「掛け持ち」の正しい読み方
「掛け持ち」は「かけもち」と読み、一つの物事だけに専念するのではなく、複数の物事を同時にこなしている状態を表す言葉として、アルバイトや仕事、学校生活、恋愛関係など幅広い場面の日常会話で使われています。
特に忙しい毎日を送る人を形容するときによく登場する言葉です。
「掛け持ち」の読み方は「かけもち」の一通りだけで、辞書的にも他の読み方は存在しないため、文章で見かけても、会話で耳にしても、この読み一つを覚えておけば迷うことはありません。
「掛」は「か(ける)」、「持」は「も(つ)」という、どちらも小学生のうちに習うくらい基本的な訓読みをそのまま組み合わせただけの言葉なので、画数の多い漢字が並ぶ四字熟語などと比べても、漢字の見た目ほど難しく考える必要はありません。
読み方を覚える負担はほとんどない言葉です。
とはいえ普段あまり漢字表記を意識せずに耳だけでこの言葉を覚えている人の中には、「持ち」の部分を「もつ」と読んでしまったり、そもそも漢字でどう書くのか自信が持てなかったりする人も少なくないようです。
漢字を忘れても、音さえ合っていれば会話で困ることはありません。
書き言葉では硬すぎない柔らかな印象を出すためにひらがなで「かけもち」と表記されることが多く、一方でアルバイト情報誌の見出しやSNSの投稿など軽いトーンの文章では、あえて「カケモチ」とカタカナで書かれ、目を引く表現として使われることもあります。
「掛け持ち」の意味とは
「掛け持ち」とは、一つのことだけに専念するのではなく、二つ以上の物事を同時に行ったり、複数の役割や立場を同時に担ったりすることを意味する言葉で、対象になるものは仕事から人間関係まで人によってさまざまです。
共通するのは「一つに絞らない」という発想です。
「掛け持ち」という言葉の中心にあるのは、一人の人が同時に複数のものを担当し、そのどれか一つに絞り込んでいるわけではないという状態そのもので、量の多さよりも同時に進めていることに重きが置かれています。
二つでも三つでも、同時であれば「掛け持ち」と表現できます。
何を掛け持ちしているかによって具体的な意味合いは変わり、仕事であれば「二つ以上の職場やポジションで働いている」こと、恋愛であれば「複数の相手と同時に交際している」こと、趣味であれば「複数の習い事に通っている」ことを指すようになります。
似た言葉に「兼任」や「兼務」がありますが、これらは主に会社での役職や職務について使われる硬い表現で、「掛け持ち」の方はプライベートな場面まで含めて幅広く使える、より口語的でカジュアルな言葉だといえます。
使う場面に応じて言葉を使い分けると、文章に説得力が出ます。
「兼業」も仕事の範囲に限定して使われる言葉である一方、「掛け持ち」は仕事だけでなく部活動や習い事、恋愛関係まで対象にできるため、日常生活のさまざまな場面で応用できる汎用性の高い表現です。
そのぶん使われる場面によって意味の重みも変わってくる言葉だといえます。
「掛け持ち」は悪い意味で使われる?ネガティブなニュアンスの有無
「掛け持ち」という言葉そのものには本来良いも悪いもなく、アルバイトの掛け持ちや部活の掛け持ちのように、単に「複数のものを同時に持っている」という状態を客観的に表しているだけの、いわば中立な言葉です。
良い意味にも悪い意味にも転びうる、振れ幅の大きい言葉だといえます。
ただし恋愛関係について使われる場合には話が別で、「彼氏を掛け持ちしている」「彼女と掛け持ちで会っている」のように、いわゆる二股や浮気に近いネガティブな意味合いを込めて使われることが多くなります。
使う相手や場面を選ぶ必要がある言い回しです。
恋愛での「掛け持ち」は、相手を裏切っている、誠実さに欠けるといった否定的な行為として使われることが多く、批判や不信感、時には軽蔑のニュアンスを込めて語られる傾向がある点に注意が必要です。
