・生活者との間で情報を双方向に伝達し、理解と信頼を築くための活動全般を指す言葉です。その範囲はニュースリリースの配布、メディア対応、イベント開催、SNSでの発信など多岐にわたります。広告のように一方的にメッセージを届けるのではなく、相互理解を軸とする点が最大の特徴です。
「広報」は英語の“Public Relations”を訳した概念ですが、現在の日本では単にメディア対応に留まらず、リスクマネジメントやステークホルダー・エンゲージメントの要素も含みます。企業・行政・NPOなど、組織の属性にかかわらず必要とされる普遍的な機能として浸透しています。
広報活動の目的は「伝える」ことではなく「伝わる」こと、さらにいえば「動いてもらう」ことにあります。そのためには、正確でわかりやすい情報の提供だけでなく、相手の関心や生活文脈に合わせたコミュニケーション設計が欠かせません。
誤解されがちですが、広報は「話題づくり」や「宣伝」を単独で行う部署ではありません。経営戦略や組織理念と整合性を取りつつ、社会的課題やステークホルダーの期待を踏まえた長期的な信頼構築を担います。
最後に、広報は“形のない製品”ともいえる業務です。成果が数字で測りにくい側面もありますが、ブランド価値や社会的信用といった無形資産を高める上で不可欠な役割を果たすと言えます。
「広報」の読み方はなんと読む?
「広報」は常用漢字で構成されており、読み方は「こうほう」となります。音読みのみで構成されるため、ビジネス現場でも迷うことは少ないでしょう。
発音のアクセントは「コ↘ー ホ↗ー」と後半をやや上げる傾向がありますが、地域差は小さく全国でほぼ共通しています。漢語としての発音がそのまま定着しているため、方言で大きく変化するケースはほとんど見られません。
「公報(こうほう)」と書くと官報・官報公告を意味する別語になるため注意が必要です。打ち込みミスや変換ミスによる誤表記は、公式文書では信用を損なう恐れがあります。
語源の英語“Public Relations”をそのままPRと略す場面も多くありますが、「社内PR担当」というようにカタカナと組み合わせるケースでは、読み方は「ピーアール」と音読しています。
公的機関の「広報課」や企業の「広報部」など、部署名として使用される際も読み方は変わりません。面接や電話応対の際に略語で済ませるのではなく、正式名称をはっきりと発音することが望ましいです。
「広報」という言葉の使い方や例文を解説!
広報は名詞としても動詞的にも使われますが、ビジネスシーンでは名詞+動詞で表現するケースが多いです。たとえば「広報を担当する」「広報資料を作成する」という形が一般的です。
ポイントは「誰に向けて」「何を伝えるか」を明確にし、内容とターゲットをセットで示すことです。単に「広報しました」では不十分で、メディアリレーションなのか社内コミュニケーションなのかを添えたほうが誤解がありません。
【例文1】プレスリリースを発信し、製品の特徴を広報した。
【例文2】地域住民向けに環境保全活動を広報する。
上記のように目的語を続けると、活動内容がより具体的に伝わります。また「~を広報する」の代わりに「~について広報活動を行う」と言い換えることで、固い印象を和らげることも可能です。
部署名として用いる場合は「広報部が取材対応を行う」「広報課へ確認してください」のように組織単位を示すことが多いです。このとき「PR部」という呼称を併用しても構いませんが、社外文書では正式名称を優先すると丁寧です。
注意点として、「広報活動=広告出稿」と誤解されやすいので、費用が発生するスペース購入は「広告」、信用獲得を目的とした情報発信は「広報」と分けて説明する習慣を身につけましょう。
「広報」という言葉の成り立ちや由来について解説
「広報」という熟語は、1900年代前半に英語の“Publicity”や“Public Relations”を翻訳する際に生まれたとされます。「広」は“広く”を示し、「報」は“報せる”を意味する漢字で、合わせて“広く報せる”という熟語が自然に作られました。
当初は政府が国民へ告知を行う文脈で使用され、軍事情報の伝達や戦時中の国策宣伝にも用いられました。しかし戦後になると「宣伝」という語が持つマイナスイメージから距離を置くため、より中立的な「広報」が定着していきます。
民間企業では1950年代頃から英語のPR部門を訳す際に「宣伝部」から独立し「広報室」「広報部」が設置されるようになりました。これにより、利害関係者との相互理解を重視する新しい概念として浸透しました。
「広く報せる」だけでなく「関係を創る」側面が強調されるようになったのは、1980年代以降のステークホルダー資本主義の流れと歩調を合わせています。社会課題やCSR(企業の社会的責任)の台頭とともに、広報は経営戦略の一翼を担う領域へと拡張されました。
現在ではSNSやオンライン会議システムの普及により、一方的な報道機関依存から脱却し、組織が直接生活者と対話できる時代に突入しています。それに伴い、「広く」と「報せる」の意味合いがさらに多層化していると言えるでしょう。
「広報」という言葉の歴史
日本で「広報」という語が本格的に登場するのは大正末期から昭和初期にかけてです。当時の内閣印刷局が発行していた「官報」や「公報」がルーツで、政府情報の公開手段として機能していました。
