「取り組む」という言葉の意味を解説!
「取り組む」とは、目標や課題に対して意識的かつ主体的に働きかけ、解決や達成に向けて行動を続けることを指します。この言葉は、単に作業をこなすというよりも「真剣に向き合う姿勢」や「試行錯誤しながら粘り強く続ける態度」を伴います。仕事や学習、スポーツ、社会問題の解決など幅広い場面で使われ、その背景には「途中で諦めない粘り強さ」が含まれる点が特徴です。
「取り組む」は名詞的に使われる「取り組み」に変化することで、プロジェクト名や政府施策の名称などに転じる場合があります。たとえば「脱炭素への取り組み」のように用いれば、集合的な努力を示すための便利なキーワードとなります。
さらに、この言葉は感情面を含むニュアンスが強く、努力の大小や期間の長短を明示しなくても「真摯にやっている」印象を伝えられます。ビジネス文書や報告書、プレゼン資料においても、「取り組む」を用いることで主体性と継続性を同時に示せるため、高頻度で登場します。
一方で、あまりに多用すると抽象的になりがちなため、実際にどのような行動を行ったかを具体的に補足するのが望ましいです。
「取り組む」の読み方はなんと読む?
「取り組む」の読み方は「とりくむ」です。「とり」までは平仮名、「くむ」も平仮名で表記するのが一般的で、漢字を含めた「取組む」という書き方は公用文では推奨されません。
公的機関の文書や新聞記事では「取り組む」と平仮名交じりで表記されることが多く、視認性の確保と誤読防止が理由に挙げられます。一方、企業の内部資料などでは「取組む」「取組」などと漢字のみで記すケースも散見されますが、読みやすさの観点からはひらがなを挟む形が無難です。
送り仮名の「り」の有無で意味が変わることはありませんが、文化庁の送り仮名に関する通則では「取り組む」が推奨されます。大切な場面で使用する際は、このルールを押さえておくことで誤表記トラブルを防げます。
「取り組む」という言葉の使い方や例文を解説!
「取り組む」は「課題+に取り組む」「問題解決に取り組む」のように助詞「に」を伴い、対象となる事柄を示すのが基本パターンです。多くの場合、具体的な成果や現状を説明する文とセットで用いると、行動の中身が伝わりやすくなります。
【例文1】新製品の品質向上に取り組む。
【例文2】語学力を高めるために毎日30分の学習に取り組む。
これらの例文では、主語を省略しても「誰かが主体的に努力している」ニュアンスが十分に伝わる点がポイントです。次に、フォーマルな場面での使用例を見てみましょう。
【例文3】当社は環境負荷削減に取り組み、2030年までに排出量を40%削減します。
【例文4】自治体は子育て支援策の拡充に取り組んでいます。
フォーマル文では「取り組む」の後に具体的な数値や方針を加えることで、単なる決意表明に終わらず、成果の指標を示す文章に仕上がります。
「取り組む」という言葉の成り立ちや由来について解説
「取り組む」は動詞「取る」と「組む」が結合した複合動詞です。「取る」は対象を手に入れる、接触する意味を持ち、「組む」は手や腕を絡める、連結させるという動作を表します。
相撲の立ち合いで力士同士が組み合う状態を「取り組み」と呼んだことが、現在の抽象的な意味合いのルーツとされています。江戸時代には既に相撲興行の番付表に「本日の取組」という言い方が見られ、観客は勝負内容そのものを「取組」と呼び習わしていました。
やがて明治以降になると、相撲以外の競技や仕事にも「力を合わせて行う」という広い意味で転用されました。昭和期の新聞広告には「工事に取り組む」という表現が登場し、産業の高度化に伴い努力・着手の意味が一般化したと考えられます。
「取り組む」という言葉の歴史
「取り組む」の歴史を語るうえで外せないのが、江戸後期に確立した大相撲の番付システムです。この時期、取組は「番組」とも書かれ、相撲協会が興行ごとに力士の対戦カードを発表していました。
明治期になると、「取り組む」は「競技者同士が組みあう」という具体的な意味から、「課題に挑む」という抽象的意味へと拡張され、新聞記事や小説で使用例が急増します。それに伴い、一般庶民の間でも日常的に使われるようになり、昭和40年代の高度経済成長期には企業スローガンに組み込まれる形で定着しました。
