「含み損」とは何か?意味をわかりやすく解説
「含み損」とは、株式や不動産、投資信託などの資産を保有している状態のまま、現在の評価額が購入したときの取得価格を下回っていることを表す言葉です。
帳簿の上では損失が出ているように見えても、実際にはまだ資産を売らずに手元に残している状態にすぎません。
実際に売却して初めて損失の金額が確定するため、保有を続けている間の「含み損」はあくまで評価上の数字にとどまります。
そのため含み損の大きさは、市場価格が動くたびに日々増えたり減ったりを繰り返します。
資産を売却して損失の金額がはっきりと決まった時点で、その損失は「含み損」ではなく「実現損」という別の言葉で呼ばれるようになります。
投資の世界では、この二つの言葉は意味が異なるものとして明確に区別されています。
たとえば1株1000円で購入した株式が値下がりして800円になった場合、売却せずに持ち続けている間はその差額である200円分が含み損として存在し続けることになります。
不動産や投資信託についても考え方はまったく同じで、評価額が取得価格を下回っている間は、実際に売却するまで損失として確定しない含み損の状態が続きます。
このように「含み損」という言葉は、資産の種類を問わず幅広い場面で使われる基本的な金融用語のひとつです。
「含み損」の読み方は「ふくみそん」か「ふくみぞん」か
「含み損」の読み方には「ふくみそん」と「ふくみぞん」の両方があり、どちらの読み方も実際に広く使われています。
辞書的に見てもこの二つの読みはどちらも誤りではありません。
日本語には後ろにくる語の音が濁る「連濁」という現象があり、「損」が「ぞん」に変化するのもこの連濁のひとつの例です。
複合語になるときに後ろの語の最初の音が濁るのは、日本語によく見られる変化のパターンです。
ただし連濁は必ず起こるわけではなく、同じ「損」という字を含む「損失」のような言葉では濁らずに読まれます。
どの言葉で連濁が起こりやすいかは慣用的に決まっている面が大きく、明確な法則だけで説明しきれるものではないと言われています。
ニュース番組や証券会社による市況の解説などでは、「ふくみそん」と読まれる場面が比較的目立つ印象があります。
金融関係者の間でも「ふくみそん」という読み方を使う人が一定数いるようです。
一方で日常の会話の中では「ふくみぞん」と発音する人も多く見られ、どちらの読み方を使っても相手には意味が正しく伝わります。
読み方に厳密な決まりがあるわけではないため、自分が使いやすいほうを選んで問題ありません。
「含み損」の計算方法をわかりやすく解説
含み損の金額は「取得価格-現在の評価額」という基本の計算式を使えば簡単に求めることができます。
この差額に保有している数量をかければ、含み損の総額を計算できます。
たとえば1株2000円で100株購入した株式が1700円まで値下がりした場合、含み損は合計で3万円になります。
計算式で表すと「(2000円-1700円)×100株」となり、1株あたりの差額である300円に保有株数をかけることで求められます。
複数の銘柄を保有している場合は、銘柄ごとにこの計算を行い、それぞれの結果を合計すれば保有資産全体の含み損がわかります。
証券会社の取引画面やスマートフォンの資産管理アプリには、こうした含み損益がリアルタイムで自動表示される機能が備わっていることがほとんどです。
わざわざ自分で電卓を使って計算しなくても、評価損益を手軽に確認できる仕組みが整っています。
ただし実際に売却する際には売買手数料や税金がかかるため、画面上に表示される含み損の金額と、手元に戻ってくる実際の金額は完全には一致しない点に注意が必要です。
手数料や税金の負担を考えに入れたうえで、実際の損益をイメージする習慣をつけておくとよいでしょう。
「含み損」と「含み益」はどう違う?