1945年の終戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が表現の自由を保障する方針をとり、政府・自治体は「広報」欄を通じて公正な情報提供を促されました。これを機に、広報は「宣伝」と区別されるようになり、中立性・公共性を重視する概念へと変化します。
1950年代、民間企業が「PRオフィス」を設立し、メディアリレーションズを中心とした広報業務を導入しました。1960年代の高度経済成長期には「企業イメージ」という語が流行し、広報はブランド構築の手段として重要視されます。
1990年代のバブル崩壊後は、不祥事対応やリスクコミュニケーションが必須となり、広報が危機管理部門と連携するスタイルが定着しました。2000年代以降はウェブサイト、SNS、動画配信など発信手段が多様化し、双方向コミュニケーションとしての広報が加速しています。
近年ではESG投資やSDGsの広まりを背景に、企業価値を長期的に支える“無形資産”としての役割が強調されています。広報は単に情報を届けることにとどまらず、社会的課題を共有し、共感を生む活動として進化し続けているのです。
「広報」と関連する言葉・専門用語
広報と混同されやすい用語に「広告」「宣伝」「マーケティング」があります。広告は有料メディアに枠を購入して情報を載せる行為、宣伝は商品・サービスを広める行為全般、マーケティングは市場調査から販売までを含む統合プロセスを指します。
専門領域としては「PR」「パブリシティ」「リスクコミュニケーション」「インターナルコミュニケーション」などが挙げられ、いずれも広報活動を構成する重要な要素です。PRはPublic Relationsの略語で双方向性を重視し、パブリシティは報道露出の獲得に焦点を当てます。
「ステークホルダー」は広報の主要対象で、株主・顧客・従業員・地域社会など組織に影響を与えたり受けたりする人々を指す概念です。彼らとの関係づくりが広報の核心となります。
「ウェブPR」や「ソーシャルリスニング」などデジタル領域の専門用語も欠かせません。ウェブPRはオンラインを中心に露出を図る活動で、ソーシャルリスニングはSNS上の言及を分析し、戦略に活かす手法です。
これらの用語を正しく理解し、目的に合わせて使い分けることで、広報活動の幅が広がり、成果の最大化につながります。
「広報」を日常生活で活用する方法
広報は企業だけのものではありません。個人が自分の活動を発信し、周囲に理解を得る行為も広報にあたります。たとえば地域イベントのチラシづくりや、SNSで趣味のワークショップを告知することも立派な広報です。
ポイントは「共感を呼ぶストーリー」と「行動を促す情報」の両方を盛り込むことです。単に日時や場所を伝えるだけでなく、開催の背景や得られるメリットを語ることで、相手の行動を後押しできます。
【例文1】町内の清掃活動を周知するため、SNSで目的と成果を広報した。
【例文2】趣味の写真展を開く際、プレスリリース風の投稿で地域メディアに広報を依頼した。
広報的思考を身につけると、プレゼン資料の説得力が増し、人間関係もスムーズになります。相手が求める情報を先回りして提示する習慣が身につくからです。
注意点として、誇張や虚偽は信頼を一瞬で失わせるため、「正確性」を最優先にしてください。データや事実を裏付ける資料を添付し、質問が来た際は速やかに回答できるよう準備しておくと安心です。
「広報」についてよくある誤解と正しい理解
広報は「メディアに取り上げてもらうだけの仕事」と誤解されがちですが、実際には社内報の制作や危機管理対応など多岐にわたります。メディア露出は手段の一つにすぎません。
また「広報=ポジティブな情報だけを発信する」と思われがちですが、ネガティブ情報も隠さずに伝える姿勢こそ信頼を高める近道です。特に危機時は率直な情報公開が被害の拡大を防ぎます。
【例文1】トラブル発生時に隠蔽せず真摯に広報を実施した結果、逆に評価が上がった。
【例文2】キャンペーンの失敗理由を丁寧に広報資料にまとめ、リカバリーにつなげた。
「広報=コストセンター」というイメージも誤りです。長期的にはブランド価値向上や採用力強化に貢献し、売上や株価に影響を与えるため、投資対効果を測る指標(PR効果測定)も確立されています。
最後に、広報は「担当者のセンス次第」と言われますが、実際には体系的な研究と経験則が蓄積された専門領域です。計画立案、実行、評価というプロセスを科学的に回すことで、再現性の高い成果が生まれます。
「広報」という言葉についてまとめ
- 「広報」は組織や個人が社会と双方向に情報をやり取りし、理解と信頼を築く活動を指す言葉。
- 読み方は「こうほう」で、部署名や業務名として幅広く使われる。
- 明治末期の公報を起源に、戦後PRの訳語として定着し発展した。
- 現代ではデジタル活用やリスク対応が必須で、正確性と双方向性が鍵となる。
広報は「広く報せる」ことから始まりましたが、現在では「関係性を築く」ことが主眼に置かれています。情報の正確性と透明性を担保しながら、社会課題に寄り添う姿勢が信頼を生むのです。
一方的に告知するだけでは十分ではありません。生活者の声を傾聴し、改善に活かすサイクルを回すことで、広報は単なる発信業務から経営戦略の核へと進化します。組織規模や業種を問わず、広報的思考を取り入れることが、持続的な成長と良好な社会関係を実現する鍵となるでしょう。