現代ではスポーツやビジネスのみならず、社会課題解決の文脈でも重要語として機能しています。SDGsやカーボンニュートラルといったグローバルなキーワードと並べられることで、「継続的な努力を示す日本語」として国際的な場面でも紹介されることがあります。
「取り組む」の類語・同義語・言い換え表現
「取り組む」と同様に「課題に向き合う姿勢」を表す語はいくつか存在します。「着手する」は計画の開始を示し、準備段階を含む点で近い関係にあります。一方、「遂行する」は実行してやり遂げる意味が強く、過程よりも結果に焦点を当てます。
ニュアンスの違いを整理すると、開始を強調するのが「着手する」、途中の粘りを強調するのが「取り組む」、完了を強調するのが「遂行する」という関係になります。その他にも「挑戦する」「励む」「邁進する」といった言い換えが可能ですが、それぞれの語感によって情熱度やフォーマル度が異なるため、文脈に合わせて選択することが大切です。
たとえばカジュアルな会話であれば「頑張る」に置き換えてもよいでしょうが、ビジネスレターでは「取り組む」をはじめ「推進する」「実践する」などが無難です。
「取り組む」の対義語・反対語
「取り組む」の反対概念は「放置する」「怠る」「見送る」などが挙げられます。これらはいずれも課題に対して主体的な行動を取らない、または後回しにするという意味を含みます。
対義語を理解することで、「取り組む」が持つ積極性・継続性の価値がいっそう浮き彫りになります。たとえば「先送りにする」というフレーズは「取り組む」の対極に位置し、ビジネス現場では悪い例としてしばしば対比されます。
文章内で両者を対比させると、読み手に行動の重要性を強調できるため、プレゼン資料や企画書で効果的に用いられます。
「取り組む」を日常生活で活用する方法
日常の中で「取り組む」を意識すると、時間管理や自己成長のきっかけを掴みやすくなります。たとえば「毎朝のストレッチに取り組む」と言語化するだけで、行動がルーチン化しやすくなる効果があります。
ポイントは「対象を具体化」「期限を設定」「成果を振り返る」の3ステップをセットにして宣言することです。こうすることで曖昧な決意表明に終わらず、実際の習慣へと落とし込めます。
家族や友人に「取り組み内容」を共有し、定期的に進捗を報告するとモチベーションが維持しやすいです。ビジネスでも朝会で「今日取り組むタスク」を宣言し合うチームは、自己管理能力が高まりやすいと報告されています。
「取り組む」についてよくある誤解と正しい理解
「取り組む」という言葉を「とりあえず始める」と同義で捉える誤解がありますが、実際には「主体的な努力を継続する」ニュアンスを含むため、単発の行動では不十分です。
また、「取り組む=目標達成が保証される」と誤解されがちですが、成果よりも姿勢を示す言葉である点を押さえておく必要があります。「取り組んでいるのに結果が出ない」と焦るより、プロセスを検証して改善する視点こそが真の「取り組み」に当たります。
さらに、「取り組む」を連呼するだけで行動が伴わないケースは信頼性を損なう原因になります。ビジネス文書では「取り組む」に加えて「具体策」「担当部署」「期限」を明示し、実効性を担保することが求められます。
「取り組む」という言葉についてまとめ
- 「取り組む」は課題や目標に主体的かつ継続的に関わる行為を示す語。
- 読み方は「とりくむ」で、表記は「取り組む」が推奨されます。
- 語源は相撲の「取組」に由来し、明治期以降に抽象的意味が拡大しました。
- 現代では具体策と併用することで信頼性が高まり、多様な分野で活用されます。
「取り組む」は、江戸期の相撲用語から転じて現代社会のあらゆる場面に浸透した日本語です。主体性や粘り強さを示すポジティブな語感を持つため、決意表明から行動計画まで幅広く用いられます。
読み方や表記のルールを押さえ、具体的なアクションとセットで使うことで、言葉の説得力が格段に向上します。歴史的背景を知ることで言葉選びに深みが増し、ビジネスや日常生活でより効果的に活用できるでしょう。