「含み益」とは、保有している資産の評価額が取得価格を上回っている状態を指す言葉で、「含み損」とはちょうど正反対の意味を持つ対義語にあたります。
評価額が取得価格より高いか低いかという違いだけで、基本的な考え方は含み損と共通しています。
含み損と含み益は表裏一体の関係にあり、同じ資産であっても市場価格の動き次第でどちらの状態にもなり得ます。
値動きの激しい資産ほど、この二つの状態を短期間のうちに行き来することも珍しくありません。
たとえば値下がりして含み損を抱えていた株式でも、その後に相場が回復して値上がりすれば、含み益に転じることは十分にあり得ます。
逆に含み益が出ていた資産が値下がりし、含み損に変わってしまうケースも日常的に起こります。
含み損を抱えている投資家は不安や焦りを感じやすく、冷静な判断を下しにくくなる傾向があると言われています。
早く損失を取り戻したいという気持ちから、かえって無理な売買をしてしまうこともあります。
一方で含み益が出ている場合は安心感から判断が楽観的に傾くこともあり、含み損・含み益のどちらの状態であっても、心理面への影響を意識しておくことが投資では大切です。
評価額の数字に振り回されすぎないよう、冷静な視点を持ち続けることが求められます。
「含み損」が発生する主な原因とは
含み損が発生する原因はひとつに限らず、いくつかの要因が重なり合って起こることも少なくありません。
原因を整理しておくと、自分が抱える含み損の背景を理解する手がかりになります。
まず挙げられるのが、景気後退や金利上昇といった市場全体の値動きによる下落です。
市場全体が下落する局面では、個々の企業の業績にかかわらず多くの銘柄が同時に値下がりしやすくなります。
次に考えられるのが、業績の悪化や不祥事の発覚といった、個別の銘柄や資産に固有のリスクです。
こうした要因は、市場全体が好調なときでも特定の資産だけが値下がりしてしまう原因になります。
さらに、相場が過熱しているタイミングで高い価格で購入してしまう「高値掴み」も、含み損を生みやすい代表的な原因のひとつとして挙げられます。
冷静な判断ができず、勢いにつられて買ってしまうケースも少なくないようです。
これらの原因は単独で起こることもあれば、複数の要因が同時に重なり合って、より大きな含み損につながることもあります。
日頃からどの要因が自分の資産に影響しているかを意識しておくと安心です。
「含み損」を抱えたときの判断基準と対処法
含み損を抱えたとき、そのまま持ち続けるべきか、それとも売却すべきか悩む人は少なくありません。
市場の値動きを見ながら、どちらの選択が良いか冷静に見極める必要があります。
判断基準のひとつは、その資産を購入した当初の理由や将来性が崩れていないかどうかを見直すことです。
見通しが大きく変わっていないのであれば、慌てて売る必要はないという考え方もできます。
今後の回復が見込めないと判断した場合には、損失を確定させる「損切り」も有効な選択肢のひとつになります。
損失を小さいうちに確定させることで、さらなる値下がりから資産を守ることができます。
売らずに保有し続ける、いわゆる「塩漬け」は、値を戻すのをじっくり待てるという利点がある一方で、資金が長期間拘束されてしまうリスクも抱えています。
こうしたリスクをやわらげる方法として、特定の銘柄や資産に偏らない分散投資や、短期的な値動きに一喜一憂しない長期保有という考え方が役立つと言われています。
自分の資産状況や目標に合わせて、無理のない対処法を選ぶことが何より大切です。
「含み損」と税金・確定申告の関係
株や投資信託などに含み損が出ていても、その資産を実際に売却していない間は、税金の計算にはいっさい関係してきません。
含み損はあくまで時価で評価したときに生じる損失であり、確定申告の対象になるのは売却して損失が実現した場合だけです。
保有している株式や投資信託を売却して損失を確定させた場合には、その年に別の銘柄で得た譲渡益と相殺できる損益通算という仕組みを利用できます。