一方で仕事や部活動、習い事についての「掛け持ち」は、努力家である、行動力がある、時間の使い方が上手であるといったポジティブな印象で語られることの方が一般的で、後ろめたさを感じる必要はほとんどありません。
むしろ意欲的な姿勢として好意的に受け止められることも多いです。
つまり「掛け持ち」がどう受け取られるかは言葉そのものの善悪ではなく文脈次第で、何を掛け持ちしているのか、誰に対してどんな場面で使われているのかによって、評価もポジティブからネガティブまで大きく変わってきます。
言葉自体ではなく、中身を見て判断することが大切です。
「掛け持ち」の由来・語源
「掛け持ち」は、「掛ける」という動詞と「持つ」という動詞、二つのやまと言葉が組み合わさってできた表現だと言われています。
特別な言葉ではなく、日常のちょっとした動作を表すだけの、素朴な言い回しだったようです。
「掛ける」には、物を何かに引っかけて留めるという意味のほかに、一つのものを複数の場所や物にまたがらせるという意味があり、「橋を掛ける」「電話を掛ける」といった使い方にもその名残がうかがえます。
こうした「またがらせる」という感覚が、「掛け持ち」の土台になっていると考えられます。
「掛け持ち」という言葉は、複数のものにまたがるようにして支える「掛ける」と、手に取ってしっかり離さない「持つ」という、二つの動詞が組み合わさって生まれたと考えられています。
どちらの動詞が欠けても、今の意味にはならなかったはずです。
「持つ」の方は単純に手に取って保持するという意味を表しており、この二つの動詞が合わさることで、「一つに定めず、複数のものにまたがって同時に保持し続ける」という今のような意味が少しずつ形作られていったようです。
もともとは荷物などを物理的に手に持つ場面で使われていたと考えられますが、時代の流れとともに仕事や役割、人間関係といった、目には見えないものを掛け持ちする場面にも意味が広がり、現代のような使われ方が定着していったと言われています。
言葉の意味が時代とともに広がってきた、興味深い一例だといえるでしょう。
「掛け持ち」が使われる場面や対象
「掛け持ち」が最もよく使われる場面の一つが、アルバイトや仕事に関するものです。
一つの会社やお店だけでなく、複数の職場やアルバイト先で働く、いわゆるダブルワークを指すときによく使われる表現です。
正社員として働きながら休日や夜だけ副業で別の仕事を持つ場合や、平日と週末、あるいは曜日ごとに異なるアルバイトを掛け持ちする場合も、まとめて「仕事を掛け持ちする」と表現され、幅広い働き方に対応する言葉です。
働き方が多様化するなかで、目にする機会が増えている表現です。
仕事以外にも、部活動や委員会、生徒会やサークル活動など、学校生活のさまざまな場面で「掛け持ち」という言葉が使われており、忙しい学生生活を象徴する表現の一つになっています。
運動部と文化部を両方経験する生徒も珍しくありません。
一つの部活だけに所属するのではなく複数の部活動を掛け持ちしていたり、クラス委員と部活動、生徒会役員までも同時に担当していたりする状況も、「部活を掛け持ちする」のように表現されます。
学業と両立させながら複数の活動をこなす学生の様子を表すのに便利な言葉です。
さらに恋愛関係で複数の相手と同時に付き合う場合や、ヨガ教室と英会話スクールのように習い事や趣味を同時にいくつも続けている場合にも「掛け持ち」という言葉が使われ、対象となる範囲は仕事から私生活まで非常に幅広いといえます。
このように年齢や立場を問わず使える便利な言葉です。
「掛け持ち」を使った例文
- 【例文1】大学生になってから、駅前のカフェと塾講師のアルバイトを掛け持ちしている
- 【例文2】彼女は正社員として働きながら、週末はライターの仕事も掛け持ちしている
- 【例文3】高校時代は吹奏楽部と生徒会を掛け持ちしていて、毎日忙しく過ごしていた