さらに確定申告を済ませておけば、その年の利益だけでは相殺しきれなかった損失を、翌年以降最大3年間にわたって繰り越して控除できる繰越控除も用意されています。
一方でNISAなど運用益が非課税になる制度の口座で生じた含み損については、注意しておきたい点があります。
売却して損失を確定させても税務上はそもそも存在しないものとして扱われるため、他の課税口座の利益と損益通算したり繰越控除に使ったりすることはできません。
「含み損」の使い方と例文
- 【例文1】このところ株価が下がって含み損がどんどん膨らんできた
- 【例文2】同社が保有する有価証券には多額の含み損が発生していると報じられた
- 【例文3】当四半期末の時点で保有ポジションの含み損はやや縮小した
- 【例文4】現在のポートフォリオには一時的な含み損が生じておりますが長期保有の方針に変更はございません
- 【例文5】含み損を抱えたままその銘柄をずっと塩漬けにしている
- 【例文6】含み損が出ているものの相場が戻るまでしばらく様子を見るつもりだ
日常会話では「含み損が膨らむ」「含み損を抱える」のように、相場の状況や気持ちを添える動詞と組み合わせて使われることが多い表現です。
ニュースや決算情報では、企業が保有する有価証券や不動産の評価損失を説明する際に、ごく一般的な言い回しとして使われています。
投資レポートやビジネスメールで使う場合は「生じております」「発生しております」といった丁寧な言い回しに変化しますが、含み損という言葉が指す意味そのものは日常会話と変わりません。
「含み損」という言葉の由来・成り立ち
「含む」という言葉はもともと、外からは見えないものを内側に持っている、表に出ていないものを内側に抱えているという意味合いを持つ日本語です。
このニュアンスが金融の世界に転用され、まだ売却しておらず確定していないものの、評価上は内側に抱えている損失を指す言葉として使われるようになったと言われています。
証券や会計の実務では、資産を取得したときの価格と現在の時価との差額をつねに把握しておく必要があり、その差額を表すために「含み」という言葉が使われるようになったと言われています。
「含み益」や「含み資産」といった言葉も同じ語構成で、「含み」という言葉に、利益や資産といった対象の言葉を組み合わせてできています。
このように「含み」は、帳簿や取引の上にはまだ現れていない評価上の差額を示す言葉として、金融・会計の分野に定着していったと考えられます。
「含み損」と混同しやすい関連用語との違い
「評価損」は含み損とほぼ同じ意味で使われる言葉ですが、決算書類など会計上の正式な場面で用いられることが多い言葉だと言われています。
「未実現損失」は英語を訳した専門用語で、含み損と同じ内容を指しますが、学術的・専門的な文脈で使われる傾向があります。
「損切り」は含み損を抱えた資産をあえて売却して損失を確定させる行為そのものを指す言葉で、含み損という状態を表す言葉ではありません。
「塩漬け株」は、含み損を抱えたまま売るに売れず長期間保有し続けている株式を指す俗語として使われています。
含み損と「損失」を同じ意味で使ってしまうと誤解を招くことがあるため、確定していない評価上の損かどうかを意識して使い分けることが大切です。
「含み損」を正しく理解するためのまとめ
- 含み損は売却していない資産に生じる評価上の損失であり、確定した損失ではありません。
- 税務上は売却して損失を確定させるまで、課税関係はいっさい発生しません。
- 含み損を抱えたときは、数字に振り回されず自分の投資方針に沿って冷静に判断することが大切です。
- 「評価損」「損切り」「塩漬け株」など関連する言葉と合わせて理解しておくと、実際の投資判断に役立ちます。
ここまで、含み損と税金との関わり方や、具体的な使い方、言葉の成り立ち、混同しやすい関連用語について見てきました。
含み損は誰にとっても気持ちのよいものではありませんが、それ自体はまだ確定していない評価上の数字にすぎません。
大切なのは目先の評価額に一喜一憂することではなく、自分の投資方針に立ち返って、売却するか保有を続けるかを落ち着いて判断することです。