- 【例文4】友人の話では、彼は二人の女性と掛け持ちで付き合っていたらしい
- 【例文5】現在、担当者が複数のプロジェクトを掛け持ちする形で業務を進めております
- 【例文6】掛け持ちしていた二つのアルバイトのシフトが重なってしまい、慌てて調整を頼んだ
これらの例文からも分かるように、「掛け持ち」はアルバイトや仕事、学校生活、恋愛関係からビジネスシーンまで、非常に幅広い場面で日常的に使われている、汎用性の高い言葉だということが分かります。
場面ごとに前後の言葉を選ぶことで、自然な文章に仕上げることができます。
ビジネスシーンで使う場合は、例文5のように「掛け持ちする形で」「掛け持ちしております」のように丁寧な言い回しに変えると、社外の相手やお客様に対しても失礼のない表現になります。
普段の言い方をそのまま丁寧語に変換するだけで対応できます。
一方で例文4のように、恋愛関係での「掛け持ち」はいわゆる二股のようなネガティブな文脈で使われやすいため、誰に対して、どんな場面で使う言葉なのかには注意しておく必要があります。
使い方一つで相手に与える印象が大きく変わる言葉だと覚えておきましょう。
「掛け持ち」の類語・言い換え表現
「掛け持ち」と似た言葉には、「兼業」「副業」「ダブルワーク」などがあり、複数の仕事を同時にこなす点は共通していますが、本業との関係性やフォーマルさの度合いにそれぞれ違いがあります。
「兼業」は本業を持ちながら別の仕事にも従事することを指す、ややかたい言葉で、「兼業農家」「兼業主婦」のように公的な文書や統計でも使われるほか、「会社員をしながら兼業でライターをしている」のような形でも用いられます。
「副業」は本業とはっきりした主従関係がある仕事を指すのに対し、「掛け持ち」はアルバイト同士のように優劣のない複数の物事を同時に行うイメージで使われる言葉である点が、大きな違いです。
たとえば会社員が休日に「副業」としてネットショップを運営する、といった使い方をします。
「ダブルワーク」は仕事を2つ掛け持ちすることを表すカジュアルな和製英語で、求人サイトの見出しなどでもよく見かける表現ですし、「二足のわらじを履く」という慣用句も、本来は両立しにくい性質の異なる2つの仕事や立場を1人が兼ねる様子を表す、よく似た言い回しです。
履歴書やビジネスの場では「兼業」「副業」、友人との気軽な会話では「掛け持ち」「ダブルワーク」というように、フォーマルさの度合いに応じて言葉を選び分けると、より自然で好印象な伝え方になります。
「掛け持ち」の対義語
「掛け持ち」の対義語としては、「専念」「専業」「一本化」などが挙げられます。
複数の物事を同時に抱える「掛け持ち」とは逆に、どれも1つのことに絞り込む意味合いを持つ言葉です。
「専念」は、1つの物事だけに気持ちや力を集中させることです。
「勉強に専念する」「治療に専念する」のように他のことに手を広げずひとつのことに向き合う姿勢を表し、スポーツ選手が「競技に専念する」と語るように仕事に限らず使われる表現でもあります。
「専業」は、他の仕事をせず1つの職業だけに従事することを指す言葉です。
「専業主婦」「専業農家」のように、複数の仕事を同時にこなす「兼業」と対になる形で、古くからよく使われてきました。
「一本化」は複数あったものを1つにまとめることを意味する言葉です。
「掛け持ちしていたアルバイトを一本化する」のように、抱えていた仕事や役割を整理して、どちらか一方に絞り込むときによく使われます。
こうした対義語と見比べると、専念や専業が持つ集中力や安定感に対して、掛け持ちには収入源や経験の選択肢を増やせる広さと柔軟さという、正反対の意味合いがあることが、より際立って見えてきます。
「掛け持ちで頑張る」と「専念して頑張る」では、同じ「頑張る」でも向いている方向が違って見えてきます。
「掛け持ち」のメリットとデメリット
掛け持ちのメリット
掛け持ちの大きな魅力は、収入源が増え、1つの仕事だけでは得られなかった金額を確保できることです。
生活費にゆとりが生まれたり、貯金や趣味、将来のための資金に回せるお金が増えたりするのも、掛け持ちならではの利点です。
異なる職場を経験することで視野が広がり、そこで出会う人との人脈や、業種の違うスキルの幅も自然と増えていくというメリットがあります。
たとえば飲食店のホールと事務のアルバイトを掛け持ちすれば、接客スキルとパソコンスキルの両方を同時に磨くことができます。
掛け持ちのデメリット
一方で、複数の仕事を抱えるとシフトや予定が重なりやすく、片方の仕事の都合でもう片方を休まざるを得なくなるなど、日々のスケジュール管理の難しさに悩まされる場面が増えていきます。
休む間もなく働き続けると体力的な負担が大きくなり、無理を続ければ体調を崩したり、疲れから集中力が落ちてどちらの仕事にもミスが増えたりする原因にもなりかねません。
体調の変化に気づいたときは、我慢せず早めに仕事量を見直すことが大切です。
無理なく掛け持ちを続けるには、休息の時間をあらかじめ確保し、自分の体力や生活リズムに合わせて仕事量を調整する柔軟さが欠かせません。
1週間の中で必ず休む日を決めておくのも、負担を減らす工夫のひとつです。
履歴書・面接で「掛け持ち」を伝えるときの注意点
アルバイトを掛け持ちしている場合は、面接や入社の時点で応募先の企業に正直に伝えておくのがマナーです。
シフトの調整や勤務日数に直接関わるため、採用担当者にとっても事前に把握しておきたい情報だからです。
正社員として働く場合は、掛け持ちを始める前に就業規則で副業や兼業が禁止・制限されていないかを必ず確認しておく必要があります。
面接で「他に仕事を掛け持ちしていますか」と直接尋ねられることもあるため、正直に答える準備をしておくと安心です。
就業規則に反した掛け持ちが発覚すると、社内での信頼を損なうだけでなく、懲戒処分など思わぬトラブルに発展する可能性もあるため注意しましょう。
特に競合する業種での掛け持ちは、情報管理の面からも慎重な判断が求められます。
面接で伝える際は、掛け持ち先の勤務時間や曜日を具体的に説明したうえで、「本業に支障が出ないよう調整します」と一言添えると、ネガティブな印象を和らげることができます。
掛け持ちを始めた理由もあわせて伝えると、単なる都合ではなく計画性を持って行動している人だという前向きな印象を持ってもらいやすくなります。
履歴書の職歴欄には、掛け持ち先の名称や雇用形態も簡潔に書き添えておくと親切です。
「掛け持ち」のまとめ
- 「掛け持ち」は「かけもち」と読み、複数の物事を同時に行うことを意味する言葉です。
- アルバイトや仕事だけでなく、習い事や役職、趣味など幅広い場面で使われる、日常的な言葉です。
- 「兼業」「副業」「ダブルワーク」などと似ていますが、対等な複数の物事を指す点に特徴があります。
- 収入や経験が広がるメリットと、スケジュールや体力面の負担というデメリットの両方があるため、無理のないペース配分が大切です。
ここまで、「掛け持ち」の正しい読み方や意味、ネガティブなニュアンスの有無、由来から、使われる場面や例文、「兼業」「副業」などの類語・対義語との違い、メリットとデメリットの両面、履歴書や面接での伝え方まで、幅広く見てきました。
「掛け持ち」は仕事やアルバイトだけでなく、習い事や趣味、役職など、私たちの生活のさまざまな場面で使われる、とても身近な言葉です。
これから何かを掛け持ちしようと考えている方は、収入や経験が広がるメリットを活かしつつ、スケジュールと体調の両方に気を配り、就業規則の確認や職場への伝え方にも配慮しながら、自分に合った無理のないペースを見つけていただければと思います。
周囲の理解と協力を得ながら、無理なく続けていきましょう。